精子成熟の局所的制御 (Local control of sperm maturation)
精巣内で新たに生成された精子は受精能力を持ってはいないが、それが精巣上体で成熟すると十分に機能するようになる。精巣上体それ自体の発達は、管腔流を介して到達する精巣因子に依存する。精巣と精巣上体との間の不適切なシグナル伝達は、男性不妊を引き起こすとの仮説が立てられている。Kiyozumiたちは、管腔精巣上体表面上にあるその受容体、ROS1に結合し、精巣上体の分化を誘発する精巣管腔タンパク質としてNELL2を特定した(LordとOatleyによる展望記事を参照)。次に、分化した精巣上体は受精能に必須のプロテアーゼであるオボチマーゼ(ovochymase)-2を分泌し、精子を完全に成熟させて機能させる。このように、この「ルミクリン(lumicrine)」調節による精巣-精巣上体の器官間の情報交換が、哺乳類の生殖を保証する。(KU,nk,kh)
- 精巣上体:精巣の後方に位置し、精巣からの精子を精管へ輸送する
- ルミクリン:精子の成熟に関与すると想定されたシグナル伝達をもたらす分泌ホルモン