AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約

Science March 24 2017, Vol.355

クエーサーの吸収線源を含む天体を同定する (Identifying the hosts of quasar absorbers)

地球から遠く離れたクエーサーへ向けた視線が、前景の物質を通過するならば、クエーサーの光の一部は吸収される。もし、銀河規模のガスが間に入ると、それは、クエーサースペクトル中に、減衰ライマンアルファ系(DLA)と呼ばれる、多数の吸収線を形成する。Neeleman たちは、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計を用いて、DLAがあると知られている二つのクエーサーを観察した。かれらは、そのDLAに関連する、前景にある二つの銀河中のガスとダストの放射を検出し、それらの星の形成率を測定することができた。ガスとダストという異なるDLAのトレーサーを結びつけることにより、初期の宇宙でどのようにして銀河が進化したのかを理解することが可能となるだろう。(Wt,nk,kh)

Science, this issue p. 1285

細胞突起が色素模様を配置する (Cell projections set up pigment pattern)

マクロファージは死んだ細胞や瀕死の細胞を排除し、侵入する微生物を同定して破壊する。しかしマクロファージはまた、発生と恒常性に関して非免疫的機能をも示す。EomとParichyは、ゼブラフィッシュ成体の色素縞形成の間、マクロファージが後胚期の組織再構築に必須であることを示している(Guilliamsによる展望記事参照)。 色素細胞は、細胞のある部類から別の部類へ細胞突起を介してシグナル物質を含有した小胞を中継する。マクロファージがなければ、この化学信号の中継は失敗し、成体の縞は乱れる。(Sh,kj,nk,kh)

Science, this issue p. 1317; see also p. 1258

ナノ粒子化されても金属は軟化しない (Nanograined metals avoid going soft)

ホール・ペッチの関係は、金属の硬度の増大を結晶粒径の減少と結び付けているが、粒子が非常に小さくなるとその関係は破綻してしまう。ナノ粒子からなる金属はさもなければ非常に硬かったはずで、これは残念なことである。Hu たちは、一連のニッケル・モリブデン合金において、この問題を回避する方法を見つけ出した。彼らは、モリブデンの組成を変化させて、ちょうど正しい温度で試料を焼きなまし、結果としてそれらのナノ粒子からなる試料の粒界を安定化させた。これにより、粒径の低減とともに硬度は増大し続けることが可能となり、それにより超高硬度被膜の設計への道筋を提供することができた。(Sk,ok,nk,kh)

【訳注】
  • ホール・ペッチ則の破綻:結晶粒径がナノ領域になった場合、粒径の減少とともに硬度が低下する(逆ホール・ペッチ則)という報告がなされている。これは、粒径の低下により粒界領域に分類される原子の割合が増加し、変形に対する粒界滑りの割合が大きくなっていることが原因である。
Science, this issue p. 1292

金属-酸化物の相乗効果 (Metal-oxide synergy)

二酸化炭素の水素付加は,メタノールを工業生産する上で重要な過程である。アルミナ支持体の上に銅(Cu)と酸化亜鉛(ZnO)から作られる触媒がしばしば用いられる。しかしながら,この反応に対する実際の活性部位(Zu-Cuの二種金属部位であるのか,ZnO-Cuの界面部位であるのか)については,議論が続いている。Kattelたちはモデル触媒を研究し,ZnCuが,表面酸化がZnOを形成する後でのみ,ZnO/Cuと同程度に活性となることを見出した。理論的な研究は,ZnO-Cu界面の活性部位でギ酸塩中間体を経由する経路を支持している。(MY,kh)

Science, this issue p. 1296

「あなた」を使って自己から他者へと一般化する (Using “you” to generalize from me to others)

他の人に焦点を当てる際に、ときには「あなた(you)」が使われるが、多くの状況では「あなた」は、誰でももしくはみんなという, 一般的な「あなた」を指し示すために使われる。Orvellたちは一般的な「あなた」の言葉の根底にある心理的機能について研究した。過去の否定的な経験について記述することを求められたとき、一人称代名詞の「私」ではなくて、一般的な「あなた」を使うことを課せられると、人々は、その経験に距離を置いて意味を引き出そうする可能性がより高かった。(Uc,MY,kh)

Science, this issue p. 1299

デング病の伝染連鎖長を見積もる (Estimating transmission chains for dengue)

