OAS-RNase L経路は「MIS-C」につなぐ輪なのだろうか? (OAS-RNase L pathway the“MIS-C”ing link?)
小児における多系統炎症性症候群 (multisystem inflammatory syndrome in children:MIS-C) は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) の重篤な合併症であり、感染した小児10,000人に1人の割合で悪影響を与え、川崎病を連想させ、その病因は不明のままである。Leeたちは、MIS-C患者の統計対象群で全エクソームおよび全ゲノム配列決定を行い、統計対象群のほぼ1%にOAS1、OAS2、あるいはRNase Lの常染色体潜性欠損を明らかにした (Brodinによる展望記事を参照)。これらの遺伝子は、二本鎖RNAに刺激された単核食細胞の炎症を抑制するシグナル伝達経路の構成要素である。したがって、OAS-RNase L経路の単一遺伝子潜性先天性エラーが、SARS-CoV-2感染後に単核食細胞による制御不能な炎症性サイトカイン産生を引き起こす可能性があり、一部の子供におけるMIS-Cの原因を説明できるかもしれない。(KU,kh)
【訳注】
- 2'-5'-オリゴアデニル酸シンテターゼ (OAS)/RNase L経路:2'-5'-オリゴアデニル酸シンテターゼがRNase Lを活性化してウイルスのmRNAを切断することで、ウイルスから宿主を保護する自然免疫系。
- 小児多系統炎症性症候群(MIS-C):川崎病とMIS-Cは、長引く発熱、皮膚の発疹、リンパ節腫脹、下痢、炎症性バイオマーカーの上昇など、いくつかの共通の症状を持っているが、MIS-Cは10代と発症年齢が高いこと、腹部症状が多いこと、左室収縮機能障害や急性心不全を伴う特徴がある。
Science, abo3627, this issue p. 554; see also adg2776, p. 538