熱帯地方では危険 (Risky in the tropics)
熱帯地方に向かって多様性が増大することはよく知られている。しかし、この増大が、種間の相互作用率の違いにつながるのかどうかは不明なままである。問題を単純化するため、Roslinたちは、6大陸全域で、模造品のイモムシを使った単一の方法を用いて捕食率の試験を行った。捕食者の攻撃率が、節足動物の捕食者に関してだけ、赤道に近づくほど高かった。(Sk,MY,kh)
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熱帯地方に向かって多様性が増大することはよく知られている。しかし、この増大が、種間の相互作用率の違いにつながるのかどうかは不明なままである。問題を単純化するため、Roslinたちは、6大陸全域で、模造品のイモムシを使った単一の方法を用いて捕食率の試験を行った。捕食者の攻撃率が、節足動物の捕食者に関してだけ、赤道に近づくほど高かった。(Sk,MY,kh)
アデノシン三リン酸(ATP)は,細胞内の生化学反応にエネルギーを供給する上で,よく特徴づけられた役割を担っている。Patelたちは,ATPがタンパク質の溶解性も向上させる可能性を見出している。このことは,ATPが何故そのような高濃度で細胞中に保持されているのかを説明するのに役立つかもしれない(RiceとRosenによる展望記事参照)。細胞中のタンパク質濃度は100mg/mlを超えることがある。著者たちは,細胞中で見いだされる濃度のATPはヒドロトロープとして働くことができ,疎水性タンパク質の溶解を助けることを見出した。これらの結果は,病気で起きるタンパク質凝集あるいは細胞内で発生する液-液相分離のような過程に,ATPの濃度が影響しているのかも知れない可能性を高める。(MY,kh)
天然ガスは、輸送可能とする前に精製しなければならない。その準備工程には、水分を除去する乾燥手順も含まれている。このためにゼオライトのような微多孔質の吸着材が用いられるが、再利用できるように水分を除去するため頻繁に、最高 250°C の温度まで加熱しなければならない。Cadiauたちは、ガス流から水分を除去できるが、わずか 105°C に加熱するだけで再生できる、ニッケル金属中心を含むフッ化された金属有機構造体について述べている。(Sk,kh)
地球、火星それにタイタンは全て、その歴史のある時点で、すべて河川を擁していた。河川は環境を侵食し、表面地形が現れたのが、河川の流れの前、その間、あるいはその後だったかに依存する兆候をあとに残す。Blackたちは2つの指標を開発して、河川の流路が、周囲の大規模な地形とどの程度よく整合しているかを評価した(Burrによる展望記事を参照のこと)。地球のプレート・テクトニクスは、川を迂回させる山脈のような特徴と、火星やタイタンで見られるものと明確に異なる過程をもたらしている。(Wt,MY,kj,nk,kh)
特定の型の細胞の産生には,遺伝子の一部だけが使われる。ほとんどの研究が,細胞型固有の遺伝子の発現を作動させる因子に焦点を当てる。しかしながら,他の細胞系列を規定する遺伝子の発現を阻止する機構もまた必要とされる。Kimたちは,そのような機構をショウジョウバエの雄生殖系列で特定した。複数のジンク・フィンガーを持つタンパク質とクロマチン再構築因子がともに作用して,潜在性プロモーターからの転写を阻止することが分かった。これらの因子は,異常な遺伝子発現を防ぎ,成体の精子幹細胞系列における本来の分化を可能にした。(MY,kj,kh)
窒素は、植物プランクトンの成長に不可欠な栄養素である。窒素は、主に、低層からの混合により海洋表層に供給される。しかしながら、肥料の使用や化石燃料の燃焼が増加するにつれて、環境が次第に重要な供給源となると予想される。Renたちは、南シナ海のサンゴ由来の有機物中の窒素同位体を測定した(Boyleによる展望記事を参照のこと)。彼らの発見によると、大気からの人為起源の窒素の堆積が、ちょうど20世紀の終わりに始まったことを示唆している。この経路は、今やこの地域の海洋表層に、年間窒素入力量のほぼ4分の1を供給している。(Wt,kj,kh)
