昆虫の嗅覚を解明する (Making sense of insect senses)
動物が食べ物を示す小分子を感知するのに、多くの分子的な方法が存在する。2つの独立した研究グループが、昆虫固有の、四量体からなるリガンド開閉イオン・チャネルに関する構造的研究を報告している。これらのチャネルは、リガンドに結合する1つの嗅覚受容体(OR)サブユニットと、リガンドに結合しない3つのOrcoサブユニットで構成されている。Wangたちは、農業で問題になっているアブラムシ由来のOR-Orco複合体を研究し、Zhaoたちは、他の昆虫由来のOrcoサブユニットに結合した、2種の蚊由来のORの構造を決定した。両方のグループとも、単一の活性化ORの存在が四量体チャネルの開口をもたらすことができるという同様の開閉機構を提案している。この受容体の生理学的な構成と機能に関しては疑問が残っているが、これらの構造は、さまざまな用途に対して昆虫ORを標的にする分子を開発する上での一つの出発点である。(MY,nk,kh)
【訳注】
- OR-Orco複合体:多くの昆虫が持つ、匂い感知イオン・チャネルで、匂い物質の結合により活性化される。数十種類が知られているOR(odorant receptor)のうちの1種と、進化的に保存されている3つのOrco(odorant receptor co-receptor)からなる。
Science p. 1460, 10.1126/science.adn6384 p. 1453, 10.1126/science.adn6881