十分に栄養を与えられる恩恵 (The benefits of being well fed)
真社会性の昆虫では、大多数の個体がその生殖能力を犠牲にして、生殖を行う女王を養っている。 このような社会システムは繰り返し進化してきたが、今もなお、その起源にまつわる多くの議論がある。 Chandra たちは、7種の異なる種のアリを扱い、トランスクリプトーム手法を用いて、女王アリにおいては、ある単一の遺伝子が一貫してその発現が上方制御されているように調節されていることを示した。 この遺伝子が、高水準の栄養と合わさって、多産状態を与えるらしい。 クローン・アリでは、幼虫の出す信号がこの遺伝子の上方制御を妨害し、生殖役務の分化を不安定化させる。 この遺伝子に関連するペプチドの水準上昇が、これらの幼虫の出す信号を無効化し、真社会性を成立させる。(Sk,kj,nk,kh)
- 真社会性:「繁殖を行う女王と、これを助ける多数の不妊個体による繁殖の分業」で特徴付けられる性質。
- トランスクリプトーム手法:ゲノム情報を利用して、一つの生物や細胞に含まれる全ての転写産物について、網羅的・系統的に発現動態などを解析する手法。
- クローン・アリ:コロニー内に女王アリがおらず、代わりに各々が無精卵を産み、クローンを誕生させる種のアリ。