シナプス小胞を間近で観察 (Viewing synaptic vesicles up close)
ニューロン間の化学的情報交換には、シナプスへの神経伝達物質の急速な放出が伴なう。小胞型ATPase(V-ATPase)はATPを用いて、シナプス小胞にプロトンを送り込み、放出に先だって細胞質ゾルから神経伝達物質の取り込みを可能にする。Couplandたちはラットの脳からシナプス小胞全体を単離し、その生体膜内でのV-ATPaseの高分解能低温電子顕微法構造を決定することができた。著者たちは、タンパク質シナプトフィジンとの化学量論的複合体など、精製されたV-ATPaseの構造には見られなかったいくつかの予期しない特徴を見出した。彼らはまた、以前の生化学研究と一致して、活性条件下でのV1ヘッド・グループの解離を観察した。(KU,kh)
- V-ATPase:9~13種類のタンパク質からなる超分子複合体で、水溶性タンパク質部分(V1部分)と膜タンパク質部分(Vo部分)からなる。触媒頭部でATPを加水分解する。
- シナプトフィジン:ニューロン内の小胞に結合し、カルシウムイオンの存在下で細胞膜と小胞が融合することを促進するタンパク質。
- 化学量論的:化学反応において関連分子の個数比が相互作用部位の数などにより決まっていることを言う。