チベットの浸食作用を隆起から分離する (Unlinking erosion from uplift in Tibet)
通説に従えば、地殻の隆起運動に浸食が切り込んでいくので、峡谷、すなわち、大きな高原の端に沿う河川勾配"遷移点"の位置は、固定されたままであると考えられる。急速な隆起と浸食が生じているチベット高原以上に、これがはっきりと見えるところはないはずだ。しかし、Kingたちは、東チベットの Parlung River に沿うある主要な遷移点のゆっくり移動の証拠を見出した。彼らは、地域の冷却速度を決定するため、マルチOSL(光励起ルミネセンス)熱年代学と呼ばれる、並外れた時間分解能を有する新手法を用いた。Parlung の遷移点は、地殻隆起に呼応して定常的に上流側に移動しているらしい。この地殻隆起は、その局所的浸食速度と無関係である。(Wt,nk,kh)
- 遷移点(knickpoint):川や谷の縦断勾配が急に変わる地点