デング・ウイルス(DENV)は、多数の無症状の感染を引き起こす。そのため、通常の調査は、事例のほんの一部を捉えるだけだ。Saljeたちは、塩基配列データと血清学により、DENV伝染の連鎖の長さを突き止める方法を開発した。彼らは、DENVの逐次的伝染は、一般に、近所の世帯間で起きていることを見出した。バンコクのような密集した都市部の中では、驚くほどわずかな伝染の連鎖しか存在していない。これが、風土病的流行を地域的背景とする、突発的流行をもたらす。巨大な都市環境は、このように、他地域に運ばれ得る様々なウイルスの供給源の役割を果たすかもしれない。(Sk,kj,nk,kh)

Science, this issue p. 1302

T細胞が肝臓でくつろぐのを助ける (Helping T cells feel at home in the liver)

肝臓に常在するT細胞は、マラリアやB型肝炎ウイルスなどの感染症を防ぐ。McNamaraらは、肝臓常在性CD8陽性T細胞がLFA-1を制御して発現量を増加させていることと、LFA-1とICAM-1の相互作用が肝臓洞のT細胞の巡回に重要であることを見出した。さらにLFA-1を欠失させた場合には、マラリア原虫(Plasmodium)またはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに動物が感染した後でさえ、CD8陽性T細胞はマウスに肝臓常在性記憶集団を形成しなかった。このようにLFA-1の発現は、一種の目に見えない防護柵として働き、肝臓の境界内で肝臓常在性の記憶T細胞を自由に動かせている。(Sh,MY,kj,kh)

【訳注】
  • LFA-1:リンパ球機能関連抗原1。膜貫通型のインテグリンで白血球に発現している。
  • ICAM-1:免疫系の細胞間相互作用に働く接着分子の一つでLFA-1のリガンド。
Sci. Immunol. 2, eaaj1996 (2017).

なぜ、痛みとストレスが鬱を引き起こすのか (Why pain and stress lead to depression)

慢性的な痛みあるいはストレスが、鬱の進行と関連している。Descalziたちは、神経損傷(または慢性ストレス)により誘発された鬱状態のマウス・モデルの脳における、遺伝子発現の変化を調べた。彼らは、信号伝達経路の構成要素を符号化する遺伝子発現において、鬱、不安、痛みを抱える患者にも生じている、いくつかの共通の変化を見出した。ノックアウト・マウスの解析結果は、その分子変化が、クロマチン・アセチル化の全体的な変化の結果かもしれないことを示唆していた。(Sk,kj,nk,kh)

Sci. Signal. 10, eaaj1549 (2017).

ガンと、不可避な複製因子R (Cancer and the unavoidable R factor)

多くの教科書は、ガンを引き起こす突然変異を、遺伝因子と環境因子の2つの主要な起源に起因すると考える。 最近の研究は、DNA複製に伴う避けられない誤りという第3の原因から起きる複製(R)変異のガンにおける顕著な役割を強調した。Tomasettiらは、遺伝的、環境的、および複製的因子に起因するガンを引き起こす変異の比率を決定するための方法を開発した(NowakとWaclawによる展望記事参照)。 彼らは、ガン・ドライバー遺伝子の変異のかなりの部分が実際に複製因子によるものであることを見出した。 その結果は、予防可能なガンの割合の疫学的推定と一致している。(Sh,nk,kh)

Science, this issue p. 1330; see also p. 1266

マッシュからマグマ溜りを作る (Making magma chambers from mush)

地殻浅部のマグマだまりは噴火して火山を作るか、固結して貫入岩体(あるいは深成岩体)となる。このようなマグマだまりは長時間にわたって溶融物(液体)を主体としたものであると従来考えられてきた。 Cashmanたちは、このような浅部マグマだまりのマグマは、地殻の様々な深さにまたがる、はるかに広大な、(粥状の)結晶度の高いマグマシステムから短時間に、かき集められたものであるという証拠を検討した。このパラダイムにより、火山のシステムに関する多くの地球物理学的、地球化学的特徴が説明できる。また、このパラダイムはマグマの進化を理解するための課題を提示し、火山がなぜ、どのようにして噴火するのかを知る上での手がかりともなる。(Wt,MY,tf)

