免疫のあるハチ遺伝子を誘発する (Inducing immune bee genes)
ミツバチは、いくつかのミツバチ病原体の媒介生物であるバロア・ダニによる寄生を受けやすい。しかしながら、ミツバチは共生腸内細菌 Snodgrassella alvi の宿主でもある。Leonard たちは S. alvi を遺伝子操作して、蛍光標識で標識化した2つの逆位プロモーターを含むプラスミドから、二本鎖RNA(dsRNA)(昆虫のRNA干渉による防御反応の誘因物質)を作り出した(Paxton による展望記事参照)。このdsRNAモジュールは、特定のミツバチ遺伝子だけでなく、極めて重要なウイルスおよびダニの遺伝子への干渉を狙いにすることができる。彼らは、この共生細菌がミツバチの腸に定着してdsRNA 構成物を連続的に発現している間に、対応する宿主遺伝子の発現が少なくとも15日間阻害されうることを見出した。特異的に標的が定められたプラスミドを有する S. alvi は、チヂレバネ・ウイルスの感染を抑制しただけでなく、バロア・ダニの生存率を効果的に低下させた。(Sk,MY,kj,kh)
【訳注】
- 逆位:DNAの配列順序が元の配列に対してその相補配列で逆向きになっていること。
- プロモーター:DNA分子上にあって、RNAポリメラーゼが結合して転写を開始する部位。
- プラスミド:細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。
- RNA干渉:外来の病原性RNAに対して相補的な配列の一本鎖RNAを用意して防衛する機構。RNA干渉の人為的な誘発には相補的な配列のRNAとその逆鎖RNAからなる二本鎖RNAが用いられる。
Science, this issue p. 573; see also p. 504