AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 23, 2002, Vol.297


短信(Brevia)
骨髄細胞のニューロン細胞への分化転換の失敗(Failure of Bone Marrow Cells to Transdifferentiate into Neural Cells in Vivo)

以前の報告によれば、成熟したマウスの骨髄細胞は中枢神経系のニューロンの性質を持つ 細胞に分化転換する能力があるといわれていた。しかし、Castroたち(p. 1299)の分析に よれば、マウスの骨髄細胞の分化転換能力は、以前考えられているほど大きくないことが 示された。(Ej,hE)
Failure of Bone Marrow Cells to Transdifferentiate into Neural Cells in Vivo
   Raymond F. Castro, Kathyjo A. Jackson, Margaret A. Goodell, Claudia S. Robertson, Hao Liu, and H. David Shine
p. 1299.

始生代における大規模な衝突の出来事 (Large Archean Impact Event)

初期太陽系における地球への天体衝突で形成されたクレータは、長期間侵食されることに なったが、衝撃による衝撃放出物(ejecta)は、始生代のクラトン地殻(Archean cratonic crust)の一部分に残されている。Byerlyたち(p.1325)は、南アフリカやオーストラリアで 見つかった最下層衝撃放出物層(lowermost ejecta layers)から、ジルコンの鉛-ウラニウ ム年代を計測した。これら広く離れた地点において、同一の34億7000万年前という年代が 得られたことから、大規模な衝撃により全世界的な衝撃放出物層を形成したこと、おそら く初期の地球生命を示すかすかな証拠さえ変えてしまったであろうことを示している 。(TO,Og,Nk,Tk)
An Archean Impact Layer from the Pilbara and Kaapvaal Cratons
   Gary R. Byerly, Donald R. Lowe, Joseph L. Wooden, and Xiaogang Xie
p. 1325-1327.

BeH2をフリーにする( Freeing BeH2)

理論家たちは、BeH2が通常8個の価電子の代わりに6個の価電子しか有してお らず、この分子に関心を持っていた。分光学者はフリーなBeH2分子をつくる のが難しく、理論家たちの予想を確かめることが出来なかった。その固体化合物は BeH4からつくられ、単離した分子のスペクトルはマトリックス内で安定化し た後でのみ得られていた。Bernathたち(p. 1323)は、高温炉の中で電気放電を用いてフリ ーな分子を発生させた。赤外発光スペクトルの解析により、この分子が対称性の,直線的 構造を示しており、極めて正確な結合距離をも与えている。(KU)
The Vibration-Rotation Emission Spectrum of Free BeH2
   Peter F. Bernath, Alireza Shayesteh, Keith Tereszchuk, and Reginald Colin
p. 1323-1324.

ライオンのたてがみの説明( The Mane Explanation )

雄のアフリカライオンのたてがみは性的二形であるが、その適応性にどのように機能して いるかは謎であった。WestとPacker(p. 1339;Withgottによるニュース解説参照)は、フィ ールド実験と30年間に渡る長期のデータを結びつけて,ライオンのたてがみの生物学に関 する実際的なあらゆる側面を論じている。著作たちは、ライオンのたてがみの黒さが雄の ホルモンや栄養条件に関する信頼に足る指標であり、他のライオンはたてがみの色に応答 していること、及び黒いたてがみの雄は彼らの子孫を、より保護しうることを見出した 。雄は涼しい月や、より涼しい生息地では黒ずんだたてがみを成長させ、より温暖な気候 条件ではたてがみは短くなる。(KU)
EVOLUTIONARY BIOLOGY:
Cool Cats Lose Out in the Mane Event

   Jay Withgott
p. 1255-1256.
Sexual Selection, Temperature, and the Lion's Mane
   Peyton M. West and Craig Packer
p. 1339-1343.

