寄生原虫の小器官を標的とする低分子 (Small molecules to target parasite organelle)
グリコソームはペルオキシソーム様の小器官で,アフリカ睡眠病,シャーガス病,リーシュマニア症を引き起こす寄生虫が有する解糖酵素を中に詰めている。Dawidowskiたちは,低分子阻害剤を設計し,ペルオキシソーム発生に関与するタンパク質のうちの2つ(PEX5とPEX14)の間の相互作用を遮断した。この2つのタンパク質は,細胞質からのグリコソーム基質タンパク質の移入を可能にする。低分子の偽ペプチド阻害剤は,ヒトのPEX相同体を妨げることなくトリパノソーマ寄生原虫をその代謝の破綻を引き起こすことで殺す。マウスでの予備的な研究で,抗寄生原虫効果が確認された。(MY,kj,kh)
- ペルオキシソーム:直径0.2~1.5μmの単膜に囲まれた細胞内小器官で,多くの酸化酵素を含み,多様な物質の酸化反応に関わる。
- アフリカ睡眠病:サハラ以南のアフリカで発生し,ツェツェバエの吸血でトリパソーマ原虫に感染することで発症する。ひどくなると神経疾患を引き起こし,昼間の居眠りや夜間の不眠となり,死に至る場合もある。
- シャーガス病:中南米で発生し,カメムシ目昆虫のサシガメの吸血でトリパソーマ族の原虫に感染することで発症する。感染者の20~30%程度が心臓合併症や腸管合併症を起こす。
- リーシュマニア症:熱帯・亜熱帯・南ヨーロッパなど90カ国以上の地方で広く見られ,サシチョウバエ類の吸血でトリパソーマ科原虫に感染することで発症する。