アノールでの遺伝子量補償 (Dosage compensation in the anole)
性染色体に対する遺伝子量補償は、異形の性染色体における遺伝子過発現や同形の性染色体における片側複製物のサイレンシングのどちらかによって仲介されうる。これらの過程は複雑であるが、通常は長鎖非コードRNA(lncRNA)群によって仲介される。しかしながらそれらのlncRNAは、広く種間で共有されることが少ないため、研究するのが困難である。Tenorioたちはグリーン・アノールを調べ、X染色体上の遺伝子群がオスでは過剰発現していることを見出した。この遺伝子発現様式は、彼らがMAYEXと呼ぶ1本のlncRNAによって仲介されているらしかった。このlncRNAはアノールを超えて他種のトカゲに共有されている可能性があり、従って、動物間の遺伝子量補償の理解に寄与するものである。(MY,nk,kh)
- アノール:イグアナ科アノール属に含まれるトカゲの総称。グリーン・アノールはその一種。
- 遺伝子量補償:性染色体上にコードされている遺伝子の発現量が雄と雌の間で同じになるように調節されること。オスの性染色体がXY、雌がXXの場合、XXの一方のXが不活性化する場合(哺乳類)やXYのXが過剰発現する場合(ショウジョウバエやトカゲ)が知られている。本論文は後者に対応するもの。
- 長鎖ノンコーディングRNA:RNAの一種で、タンパク質へ翻訳されない200ヌクレオチド以上の長さの転写産物。