がん免疫療法をJAK阻害剤を用いて高める (JAK-ing up cancer immunotherapy)
がん免疫療法は、患者の免疫系を動員して腫瘍細胞を殺す治療法の一種である。それが特定の腫瘍の治療には効果があったが、患者はしばしば慢性炎症と免疫抑制に患い、これが治療応答を制限する。2つの独立した臨床試験は、JAK阻害剤と呼ばれる薬剤を用いて炎症を抑えることで、がん患者における抗PD-1免疫療法の有効性を改善できるかどうかを調べた (GadinaとO’Sheaの展望記事参照)。Mathewたちは第2相試験を実施し、転移性非小細胞肺がんに対する第一選択療法としての薬剤組み合わせを研究した。ペンブロリズマブ(pembrolizumab)による治療後にイタシチニブ(itacitinib)の時間をおいての投与が治療応答を改善した。Zakたちは、再発性/難治性ホジキンリンパ腫の患者を対象に第1/2相試験を実施した。ルキソリチニブ(ruxolitinib)とニボルマブ(nivolumab)の組み合わせにより、以前にチェックポイント阻害免疫療法が失敗に終わった患者において臨床効果の改善をもたらした。(KU,kh)
【訳注】
- JAK阻害剤:JAK(Janus Kinase)は炎症性サイトカインのシグナル伝達にかかわる細胞内分子で、その伝達を阻止する薬剤
- 非小細胞肺がん:肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2種類に分けられ、非小細胞肺がん症状が現れにくく、薬剤療法に対する感受性が高い。
- 第一選択療法:患者に対して最初に行われる治療のこと。
Science p. 1314, 10.1126/science.adf1329, p. 1315, 10.1126/science.ade8520; see also p. 1303, 10.1126/science.adq1717