Science, this issue p. eaag3055

樹状突起は予想以上に活動的 (Dendrites are more active than expected)

樹状突起は神経細胞組織の90%以上を占める。しかしながら,生体中で長期にわたり,遠位樹状突起の膜電位や棘波を測定することができないでいた。Mooreたちは,自由に行動する動物の新皮質遠位樹状突起から得られる,閾値以下の膜電位や棘波を記録する手法を開発した。得られた記録は非常に安定で,単一の樹状突起からの4日間にもわたるデータを提供した。予想外なことに遠位樹状突起は,細胞体よりほぼ5倍高い発火頻度で活動電位を生み出した。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • 遠位樹状突起:神経細胞中の樹状突起において,核がある細胞体に対して離れた位置にある樹状突起のこと。
Science, this issue p. eaaj1497

非対称受容体における複雑さの付加 (Added complexity in an asymmetric receptor)

N-メチル-d-アスパラギン酸受容体(NMDAR)は異種四量体のイオン・チャンネルで,化学的,電気的信号をシナプス後細胞で引き起こす。このチャンネルは脳の発育や機能に重要な役割を果たし,統合失調症,抑うつ,てんかんのような神経障害に対する治療薬の標的である。このチャンネルが開くには,グルタミン酸それにグリシンと結合して,チャンネルを閉鎖しているマグネシウム・イオンを遊離しなければならない。ほとんどのNMDARは,グリシンやグルタミン酸と結合する3種類の異なるサブユニットから成るが,これまでの構造的研究は,2種類のサブユニットだけからなる四量体に注目してきた。Lü たちは,3つの異種体からなるNMDARの構造を決定した。この構造研究は,異なる3つのサブユニットを持つことが,どのように受容体の対称性とサブユニットの相互作用に変更を加え,受容体調節の複雑さを向上させているのかを示している。(MY,nk,kh)

Science, this issue p. eaal3729

タンパク質で折り畳まれたDNAのナノ構造 (Protein-folded DNA nanostructures)

広範なDNAナノ構造は、短鎖DNA留め具を用いて、長い一本鎖DNAを折りたたむことによって組み立てられてきた。しかしながら、そのような構造を形成するには、典型的には、昇温してアニーリングすることが必要である。そのような構造の形成が生細胞系で適合するように、PraetoriusとDietzは、転写活性因子様のエフェクター・タンパク質を基にしてあつらえたタンパク質の留め具が、鋳型二本鎖DNAを折り畳む方法を開発した(Douglasによる展望記事参照)。この構造は折り畳まって、数十から数百ナノメートル尺度の利用者定義の幾何形状となった。これらのナノ構造は、室温の生理的緩衝液中で、自己組織化が可能だった。(NA,MY,kj,nk,kh)

Science, this issue p. eaam5488; see also p. 1261

変化する流れとともに行け (Go with the changing flow)

通常の流体の輸送は圧力差によって駆動される傾向があり、一方、アクティブすなわち生物学的な物質については、流体輸送は等方的であるか、または特定の化学勾配の存在によって制御される。Wuらは、分子モーターキネシンの微小管やクラスターの懸濁物を含有するアクティブ流体が、多様な幾何学的形状のマイクロ流路の中に閉じ込められている際に出現する自発的方向流を分析した(Morozovによる展望記事参照)。周期的トロイダルチャンネルと円筒形領域の中に閉じ込められているとき、その流れは組織化されて時計回りまたは反時計回りの一方向運動を続けた。奇妙なことに、この流れの様相は規模に依存していなかった。形状のアスペクト比が適切に選択されているかぎり、広範囲の大きさの系に対して流れが観察された。(ST,MY,kj,nk,kh)

【訳注】
  • アクティブマター:外部の移動駆動力に従って移動するのではなく、生物、あるいは細胞中のある種の物質のように、自らエネルギーを消費して移動する物質,粒子,集団のこと。
Science, this issue p. eaal1979; see also p. 1262

ペロブスカイトがいかにして鋭端を得るか (How perovskites have the edge)

