静電気のツタ (Electric ivy)
誘電体材料は多くの用途にとって重要であり、また電荷の蓄積が十分強くなると壊滅的な放電に至る可能性がある。これらの電気トリー放電の形状は以前にも研究されていたが、Sturgeたちは、これまで報告されていなかった新しい種類のツタ型の放電を見出した。この放電速度は非常に速く、それがどのように形成されるかを理解することは、静電気放電破壊の影響を受けにくい材料を設計するための鍵となる。(Wt,nk,kh)
誘電体材料は多くの用途にとって重要であり、また電荷の蓄積が十分強くなると壊滅的な放電に至る可能性がある。これらの電気トリー放電の形状は以前にも研究されていたが、Sturgeたちは、これまで報告されていなかった新しい種類のツタ型の放電を見出した。この放電速度は非常に速く、それがどのように形成されるかを理解することは、静電気放電破壊の影響を受けにくい材料を設計するための鍵となる。(Wt,nk,kh)
高鏡像異性的純度の二次元ペロブスカイトは、高い電荷-スピン変換効率を示すとともに従来型の直交面内スピン流と非従来型の面外スピン流の両方を発生することができる。ルドルスデン-ポッパー・ペロブスカイトにおける大きなスピン軌道相互作用は、キラリティ誘起スピン選択性を可能にする。Abdelwahabたちは、(MB)2(MA)3Pb4I13(MBは2メチルブチルアミン、MAはメチルアミン)4層膜が5%の大きなスピンホール角を持ち、室温で約75ピコ秒のスピン寿命を持つことを示している。この2種類の電流誘起スピン流は、従来型及び共線的なスピン・ホール伝導性の両方を示す。(NK,nk,kh)
有機化学反応はたいてい炭素への結合の生成と切断を伴う。しかしながら一般的に、取り扱われる炭素中心は既に複数の他の原子と結合している。Koikeたちは、カルボニルとの反応で裸の炭素元素を送達できる使いやすくて驚くべき安定性を持つ試薬を紹介している。この試薬の構造は、ホスフィン基と二窒素基の間に裸の炭素をはさんだ一種のイリド-ジアゾ混成体で、これらの基の各々は反応相手に応じて置換あるいは保持が可能である。(MY,kh)
ジアゾアルカンは、二窒素を失うことでその炭素中心への結合を形成する反応性の高い化合物として1世紀以上にわたってよく知られてきた。Zhangは今回、このジアゾアルカン類に対するホウ素類似体について報告している。この化合物では、アリールホウ素中心にジアゾ基が結合し、N-複素環式カルベンによって安定化されている。この安定化ジアゾボランは単離でき、結晶学的な特性づけができる。それに似た炭素化合物と同様に、このジアゾボランはジアゾ基を失うことで反応し、また、アルキンへの双極性環状付加でも反応した。(MY,kh)
地球の気候は約3,400万年前に劇的な変化を経験し、そのとき南極氷床が初めて形成され始めたが、その氷床の地域ごとの進化は依然として十分に解明されていない。Klagesたちは西南極付近の海洋堆積物から得たデータを示し、漸新世初期の状況は穏やかで永久氷床の成長に不利であったことを示している。これらのデータに基づくモデルの結果は、西南極の氷床は東南極でプロセスが始まってから700万年から800万年後までは形成し始めなかったことを示唆している。(Uc,nk,kh)
根粒菌接種後に、どのようにして窒素固定性根粒が植物の根に沿って配置されるのかは、この分野での長年にわたる未解決問題であった。Soyanoたちは、マメ科植物における菌による根粒形成部位を調節する周期的変動機構について記述している。生体イメージングとトランスクリプトーム解析が、植物ホルモンであるサイトカイニン応答における同様の周期的変動パターンと一致する周期的変動する遺伝子発現を明らかにしている。サイトカイニンによるシグナル伝達を乱すと、感染部位分布が変化した。感染に応答する根の領域の大きさと根粒形成過程の進行はこの周期的な調節の影響を受ける。(MY,kh)
β-バレル・タンパク質は構造が単純だが、適切な折り畳みとイオンと小分子の膜横断透過に対して複雑な要求を持つ。Berhanuたちは、一連の膜貫通鎖数と、楕円から四角と三角までの多様な幾何形状を持つβ-バレル・タンパク質を設計する手法を開発した。彼らの設計手法で重要なのは、二次構造に切断を組み入れて、凝集を防ぎ膜へと折り畳まれるのを容易にすることである。著者たちは、これらのタンパク質がイオンを伝導し、感知用途に対して有利となるであろう特性を持つことを示した。(MY,kh)
細胞表面タンパク質は同じ細胞上の他のタンパク質と、あるいは空間および時間の異なる他の細胞にあるタンパク質と相互作用することができる。最近の進歩により解像力が向上した結果、近接依存性標識法によってこれらの相互作用が特定可能になったが、異なる長さスケールからの情報を統合することは難しい。Linたちは、いくつかの一般的な反応性プローブをさまざまな距離スケールに対応するさまざまな遊離基の半減期で活性化しうる、有機光触媒を用いる取り組みを開発した。MultiMapと呼ばれる処理手順を用いて、著者たちは鍵となる細胞表面受容体のための多数の対となるタンパク質を特定し、T細胞免疫シナプス・モデル中の細胞-細胞相互作用の特徴を描き出した。(hE,nk,kh)
