免疫療法への応答を予測する (Predicting responses to immunotherapy)
ミスマッチ修復(MMR)経路の機能欠失型変異を持つ結腸ガンは,PD-1遮断免疫療法に対して,この療法にとって有望な応答を示す。Le たちは第2相臨床試験で,治療成功が結腸ガンだけに限られないことを示した(GoswamiとSharmaによる展望記事参照)。彼らは,MMRの欠失を持つ幅広い異なる種類のガンもまた,PD-1遮断に応答することを見つけた。この臨床試験は,何人かの膵臓ガン患者を含んでいた。膵臓ガンは最も致死的なガン形態の1つである。この臨床試験は今なお進行中で,現在まで約20%の患者が完全奏効を達成した。MMRの欠失は,幾つかの固形腫瘍に対しての治療成功成績を予測する生体指標であると思われ,MMR欠失型ガンが潜伏する患者に対する新たな治療選択肢を示す。(MY,kj,nk,kh)
【訳注】
- MMR:DNA複製で生じた誤った塩基対合(ミスマッチ)を見つけ出し,誤って取り込まれた新生鎖側の塩基を除去する修復機構。
- PD-1遮断免疫療法:ガン細胞は,免疫を担うT細胞の表面に発現するPD-1受容体へ結合してT細胞の働きを抑制し免疫から逃れる。PD-1遮断免疫療法は,この結合を薬剤で阻害することで,T細胞の攻撃性を保つ療法。
- 第2相臨床試験:3つの臨床試験の中間に位置し,比較的軽度な少数例の患者を対象に,対象医薬品の有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う段階。
- 完全奏功:治療への反応として腫瘍が完全に消失した状態となること。
Science, this issue p. 409; see also p. 358