2次元ルドルスデン-ポッパー型ペロブスカイトは、2つの有機層の間に、光起電力素子に用いられる無機-有機ペロブスカイト層を挟むことで量子井戸を形成する。Blanconらは、ペロブスカイト層が2格子単位厚み以上の場合、光生成された励起子は、太陽電池の中で、収集可能な自由担体を生み出す特異だが効率の高い過程をたどることを明らかにしている(BakrとMohammedによる展望記事参照)。ペロブスカイト層端部の低エネルギーの局在準位が励起子の電子と正孔への分離を促進し、生成した自由担体は再結合から十分守られる。(NK,MY,nk,kh)

Science, this issue p.1288; see also p. 1260

染色質の状態が薬剤応答を指令する (Chromatin state dictates drug response)

ホスホイノシチド(3)キナーゼ (PI3K)シグナル伝達経路を抑制する薬剤は、乳がん患者の一部の人に有効である。しかしながら、腫瘍はこれらの薬剤に耐性となり、この変化は、しばしばエストロゲン受容体によって調節される遺伝子の転写増加を伴う。PI3Kシグナル伝達とエストロゲン受容体の活性を結びつけるその機構をより深く理解することで、薬剤耐性を防ぐための戦略が可能性として示唆されるはずである。Toskaたちは、PI3Kの抑制が、特異的な後成的制御因子であるヒストン・メチル基転移酵素 KMT2Dを活性化することを見出した。KMT2Dによって触媒されるこのタンパク質の修飾はより開いた染色質状態を作り、結果としてエストロゲン受容体・依存的転写の制御を解き放つ。このように、PI3K阻害剤とKMT2D阻害剤からなる併用療法は、PI3K阻害剤単独よりもより効果的であるかもしれない。(KU,kj)

【訳注】
  • エストロゲン:ステロイド・ホルモンの一つ。女性ホルモンと呼ばれている。
Science, this issue p. 1324

リソソームのコレステロールがmTORC1を活性化する (Lysosomal cholesterol activates mTORC1)

mTORC1キナーゼは細胞代謝を支配する主要な栄養センサである。このキナーゼは,調節不全の場合,ガンや糖尿病を含む幾つかのヒトの病気を駆り立てる。最近の研究は,アミノ酸がmTORC1を調節する経路を明らかにした。対照的に,ステロールがmTORC1のシグナル伝達にどのように影響するのかについては,ほとんど分かっていない。Castellanoたちは,リソソーム内腔中で低密度リポタンパク質の処理から生じたコレステロールが,どのようにmTORC1のシグナル伝達を駆動するのかについて,機構面の詳細な証拠を提供している。彼らは,リソソームのコレステロール濃度をmTORC1の活性化に結び付ける要となる働きをする物質を特定している。予想外なことに,アルギニンによるmTORC1の調節で推定された仮想的なアミノ酸輸送体SLC38A9が,コレステロールによるmTORC1の活性化に対して不可欠である。さらに著者たちは,SLC38A9と,リソソームの主要なコレステロール輸送体であるニーマン・ピックC1(NPC1)タンパク質との間の物理的・機能的相互作用を明らかにした。食物脂質の供給変動に応答するmTORC1の能力にとって,SLC38A9-NPC1複合体は極めて重要である。(MY,kj,nk,kh)

【訳注】
  • リソソーム:加水分解酵素を含み,細胞の消化作用を助ける細胞小器官。
  • リポタンパク質:疎水性が強いため水に難溶な脂質が、水と油に親和性のあるタンパク質に結合して、水に親和性のあるタンパク質となったもの。低密度リポタンパク質はリポタンパク質の中でコレステロール含有量が最も多い。
Science, this issue p. 1306

NAD+結合がタンパク質の相互作用を調節する (NAD+ binding modulates protein interactions)

ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドの酸化型 (NAD+)の予想外の機能が、加齢や、年齢に関係した疾病への罹りやすさに関するいくつかの現象の根底にあるのかもしれない。Liたちは、タンパク質 DBC1(deleted in breast cancer 1)がNAD+に特異的に結合する領域を含んでいることを見出した。NAD+のDBC1 への結合は、DNA修復に重要な酵素である PARP1 [ポリ(アデノシン二リン酸・リボース) ポリメラーゼ 1]とDBC1の相互作用を抑制した。PARP1の活性はDBC1との相互作用により抑制される。このようなわけで、加齢に伴うNAD+の存在量の減少は、DBC1とPARP1の相互作用を促進することでPARP1の活性を減少させるのかも知れない。この機構は、老齢の動物にNAD+を補充した際の報告にある若返り作用の説明に役立つかもしれない。(KU,nk,kh)

