T細胞応答のエピジェネティック核心 (An epigenetic core of T cell response)
T細胞免疫療法は、一部の難治性がんの治療に成功してきたが、T細胞が長時間の刺激の後では持続できないために限界がある。Kangたちはリバース・トランスレーション方法を採用して、チェックポイント阻害免疫療法に対するT細胞応答の持続性を調節する分子機構を研究した (TsuiとKalliesの展事記事参照)。骨髄異形成症候群の患者からの臨床観察にヒントを得て、クローン性造血に関連するエピジェネティック調節因子 (Dnmt3a、Tet2、およびAsxl1) がT細胞枯渇の実験モデルを用いて特定された。ポリコーム・グループ抑制性脱ユビキチン化酵素複合体のエピジェネティック破壊が、免疫療法に応答する幹細胞様T細胞集団の保存をもたらした。この機構をがん養子細胞療法に拡張すると、Asxl1の破壊はT細胞により優れた治療効果とチェックポイント阻害免疫療法との相乗効果をもたらす能力を与えることが見出された。(KU,kh)
【訳注】
- リバース・トランスレーション方法:「臨床から基礎へ(リバース・トランスレーション)」という臨床で問題になったことを基礎の戻って研究し、そのあと基礎から臨床(トランスレーション)への応用を試行する。
- クローン性造血:血液がんの前がん病変
- ポリコーム:遺伝子の発現を調節するタンパク質のグループ
Science p. 165, 10.1126/science.adl4492; see also p. 148, 10.1126/science.ads6217