サルは、社会的相互作用とその意味を迅速かつ容易に認識する。このような理解をすることの根底にある神経回路についてはほとんど知られていない。SliwaとFreiwaldは、静止している、あるいは動いている刺激源を見ているときのサルの脳を画像化した。脳領域の一部分は、2つの物体間の物理的相互作用とは対照的に、サル・サルの相互作用中に限って活性的であった。この神経回路は、その構成要素のいくつかの部分を、以前他の研究者により存在部位が描かれたサルのミラー・ニューロン系や、心の理論が関係するヒトの神経回路の相同体と考えられる回路と共有している。(ST,MY,kj,nk,kh)
妊娠高血圧腎症は胎児の発育を害し,母体臓器を損傷する。活性酸素種(ROS)は,胎盤中の血管形成(血管新生)を阻害することで,妊娠高血圧腎症の危険性を増大させると提唱されてきた。しかしながら,Nezuたちは妊娠高血圧腎症のマウス・モデルを用いて,ROS量の低減が胎盤の血管新生,胎児の発育,母体の生存率を悪化させることを見つけた。対照的に,ROS量の増加が胎盤の血管新生を増やし,胎児と母体に対する治療効果を改善する結果となった。これらの結果は,抗酸化剤が何故,臨床治験で妊娠高血圧腎症の予防に効果がなかったのかを説明するのに役立つ。(MY,nk,kj)
抗レトロウイルス剤療法(ART)は効果的にHIVの複製を制限する。それでもやはり,HIV陽性の人たちは,生涯,服薬治療が必要となる。それは,ARTの服用中止がウイルス持続性のはね返りを招くためである。HIVを標的にする1つの新たな取り組みは,α4β7インテグリンへの抗体である。α4β7インテグリンは,CD4陽性T細胞が,HIV持続感染にとって極めて重要な場所の腸へと向かうのを促進する受容体である。Guzzoたちは,α4β7インテグリンがHIVの外被へと取り込まれることを見つけた。α4β7インテグリンはCD4陽性T細胞に限らず結合すると母体を腸へ向かわせる性質があるので,このことは,腸組織へ向かうHIVの能力を,α4β7インテグリン抗体による治療が直接妨げる可能性がある事を示唆する。彼らの結果は,HIV発症における有望な治療標的であるα4β7インテグリンの役割に対する我々の理解を変更する。(MY,kj,kh)
アストロサイトはカルシウム・シグナルを使用して、隣接する脳細胞から受け取った情報を処理し、その結果、局所レベル、もしくは神経網レベルで、調節性応答を引き起こす。これまでの研究は、大部分がアストロサイトの細胞体に焦点を絞った線状走査または単一焦平面でのカルシウム画像化に頼ってきた。Bindocciらは、多くの焦平面を迅速に走査できるより強力な検出器を使用した。彼らは、この技術と、高感度でカルシウム勾配を追跡する先進的な遺伝子ツールとを組み合わせた。これらは、アストロサイト全体の3次元カルシウム画像化を可能とした。基礎的なカルシウム・シグナル活性の大部分は、アストロサイトの神経細胞シナプスとの接触領域で生じ、一部が毛細血管との接触領域で生じ、アストロサイトの細胞本体では意外なことにごくわずかであった。(NA,MY,kj,nk,kh)
胚中心(GC)はB細胞が産生する抗体の性能を高め、親和性を成熟させる特別な部位である。GCがB細胞を成熟させるための応答は、基本的に抗原特異的Tリンパ球とBリンパ球との間の接触依存的シグナル交換に依存する。Luたちは、GC補充と濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の保持を抑制し、同時にそのヘルパーの活性を局所的に促進する反発誘導系を明らかにした(MoschovakisとForsterによる展望記事参照)。この系は、TFH細胞を含む、活性化T細胞によって発現されるGC特異的膜貫通エフリンB1(EFNB1)分子と2つのEFNB1受容体(EPHB4とEPHB6)から構成される。GC B細胞上にEFNB1の非存在下で、またはEPBB6がT細胞上で抑制された時に、TFH細胞の緩和された反発の結果として不適当なほど多量のT細胞がGCに補充され、そしてGC中に保持された。(KU,kj)