Science, this issue p. 1312

Notch受容体をぐっと引っ張ることでシグナル伝達を調整する (Tugging on Notch receptor tunes signaling)

Notchタンパク質は細胞運命の調節に重要な膜貫通受容体である。このタンパク質は,そのリガンドが隣接する細胞の細胞膜に結合しているということにおいて,他とは異なっている。Lucaたちは,シグナル伝達におけるNotchタンパク質と個々のリガンドとの間の相互作用に対して洞察を与えている。リガンドJagged1に対する変異体と結合したNotchタンパク質の結晶構造が,O-結合型糖鎖を持つNotchタンパク質のドメインと,Jagged1の特定のドメインとの間の相互作用を明らかにした。この相互作用に及ぼすさまざまな機械的力の効果の測定で,力を印加すると受容体とリガンドの間の結合寿命が向上することが示された。この研究は,Notchタンパク質とリガンドとの親和性の低い相互作用が,どのようにしてシグナル伝達を引き起こすかを説明することの助けとなり,また力が,Notch・リガンド相互作用に対して様々に影響し得ることを示している。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • 糖鎖(グリカン):糖が鎖状に連なった分子。糖鎖付加されたタンパク質はもとに比べ機能が大きく変更される。
  • O-結合型:糖鎖がタンパク質に結合する様式のうちの1つで,タンパク質のセリンあるいはスレオニン側鎖の酸素原子に糖鎖が結合する。
  • ドメイン:タンパク質を構成するコンパクトな3次元構造の単位。
Science, this issue p. 1320

採寸向きの火災管理 (Fire management, made to measure)

生態系、およびその中に存在する種は、火災に対して、これらが回復するのに影響するさまざまな方法で対応している。展望記事において、KellyとBrotonsは、北米と豪州の火災の生じやすい生態系における、火災と生物多様性の関係についての、最近の研究に光を当てている。その結果は、火災の発生と、その空間的および時間的特徴が、その地域の生物多様性を形作っていることを示している。これらの知見は、人為的な火入れや火災の鎮圧といった火災管理業務を立案するのに役立ち、保全の取り組みを支援することができる。(Sk,ok,nk,kh)

Science, this issue p. 1264

樹状細胞におけるインフルエンザのINF応答を促す (Influenz-ing IFN responses in dendritic cells)

季節性インフルエンザ・ワクチンは何十年もの間生産され、市販されてきたが、常に予防に有効とは限らない。Athaleたちは、同じメーカーで製造された一価ワクチンに対する三価ワクチンを試験した。彼らは、適応免疫応答を開始するのに極めて重要なヒト樹状細胞のサブセットを活性化するそれらの能力を調べた。双方のワクチンは形質細胞様樹状細胞を活性化することはできたが、三価ワクチンのみが他の型の樹状細胞において抗ウイルス性インターフェロン(IFN)を誘発することができた。更に、一価ワクチンで免疫にされた人々は、血液中で初期INF応答を示さなかったが、三価のワクチン接種で免疫された人々は初期INF応答を示した。これらの興味をそそる結果は、抗原のミスマッチのせいにはできないワクチンの低い性能を説明するのに役立つかもしれない。(KU,nk,kh)

【訳注】
  • 三価ワクチン:3種類のインフルエンザ・ウイルスに対し免疫を獲得できる。
  • 形質細胞様樹状細胞:インターフェロン産生を専門とする樹状細胞。
Sci. Transl. Med. 9, eaaf9194 (2017).

緑を見るのがより簡単 (It's easier to see green)

植物の生産を見積もる遠隔観測データの緑色の画素は、地球の生態系について多くのことを語ってくれる。しかしながら、1画素に含まれる地表面のどれほどの割合が、実際に植物に覆われているのかを知る必要がある。Badgleyたちは、1画素中の植物被覆率を評価するために、陸生植物の近赤外線反射(NIRV)に基づく方法を開発した。NIRVの計算の容易さと、数十年に及ぶ中解像度の遠隔観測データへの適用性は、気候や土地利用の変化に対する農業及び自然の生態系の反応を定量化する手助けになるであろう。(Sk,nk,kh)

Sci. Adv. 10.1126/sciadv.1602244 (2017).