可塑性(plasticity)の遺伝学を解き明かす (Untangling the genetics of plasticity)
よく見られる蝶のアメリカタテハモドキ(Junonia coenia)は、可塑的な呈色を示す。すなわち、黄褐色と暗赤色の2つの色多型で、これは日の長さと温度に依存する。van der Burgたちは、呈色可塑性がより大きなものとより小さなものとを選別することにより、呈色差の下にある遺伝的多様体の遺伝子位置特定に用いられるチョウ系統を作り出した。全ゲノム解析およびRNA配列解析により、呈色可塑性の違いに最も関係していそうな遺伝子群が特定された。CRISPR–Cas9を用いた遺伝子の不活性化により、赤の表現型に作用する3つの遺伝子が特定され、また、他の技術により、呈色に関連するシス制御性の非コード・ゲノム多様体が特定された。著者たちはこれらの結果から、遺伝的にコードされた可塑性とその可塑的形質の同化が、どのように進化したらしいのかをモデル化することができた。(MY,kj,kh)
- シス制御性:ある遺伝子と同じDNA鎖内にある別の領域が、その遺伝子の発現に影響を与えること。エンハンサー領域に外部から転写因子が結合して、該当遺伝子の転写を調節することなどが挙げられる。
- 同化:ある確率で現れ特定の環境に有利な表現型が、環境との相互作用による選択淘汰を通してゲノムに組み込まれ固定化すること。