外部条件に対する材料の反応は、欠陥や粒界のような小規模の特徴部に依存している。Yauたちは、金薄膜を加熱し、コヒーレントX線回折画像法を用いて、どのように、これらの微細構造が結晶粒成長中に発達するのかを追跡した(Suterによる展望記事参照)。この手法は、三次元での、その特徴部の非破壊での可視化を可能にした。この方法は、微細構造の変化を通して、外的刺激を材料の反応と関連付ける手助けとなり、それによって、微細構造工学による、新しい材料の開発が可能となるはずだ。(Sk,MY,kh)
高次高調波発生は有益な非線形効果で、この効果では、物質内の光と物質の相互作用によって、入力光の波長が短波長化する。典型的には原子ガス中でなされるが、ここではその過程の固体状態への拡張に関心がある。Yoshikawaらは、強力な偏光赤外パルスで単層グラフェンを励起することによって、9次高調波までの紫外光を生成した。筆者らは、この現象を理論的に分析し、他の固体状態系にも適用できる可能性を示唆しており、これは広帯域にわたる可干渉光源を開発する候補経路を与える。(NK,MY,kh)
インスリン様成長因子(IGF)のシグナル伝達経路は、妊産婦の栄養供給と胎児の栄養要求を制御する。Yangらは、必須なKRABの一員である亜鉛フィンガー・タンパク質ZFP568が、マウス発生の早期に、胎盤固有的なIGF2転写産物を明確かつ直接的に抑制することを報告している。インビボでのZFP568の除去は、転写の不適切な早期活性化を導き、その結果、IGF2ペプチドの過剰発現に起因する胚死をもたらす。このように、固有的でかつ的を絞ったプロモーターの着床前抑制は、生存にとって必須である。(Sh,nk,kh)
気候変動を押さえるための政策計画は殆ど、大気から二酸化炭素を除去する技術が、進行中の炭素排出を将来帳消しにできるだろうと仮定している。展望記事においてFieldとMachは、このような技術の殆どは初期段階であり、その将来的大規模使用に頼ることが危険であると警告している。例えば二酸化炭素を除去するための、二酸化炭素回収貯留付きバイオマス発電、再森林化,植林は、多量の土地と水を必要とするであろうし、従って食料保障や生物多様性を危機にさらすかもしれない。更に、排出が続くあいだ温度が最高になるのを許し、その後で二酸化炭素の除去につれて温度が下がることは、地球システムと人間社会が更に不安定となる危険を冒すことになる。(Uc,MY,kj,nk,kh)
呼吸困難及び横隔膜の運動障害は心不全の既知の症状であるが、通常それらは、肉体的緊張により横隔膜に損傷を与える肺水腫に起因するとされている。Fosterたちは、これが唯一の要因ではないことを見出した。マウスモデルにおいて、横隔膜の運動障害は肺水腫を伴わない心不全でさえ発生した。著者たちは、この観察をアンギオテンシンIIとβ-アドレナリン作動性シグナル伝達の変化に結びつけたが、それらは脳中枢で制御される換気過剰駆動を起こす。β-アドレナリン作動性シグナル伝達を標的とする薬剤は、換気過剰と結果の横隔膜損傷を防ぐのに効果的であったが、ただしその薬剤が血液脳関門を貫通した場合のみであった。(KU,kj,nk,kh)
腸機能を調節する神経細胞とグリア細胞は、発生中の神経管から出現する神経堤細胞に由来する。Lasradoたちは、単一細胞トランスクリプトームとモザイク変異生成法を用いて、腸管神経系がマウスでどのように構築されるかを追跡した。調節プログラムの発現の重なり合わせが基礎になって、クローン系統によって組織化された発生中の神経細胞によりそれぞれの細胞の運命が動的に決定される。クローンによる構築モデルは、腸の運動性が連続する各部分においてどのように協調し、腸分泌が運動性とどのように協調しているかを説明することができる。(KU,kj,kh)