善玉菌がガンとの闘いを助ける (Good bacteria help fight cancer)
常在性腸内細菌は、ガン免疫療法への患者応答に影響することがある(Jobin による展望記事参照)。 Routy たちは、抗生物質の体内摂取が、PD-1 遮断免疫療法への応答不良に伴うことを示している。 彼らは、肺ガンと腎臓ガンの患者からの検体の特徴解析を行い、その結果、療法への非応答患者では、細菌である Akkermansia muciniphila の水準が低いことを見つけた。 この細菌を抗生物質を処方したマウスへ経口補給すると、免疫療法への応答が回復した。 Matson たちと Gopalakrishnan たちは、PD-1 遮断療法を受けている黒色腫患者を調べ、療法に応答する患者の腸で善玉菌がより多いことを見つけた。 非応答者は、腸内細菌叢組成が偏っていて、これは、免疫細胞の活性の弱まりと相関していた。 このように、健康な腸内細菌叢の維持は、ガンとの戦いで患者を助ける。(MY,nk,kh)
【訳注】
- PD-1 遮断免疫療法:ガン細胞は、免疫を担う T 細胞の表面に発現する PD-1 受容体へ結合して T 細胞の働きを抑制し免疫から逃れる。 PD-1 遮断免疫療法は、この結合を薬剤で阻害することで、T 細胞の攻撃性を保つ療法。
- Akkermansia muciniphila:成人の腸内細菌の総数の 1~4 % を占め、腸内に大量に棲息する菌。 胃や腸など粘膜表面を構成する物質であるムチンを栄養源とする。
Science, this issue p. 91, p. 104, p. 97; see also p. 32