哺乳類の聴覚機構におけるスペクトリン (Spectrin in mammalian hearing mechanisms)
不動毛は内耳にある毛様構造で、音の振動を神経信号に変換する。この構造は、ヒトでは胎児発育の早期に成長を止めるため、その弾力性が生涯にわたる聴力にとって決定的に重要である。Liuたちは、マウスの内耳有毛細胞について誘導放出抑制顕微鏡を用いて、 不動毛小根の基部で細胞骨格タンパク質の配列を観察した。このタンパク質スペクトリンの弾性が、赤血球細胞の変形能におけるスペクトリンの役割に似て、絶え間ない機械的応力下の不動毛が長期間存続し続けることを可能にするのかもしれない。観察されたスペクトリンから成る環状構造への損傷は、マウスにおいて、聴力損失を伴った。(MY,kh)
- スペクトリン:細胞の形を維持する足場として働き、細胞膜の構造を維持するのに重要な役割を果たしているタンパク質。
- 誘導放出抑制顕微鏡:試料中の蛍光分子を励起するスポット光と、励起蛍光分子を消光させるようなドーナツ状の刺激光を前記スポット光と同心で同時に照射することで、蛍光発光領域をスポット光中心部のみに限定できる蛍光顕微鏡。生体試料に対して30nm程度の分解能を持つ。