単一細胞に対する改良された密かな観察術(Improved spy tactics for single cells)
生物発光イメージングは医学研究にとって、とてつもない資産で、生細胞をその自然のままの環境で、非侵襲的に観察する方法を提供する。発光イメージング方法の進展で、腫瘍増殖の測定、発生過程の可視化、細胞間相互作用の追跡が研究可能になっている。それでも技術的な限界はあり、しかも生体中の深部組織のイメージングや少数細胞の検知は困難である。Iwanoたちは、従来の技術と比べて1000倍にまでの明るさの発光を生じる生物発光イメージング装置を設計した(NasuとCampbellによる展望記事参照)。マウスの肺では腫瘍細胞個々がうまく可視化された。自然にふるまっている状態でのまうマーモセット(霊長類動物)の脳では少数の線条体神経細胞が検出された。今回使われた基質の血液脳関門を透過する能力は、神経科学の研究に重要な機会を提供するだろう。(MY,ok,kj,kh,nk)
【訳注】
- 生物発光イメージング:ホタル等の発光機構である発光前駆体物質(基質)を酵素が酸化して発光が生じる分子機構を応用して生物現象を可視化する方法。酵素を発現する遺伝子を細胞に導入して発現させ、外部から基質を導入する方法がとられる。
- 線条体:大脳の深部の大脳基底核にある神経細胞体の集まりの1つで、神経回路における大脳皮質からの入力を担い、運動機能、学習や記憶などさまざまな機能に関与する。
Science, this issue p. 935; see also p. 868