毒に対する好みを発達させる(Developing a Taste for Toxins)

自然選択の根底にあるメカニズムを理解するためには選択が生じる個々の違いに注目する 必要がある。Geffeneyたち(p. 1336; およびHuey と Moodyによる展望記事参照)は、肉食 動物と捕食される動物の神経生理学的メカニズムを支える複雑な生物的特性による軍備競 争の適応的拡散について総合的研究を行った。北アメリカ西部のガーターへびは、その捕 食動物であるイモリの致死性神経毒に対してテトロドトキシン-抵抗性のナトリウムチャ ネルを進化させることで抵抗力を増加させた。この適応は共進化を生じる同一地域内で複 数回進化を繰り返している。(Ej,hE)
NEUROSCIENCE AND EVOLUTION:
Snake Sodium Channels Resist TTX Arrest

   Raymond B. Huey and William J. Moody
p. 1289-1290.
Mechanisms of Adaptation in a Predator-Prey Arms Race: TTX-Resistant Sodium Channels
   Shana Geffeney, Edmund D. Brodie Jr., Peter C. Ruben, and Edmund D. Brodie III
p. 1336-1339.

アモルファスな連続性(An Amorphous Continuum)

一見する限り、ひとつの物質にはひとつのアモルファス形態のみがあるように見えるが 、連結性が異なり、密度が異なる別個のアモルファス相が存在することも可能である。た とえば、低温高圧下では、高密度のアモルファス水を成分とする氷が作られるが、加熱下 では、それは膨張して、低密度なアモルファスな氷を形成する。この遷移は、単一ステッ プのプロセスであると信じられていたが、Tulk たち (p.1320; Soper による展望記事を 参照のこと) によるX線および中性子散乱研究は、この遷移が連続的に起こることを示唆 している。熱を順次加えながら、各ステージで固有の構造因子を有する異なった準安定の 形態が得られた。(Wt)
THERMODYNAMICS:
Enhanced: Water and Ice

   Alan K. Soper
p. 1288-1289.
Structural Studies of Several Distinct Metastable Forms of Amorphous Ice
   C. A. Tulk, C. J. Benmore, J. Urquidi, D. D. Klug, J. Neuefeind, B. Tomberli, and P. A. Egelstaff
p. 1320-1323.

第2の脊椎配列(Second Vertebrate Sequenced)

フグ(Fugu rubripes)のゲノムは、ヒトの約1/10の小さなサイズであり、脊髄動物の進化 を研究するために価値のあるモデルである。Aparicioたち(p.1301; Hedges とKumarによ る表紙と展望記事参照)は、フグの全体ゲノムのショットガン塩基配列決定(whole-genome shotgun sequencing)を示す。フグのゲノムは、ヒトに比べてずいぶんとコンパクトでは あるが、両者には比較可能なかなりの数の遺伝子があり、それにフグには、哺乳類構造 (mammalian structures)とよく似た巨大遺伝子をいくつか持っている。しかしながら、ヒ ト遺伝子の約25%は、フグにおいて対応する遺伝子が存在しない。硬骨類の魚と哺乳類と が分岐して以来4億5000万年間に、多くの再配列をしつづけてきた。(TO)
GENOMICS:
Vertebrate Genomes Compared

   S. Blair Hedges and Sudhir Kumar
p. 1283-1285.
Whole-Genome Shotgun Assembly and Analysis of the Genome of Fugu rubripes
   Samuel Aparicio, Jarrod Chapman, Elia Stupka, Nik Putnam, Jer-ming Chia, Paramvir Dehal, Alan Christoffels, Sam Rash, Shawn Hoon, Arian Smit, Maarten D. Sollewijn Gelpke, Jared Roach, Tania Oh, Isaac Y. Ho, Marie Wong, Chris Detter, Frans Verhoef, Paul Predki, Alice Tay, Susan Lucas, Paul Richardson, Sarah F. Smith, Melody S. Clark, Yvonne J. K. Edwards, Norman Doggett, Andrey Zharkikh, Sean V. Tavtigian, Dmitry Pruss, Mary Barnstead, Cheryl Evans, Holly Baden, Justin Powell, Gustavo Glusman, Lee Rowen, Leroy Hood, Y. H. Tan, Greg Elgar, Trevor Hawkins, Byrappa Venkatesh, Daniel Rokhsar, and Sydney Brenner
p. 1301-1310.