mRNAの二次構造は、遺伝子発現において重要な役割を果たしている。Moranたちは化学標識手法(mitoDMS-MaPseq)を開発し、クラスタリング・アルゴリズムを用いて、野生型およびLRPPRC欠損細胞におけるミトコンドリアmRNA(mt-mRNA)の折り畳みパターンを明らかにした。LRPPRCは、mt-mRNAの維持と翻訳に不可欠なタンパク質の1つであり、mRNAホルダーゼとして機能し、mRNAの折り畳みに影響を及ぼす。ゲノム全体およびmt-mRNAに特異的な折り畳み特性の分析は、mRNAにプログラムされた翻訳の一時停止とプログラムされたリボソーム・フレームシフトを明らかにした。これらの知見は、ミトコンドリア遺伝子発現における極めて重要な層を確立し、さまざまな生理学的および病理学的研究のためのmt-mRNA折り畳み地図を提供する。(KU,kh)
卵母細胞における染色体分配エラーは卵子の異数性をもたらし、流産および先天性疾患の主要な原因となる。エラーは年齢と共に、特により小さい染色体において発生しやすくなるが、このパターンの原因はよく分かっていない。Takenouchiたちは、生きたマウス卵母細胞における減数分裂全体を通じて標的染色体を識別し、追跡する方法を確立した。この方法は、より小さな染色体が紡錘体赤道の内側領域に向かって活発に移動し、これが細胞分裂中期板上に染色体の大きさに基づいた空間配置を形成することを明らかにした。より小さな染色体の内側の位置決めが、卵母細胞における加齢関連エラーの特徴である未成熟分離の危険性を高める。(KU,kh)
ほぼすべての生物は、相互の健康に不可欠な微生物叢と呼ばれる微生物の群集と、密接な関係を持っている。しかし、微生物叢は、宿主の特性とは相反する生活史特性や急速な進化能力を持っているかもしれない。Wildeたちは、宿主からの継続的な制御と戦いつつ極めて動的な環境下で生きていく微生物叢の課題について総説した。自らの微生物叢に圧倒されることを防ぐため、宿主は微生物叢を制約しながらも栄養面やその他の利益を享受できる多様な機構を進化させてきた。逆に、微生物叢の一部の構成要素は進化して、宿主の監視を逃れて自身の適応度をさらに高め、病原体として出現するようになった。(Sk,nk)
タンパク質設計における現在の主要な課題は、選択的で高親和性の小分子結合タンパク質を新規に作り出すことである。1つの有望な概念は、他の応用に容易に組み込むことができる小さなドメインである。Anたちは、標的リガンドの大きさに合わせるよう反復単位数を変えることによって、拡大または縮小することができる中央空洞を有する小さな疑似環状ペプチドを設計した。大量高速選別と計算による再標本化により、4つの例示的な標的分子に対して十分に高い親和性を有する第3世代結合剤が作製できた。著者たちは、このような結合剤を、新たに設計されたより大きなタンパク質にドメインとして組み込むことに依存する2つの用途、すなわち小分子検知用のナノポア技術との融合と化学的タンパク質二量体化法用のスプリット・タンパク質、を示している。(Sh)
ヒト・ゲノムのデータセットの数と大きさは増加してきているが、均等ではなく、研究者が利用できる遺伝子データのほとんどが、依然としてヨーロッパ系の人々から得られたものである。この欠点は、これらのデータから収集することが可能な生物学的知見と、従来の遺伝子提供者とうまく一致しないかもしれない非ヨーロッパ系患者への臨床応用の両方を制限している。この問題に対処するため、Million Veterans Programは、さまざまな民族的背景を持つ数十万人の米国退役軍人を研究のために募集した。Vermaたちは、この情報源、並びにそれらの多様なデータセットから浮かび上がった疾患との遺伝的関係に関するいくつかの発見を紹介している(Williamson と Fatumo による展望記事参照)。(Sk,nk,kh)
その生息域の全域にわたって、動物たちは異なる水準の環境ストレスや異なる種類の資源を得ており、その両方が彼らを違う場所では違う食物を選択するように仕向けているかもしれない。生息域の境界では、種はよりストレスを受けるかもしれない。そこでは、状況がより不利になるからである。そのことから、Martinsたちは、果実食性の鳥が、その生息域の端近くでは、くちばしの大きさによりぴったり合う果実を好む(この場合、努力当たり最大量の食物が提供される)ことによって果実選択を最適化しているかもしれないという仮説を立てた(HargreavesとAlexanderによる展望記事参照)。196の鳥類群集から得た果実摂食に関するデータは、この仮説の支持を示したが、主に果実からなる食餌をとる鳥類の中だけのことである。これらの選択は、種の適応度と種子散布様式の地理的変動に寄与しているかもしれない。(Sk,kh)
窒素は、窒素化合物において3個の結合を作るのが最も一般的である。場合によっては、1個だけ結合の形態で存続する場合もあるが、これらのニトレン分子は極端に短寿命の傾向があり、時間分解分光法では瞬間的にしか見られない。最近、嵩高いアリール骨格を持つ化合物類が、窒素のより重い同族体であるアンチモンとビスマスのニトレン類似体を安定化した。Janssenたちは今回、このような骨格がニトレンを同様に安定化できることを報告している。この化合物は単離され、結晶学的に解析され、電子常磁性共鳴分光法は三重項基底状態を支持した。(KU,kh)
チタン・ナノシートは、プロパン脱水素反応の触媒としては通常比較的不十分なものであるが、金属ニッケルを完全に封入すると非常に活性になる。Chenたちは、酸化アルミニウムに担持された酸化チタン・ナノシートにニッケル・イオンを充填し、その後600°Cの水素雰囲気で還元した。この処理により金属ニッケルが完全に封入され、この触媒は40%のプロパン転化率で94%のプロピレン選択性を示した。酸素空孔を取り囲む4配位チタン部位が触媒活性部位であるらしく、表面下の金属ニッケルは炭素-水素結合活性化の促進剤として機能し、水素脱離を促進した。(Wt,kh)