プロテオーム地図の作成 (Mapping the proteome)
タンパク質はその存在環境との相互関係に応じて機能し,そのため,細胞過程の理解には,タンパク質が何処に局在しているかの知見が必要とされる。Thulたちは免疫蛍光顕微鏡を用いて,12,003のヒト・タンパク質の単一細胞レベルでの存在位置を,30の細胞区画と下部構造に描き込んだ(HorwitzとJohnsonによる展望記事参照)。彼らは質量分析法を用いてこの結果を検証し,これを用いてタンパク質-タンパク質相互作用ネットワークをモデル化し精緻化した。細胞内のプロテオームは時空的に高度に調節されている。多くのタンパク質が複数の区画に局在しており,また多くが,細胞ごとに発現の様相の違いを見せる。この研究は,「Cell Atlas」と呼ばれる対話型データベースとして提供され,ヒト生物学を理解する現在進行中の取り組みに対して,重要な資産を提供する。(MY,kj,nk,kh)
【訳注】
- プロテオーム:特定の細胞が特定の条件下に置かれたときに、その細胞内に存在する全タンパク質のこと。
- 免疫蛍光顕微鏡:細胞内の特定タンパク質に,直接,あるいは一次抗体を介して,蛍光色素で標識した抗体を結合し,色素の蛍光を顕微鏡観察することで,対象タンパク質の細胞内での局在や移動を調べる方法。
Science, this issue p. eaal3321; see also p. 806