ブラックホールの融合によるX形状の電波(X Marks the Merger)

アインシュタインの相対性理論によると、超重質量のブラックホール同士が融合すること により重力波が発生する。天文学者達はこのような融合がどこで、いつ、そしてどの位の 頻度で発生するかを決定するために研究を行ってきた。MerrittとEkersは(p. 1310)、こ のような融合により、より重いブラックホールの回転の向きが変化し、その結果、回転軸 に沿って観測されるブラックホールからのジェットが方向を変えることを発見した。古い ジェットのまわりに形成される帯状電波源 (radio lobes) と、方向の変わった新しいジ ェットのまわりに形成された電波源とが交差しているいくつかの銀河で観測される X字形 状の電波源はこのモデルによく合致する。見積もられたこの事象の発生頻度によると今後 10年以内に重力波が観測できる可能性がある。(Na,Nk)
Tracing Black Hole Mergers Through Radio Lobe Morphology
   David Merritt and R. D. Ekers
p. 1310-1313.

C-O結合も作る(Making C-O, Too)

抗生物質のエリスロマイシンや抗がん薬のepothiloneを含む天然物のpolyketideはアシル 補酵素A (CoA)前駆体からポリケチド(polyketide)合成酵素(PKS)によって生合性される 。既知のPKSはそれぞれ異なった構造とメカニズムを持っているが、すべてに共通するの はポリケチド骨格中のC-C結合の形成を触媒するβ-ketoacyl合成酵素(KS)領域を持ってい ることである。Kwonたち(p. 1327)はストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)から環状ポリマーのノナクチン(nonactin)合成においてC-O結合に必要な最小の 遺伝子の同定と特徴付けに成功した。2つのKS, NonJ および NonKが、C-C結合ではなく C-O結合を形成することによってCoA前駆体を順次縮合するのを触媒する。この活性を他の PKS中に、遺伝子工学的に導入して新規なポリケチドを作ることができるかも知れない 。(Ej,hE)
C-O Bond Formation by Polyketide Synthases
   Hyung-Jin Kwon, Wyatt C. Smith, A. Janelle Scharon, Sung Hee Hwang, Mark J. Kurth, and Ben Shen
p. 1327-1330.

リセプターを妨害(Interfering with Receptors)

上皮成長因子(EGF)に関する受容体ファミリーは、発生の過程で、幅広い細胞の増殖お よび分化にとって重要なシグナルを伝達する。多くのヒト癌においてこれらの受容体の不 適切な発現が発生しており、そしてこれらの受容体の一つ(HER2)に対する抗体である Herceptinが乳癌の治療において使用されている。ChoおよびLeahy(p. 1330)は、この受 容体ファミリーの一つの構成分子、HER3の、完全な細胞外部分についての、2.6-オングス トロームの結晶構造を示している。この構造は、I型インスリン様成長因子受容体中に見 出されるドメインと構造的ホモロジーを有する4つのドメインからなり、HER3の構造は 、ドメインIIとIVとの間の接触を示しており、これがリガンド結合ドメインの相対的配向 を束縛し、そしてEGFRの複合的な親和性型とシグナル伝達の間のリガンド結合により受容 体中に誘導される立体配座変化の両方を理解するための構造的基礎を提供する。L-型をし た半分の一つは、もう一方の頂上に位置しており、突き出た枝状をもつドーナツ型を呈し ている。枝状部分および円環面に以前にマップされたEGF結合部位の領域は、リガンドと 豊富に相互作用するために、一緒になっていなければならない。この広範囲にわたる立体 配座変化を妨害することにより、治療に将来有望な経路を提供するかもしれない。(NF)
Structure of the Extracellular Region of HER3 Reveals an Interdomain Tether
   Hyun-Soo Cho and Daniel J. Leahy
p. 1330-1333.

心臓へのリスク(Putting the Heart at Risk)

毎年、合衆国内の約450,000人の人々が、心不整脈により亡くなっている。Splawskiたち (p. 1333;Marxによるニュース記事を参照)による遺伝学的研究により、アフリカ系ア メリカ人の約13%を含む群である、心臓のナトリウムチャンネル遺伝子SCN5Aの特異的な 変異アリルをもっている個体において、不整脈のリスクは、若干増大することを示してい る。このアリル単独では、生命を脅かすほどの不整脈を引き起こすことはないが、特定の 医薬品を使用するなど、その他の後天性のリスク因子を負荷する際に、不整脈のリスクを 増大させる。このアリルは、一般的な集団の中からこれらの追加的なリスク因子をさける べき個体を同定するための、貴重なマーカーとなりうる。(NF)
PHARMACOGENETICS:
Gene Mutation May Boost Risk of Heart Arrhythmias

   Jean Marx
p. 1252.
Variant of SCN5A Sodium Channel Implicated in Risk of Cardiac Arrhythmia
   Igor Splawski, Katherine W. Timothy, Michihiro Tateyama, Colleen E. Clancy, Alka Malhotra, Alan H. Beggs, Francesco P. Cappuccio, Giuseppe A. Sagnella, Robert S. Kass, and Mark T. Keating
p. 1333-1336.

