腸内毒素症が腸のTr17細胞を腫瘍へと向け変える (Dysbiosis redirects gut Tr17 cells to tumors)
ガン治療のための免疫チェックポイント阻害療法は、抗生物質が投与されてその後治療開始前に中断される時には、有効性が減少していることがある。Fidelleたちは、抗生物質投与中断で立ち直った細菌が治療応答に影響を及ぼすかどうかを研究した(PrattおよびMilnerによる展望記事参照)。抗生物質で処置したマウスの腸に再び住みついたエンテロクロスター種はMAdCAM-1の発現を減少した。MAdCAM-1は、免疫抑制性のT細胞サブセット(Tr17 細胞)を腸内で保持するのを助けるインテグリンα4β7のリガンドである。エンテロクロスターによるMAdCAM-1発現の減少はTr17細胞を腫瘍や腫瘍流入リンパ節に移行させ、免疫チェックポイント阻害療法の効果を損ねることになる。免疫療法を受けているガン患者では、低濃度の血清可溶性MAdCAM-1が、腸内毒素症および腎臓、膀胱、肺ガンに対する不十分な臨床成績と相関していた。(hE,KU,kj,kh)
【訳注】
- 腸内毒素症:腸内細菌叢を構成する細菌種や細菌数が減少することにより,細菌叢の多様性が低下した状態を示す。
- 免疫チェックポイント阻害療法:免疫チェックポイント阻害薬によって、がん細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する治療法。
- MAdCAM-1(mucosal adressin cell adhesion molecule-1):腸管リンパ組織のHEV(high endothelial venule)に発現し、2つの免疫グロブリン(Ig)ドメインとムチンドメインを有する小分子である。リンパ球、とくにメモリーT細胞表面のインテグリンα4β7とIgドメインとが結合し、これらリンパ球の血液系からリンパへの移入に重要な役割を演じている。
Science, abo2296, this issue p. 1027; see also adi3357, p. 1011