メタン生成巨大複合体 (Methanogenesis megacomplex)
メタン生成菌でのメタン生成の重要な第1段階は、二酸化炭素を、下流の反応段階にとっての基質となる1炭素ホルミル単位へと還元変換する過程である。この反応は、ある酵素複合体触媒によってなされ、この複合体は、水素あるいはギ酸塩を酸化し、異なるエネルギー経路に沿って2つの電子を分離する構成成分を含んでいる。Watanabeたちは、反応を担っている酵素複合体の嫌気性低温顕微鏡試料を注意深く精製し作製して、3メガダルトンの6量体構造を3~3.5オングストロールの分解能で得た。鉄-硫黄からなる補因子の配置は、 電子分岐が巨大タンパク質の動きとどのように結びついているのかの説明を提供しており、これは存在する多重の立体構造状態から予測されるものである。(MY,kh)
- 1炭素ホルミル:CHO- で表される化学基。
- 嫌気性:メタン生成菌は大気濃度の酸素に暴露することによって死滅してしまう偏性嫌気性の古細菌。
- ダルトン:生物化学分野で用いられている分子量を表す単位。3メガダルトンは、分子量が3百万であることを表す。
- 補因子:酵素の触媒活性に必要なタンパク質以外の化学物質。鉄-硫黄クラスターはタンパク質中で電子伝達や酵素活性中心として機能する。
※本論文のプレスリリース:https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210903_pr.pdf