開始と中断(Starts and Stops)

哺乳類の卵胞において、体細胞性顆粒膜細胞の数層が卵母細胞を囲み、卵母細胞の発生を 支援する。この構造では、卵母細胞は減数分裂を開始するが、後に黄体形成ホルモンが再 開を引き起こす時まで減数分裂が中断する。どのように減数分裂が中断されるのか?この 質問の答えを見つけるのは、卵母細胞から濾胞を除去すると減数分裂が再開させるため 、困難であった。しかしMehlmannたち(p. 1343)は、まだ濾胞性細胞に囲まれた卵母細胞 を注射できる技術の提供を可能にした。著者は、卵母細胞における減数分裂の静止を維持 することにGsのGタンパク質の活性が必要であることを示し、顆粒膜細胞からの信号が受 容体を通し作用することによってGタンパク質を活性化することを示唆している。 (An)
Meiotic Arrest in the Mouse Follicle Maintained by a Gs Protein in the Oocyte
   Lisa M. Mehlmann, Teresa L. Z. Jones, and Laurinda A. Jaffe
p. 1343-1345.

インシュリン分泌における持続的細孔(Persistent Pores s in Insulin Secretion)

刺激受けて分泌している間には、分泌顆粒が形質膜に融合することによって分泌顆粒の中 身を遊離する。Takahashiたち(p. 1349)は、二光子励起イメージング法を用い、膵臓の島 からのインシュリン分泌の時の融合細孔の動力学を解明した。主に膜の脂質から成る細孔 の寿命は、他の単細胞を用いた研究で予測された寿命よりもかなり長かった。(An)
Fusion Pore Dynamics and Insulin Granule Exocytosis in the Pancreatic Islet
   Noriko Takahashi, Takuya Kishimoto, Tomomi Nemoto, Takashi Kadowaki, and Haruo Kasai
p. 1349-1352.

樹状突起の王子?(Prince of Dendrites?)

ニューロンは、自分の樹状突起から情報伝達の情報を受けるが、樹状突起は、単純で薄い 細胞体の伸展から複雑で分枝した伸長までの幅広い構造をもつ。ショウジョウバエの腹側 細孔の感覚性器官を研究するMooreたち(p. 1355)は、樹状分枝の複雑さがhamletという一 つの遺伝子によって制御されていることを発見した。hamletタンパク質発現を正常なレベ ルより増加または減少する遺伝的操作を行うと、ニューロンの発生の早期に局所の前駆細 胞が単一樹状突起あるいは複雑な樹状分枝を生成した。遺伝子配列と細胞下の局在化の分 析によれば、hamletが転写制御因子をコードすることを示唆した。(An)
hamlet, a Binary Genetic Switch Between Single- and Multiple- Dendrite Neuron Morphology
   Adrian W. Moore, Lily Yeh Jan, and Yuh Nung Jan
p. 1355-1358.

隘路をスピンする(Spin the Bottleneck)

ひとつの量子ドットに電子を加えると、クーロン遮断効果が起きる---ドットを占有する 電子は静電力を発生するため、他の付加される電子は、この斥力を乗り越えねばならない 。ある電子状態が占有され、それらを通じての電子輸送は、また、パウリの排他律により 現れるスピン依存性を示すはずである。Ono たち (p.1313) は、量子ドット対の1つのス ピンが固定された状態における輸送測定について報告している。結合ドット系による非対 称な輸送特性は、パウリの排他律から予想されるスピン遮蔽(spin blockade)と一致する 。(Wt)
Current Rectification by Pauli Exclusion in a Weakly Coupled Double Quantum Dot System
   K. Ono, D. G. Austing, Y. Tokura, and S. Tarucha
p. 1313-1317.

飛び交う酸素を追いかける(Follow the Jumping Oxygen)

燃料電池やセンサーのような用途にはセラミックス中の酸素陰イオンの移動度がその性能 を決する。この移動度は、一般的には高温のときに限って見られるが、低温でも作動する ような物質を見つける努力の成否は伝導メカニズムのよりよい理解にかかっている。Kim and Grey (p. 1317; およびStebbinsによる展望記事参照)は酸素-17とバナジウム-51のマ ジックアングルでの回転(すなわち、微小サンプルを外磁場に対して54.7度で高速回転し 、方位依存性の強いスペクトル線の広がりを平均化させる)でのNMRを利用して、極めて 移動度の低い温度においてもアモルファスの陰イオン伝導体 Bi4V2O11 および -Bi4V1.7Ti0.3O10.85の酸素陰イオン移 動度に寄与している部位を決定した。これらバナジウム酸塩ビスマスにおける酸素伝導度 の原因は酸化-イオンがバナジウム酸塩の層内の異なる部位間と Bi2O22+層を飛び交うことによって生じる。二重共鳴 法を利用して格子中の等価部位間の動きを検出した。(Ej,hE)
MATERIALS SCIENCE:
Dynamics in Ceramics

   Jonathan F. Stebbins
p. 1285-1287.
Probing Oxygen Motion in Disordered Anionic Conductors with 17O and 51V MAS NMR Spectroscopy
   Namjun Kim and Clare P. Grey
p. 1317-1320.

リボソームにおけるシグナル認識粒子の位置(Signal Recognition Particle Sites in the Ribosome)

真核生物ではシグナル認識粒子(SRP)が、分泌性タンパク質のリボソーム-新生鎖複合体 (RNC)と相互作用し、それらを小胞体へと、その受容体(SR)であるER膜タンパク質との相 互作用を介して導いている。このたび、タンパク質クロスリンク法を用いて、Poolたちは 、SRPのサブユニットの1つであるSRP54とさまざまな機能段階にあるリボソームとの相互 作用を解析した(p. 1345)。SRP54がシグナルペプチドに結びついているときには、それは 、出口(EXIT)部位にあるリボソームの2つのタンパク質、L23aとL35のそばにあり、これに よって、リボソームから出てくる新生鎖を認識することが可能になる。SRPがSRに結合す ると、L23aへの近接は失われる。SRによって引き起こされる結合のこの変化は、この transloconをリボソームと合体させることで、シグナルペプチドがたやすく転位置チャネ ルに挿入されるようにしているのかもしれない。(KF)
Distinct Modes of Signal Recognition Particle Interaction with the Ribosome
   Martin R. Pool, Joachim Stumm, Tudor A. Fulga, Irmgard Sinning, and Bernhard Dobberstein
p. 1345-1348.

まずやるべきことがある(First Things First)

DNA損傷などの細胞障害性ストレスに応答する細胞は、ミトコンドリアが透過性をもつよ うになり、カスパーゼ活性化因子として機能するチトクロムcを遊離するようになった後 で初めて、アポトーシス-誘導カスパーゼを活性化すると考えられている。Lassusたちは 、この見方に挑戦する実験結果を提示している(p. 1352; また、KumarとVauxによる展望 記事参照のこと)。彼らは、アデノウイルス性発癌遺伝子E1Aによって形質転換したヒトの 繊維芽細胞ならびにその他のヒト腫瘍細胞系におけるDNA損傷によって引き起こされたア ポトーシスをモニターした。カスパーゼ-2の発現をブロックするために小さな干渉性 RNA(siRNA)を用いると、ミトコンドリアからのプロアポトーシス因子の遊離が抑制され 、アポトーシスへ向かう細胞の比率は減少した。siRNAと相互作用しないようにデザイン されたカスパーゼ-2RNA変異体を発現させると、アポトーシスは復活した。このように 、DNA損傷によって活性化される「内因性」の死を誘導する経路ですら、ミトコンドリア を透過性にするために、初期の段階でのカスパーゼの活性化を必要とするのである。(KF)
APOPTOSIS:
A Cinderella Caspase Takes Center Stage

   Sharad Kumar and David L. Vaux
p. 1290-1291.
Requirement for Caspase-2 in Stress-Induced Apoptosis Before Mitochondrial Permeabilization
   Patrice Lassus, Ximena Opitz-Araya, and Yuri Lazebnik
p. 1352-1354.

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