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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science January 26, 2001, Vol.291
磁気圏を視る(Imaging the Magnetosphere)
地球を惑星間磁場と太陽風から保護している地球の磁気圏は地磁気により支配されてい る。磁気圏は一般的な観測機器では観測できないプラズマで構成されている。2000年 3月の打ち上げ以来、IMAGE観測衛星(Imager for Magnetopause-to-Aurora Global Exploration)はこの技術的課題を克服しプラズマの画像化を行っている。Burchたちは (p. 619、表紙も参照)、何回かの地磁気嵐の期間中の磁気圏の変化を示し、地上での電 磁波通信と衛星の電磁波通信に影響を与える太陽と地球の相互作用を理解するためにこ れらの画像を関連付けている。また、予想外の2つのプラズマの特徴が観測された。そ の1つは真夜中直前の桶形状領域と、もう一つは昼側における肩形状領域であり、プラ ズマの尾が黄昏側磁気圏から磁気圏界面に向かって伸びているという、30年前の理論を 確認した。(Na,Nk)
惑星状星雲はそんなに熱くない?(Planetary Nebulae Not so Hot?)
惑星状星雲は、低質量星(太陽質量の1倍から10倍)が白色矮星へ崩壊する過程で生み出さ れた高度にイオン化された気体の泡である。泡の表面は強く輝いており、いまなお燃焼し ている中心星からの高エネルギー紫外領域の光子の吸収と、再結合水素、ヘリウムおよび 他の元素からの、より長波長におけるそれらの光子の再放出を通して非常な高温に維持さ れていると考えられてきた。Johansson と Letokhov (p.625) は、その明るい放射は、実 際は、珪素のような重い元素の水素の Lyman α 輻射による共鳴増強2光子イオン化現象 であると示唆している。惑星状星雲で観測されるスペクトル線を説明するこの従来とは異 なるメカニズムによって、星雲表面での高温や、そして、恐らくは、死につつある中心星 での核融合は必要ないであろう。(Wt,Nk)
滴は速攻する(Droplets Make a Fast Break)
表面エネルギーや温度などのように表面で勾配があると、流体の流れを引き起こすことが できる。平衡が失われた表面張力による流体のこの動きは、”ワインの涙”(強いワイン をワイングラスに半分ほど注ぎ、液面を揺らせるときグラスの内側にできる液滴。これは ワインの評価にしばしば利用される)あるいはMaragoni効果として知られており、流体を ゆっくりと動かす傾向がある。Danielたち(p.633;Wasanたちによる展望記事参照)は最近 、表面エネルギーの勾配を持つように作られた表面が、密な蒸気の流れ(フラックス)にさ らされた時に滴は成長し他の水滴と合わさってその動きが早められることを示した。その 滴は、Maragoni流よりも100倍から1000倍も早い速度で流れる。この効果は、熱交換やヒ ートパイプの効率を向上させることに使うことができるだろう。(TO)
遅い粒子も光ることがある(Slow Particles Can Also Shine)
真空中の光の速度は一定だが、物質中ではその速度は遅くなる。ある媒体の中を荷電粒子 が光の位相速度より早く移動したら、放射線を出す。これが原子炉で青色に発光するチェ ンレンコフ照射であり、原子力や高エネルギー物理で相対論的な粒子を検出したり、カウ ントしたり、同定するためにも使われている。従来、粒子の速度と放射線照射の円錐角度 とは一対一の関係があると考えられていた。 Stevensたちによる理論的かつ実験的な研究 で(p. 627)、光速より少し遅い亜高速粒子でもチェレンコフ照射が起きることを示してい る。(Na,Nk)
サイレンシングは複製に無関係(Silencing Is Replication‐Free)
遺伝子サイレンシングとは、細胞が染色体DNAの大きな断片を異質染色質中への組み込 によりその断片を閉じ込める機構であり、真核細胞生物のライフサイクルにおいて数多 くの種々の細胞型の分化にとって重要なプロセスである。酵母接合型の二つの座位 、HMLとHMRのサイレンシングが細胞周期、S期、或いはDNA合成の期で確立し、そしてそ れ故にDNA複製がこのプロセス中に含まれていると推定されていた。 Kirchmaierと Rine(p.646)、及びLiたち(p.650)は染色体から切除され、それ故複製不能なHMR座位を 含むDNAの一部が、それにもかかわらず有効にサイレンシングされることを示している 。このことは複製がサイレンシングの確立に必要でないことを示している。Smithと Boekeは、展望記事において複製がサイレンスされた状態の維持、或いは遺伝(或いはそ の両者に)にとっていまだ役割を担っているということを指摘している。(KU)
ナノチューブは流れに身を任せる(Nanotubes Go with the Flow)
分子エレクトロニクスを発展させる上で、ナノスケールの個々の構成要素のアライメン トとパターニングは決定的に重要な要件となろう。Huang たち (p.630) は、流体の流 れと表面の化学的パターンニングの組み合わせに基づく、ナノワイアやナノチューブの 機能的構造を階層的に組み立てる一つのプロセスについて述べている。かれらは、ナノ メートルからミリメートルの長さのスケールで流体の流れを用いたナノワイアの整列と 、交差したナノワイア格子を制御して組み立てる方法について示している。連続した各 ステップ対して層ごとに異なる流れを用いた一層ずつ構成する方式により、複雑に交差 した構造を作成した。(Wt)
ナノキャビティー内の挙動(Dynamics Within Nanocavities)
膜貫通タンパク質の細孔は、その細孔の開口と、それ故そのイオンのコンダクタンスを著 しく減少させるシクロデキストリン(CD)分子により前もって内部的に調節されている 。Guたち(p.636)は、α‐溶血素の変異体に同様の作用をさせることによりこのアプロ ーチを拡張した。α-溶血素は細孔にそった異なる位置で異なる2つのCDと結合して約 4400Å
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の体積を持つナノキャビティーをつくることが出来る。一方のCDは通 過するが、もう1つのCDは通過しない単一の荷電ゲスト分子を電気的ポテンシャルをもつ キャビティーに導入することが出来、そこに数百ミリ秒の間存在する。このプロセスによ りキャビティー内に様々な分子を区別して捕獲することができる。(KU)
RanのImportinパートナー(Ran's Importin Partner)
Ranという小さなグアノシン・トリホスファターゼは、核へのタンパク質の輸送に関与 するが、最近では紡錐体形成の制御因子としても認識されている。 Wieseたち(p 653)は、Ranは、importinβという結合パートナーを、微小管の形成の制御のためにも 、タンパク質の輸送の促進のためにも使用していることを示している。importinβは 、輸送(cargo)タンパク質を核へ運び、グアノシン三リン酸(GTP)と結合したRanと相互 作用すると、そのタンパク質を遊離する。紡錘構築の場合には、importinβは 、NuMA(核の分裂装置)タンパク質と相互作用するが、 NuMAタンパク質は、紡錘の極に おける微小管を組織化することを補助する。活性化Ranは、importinβからNuMAを遊離 させることによって、微小管の構築を促進する。 (An)
振り返ってチェックするの?(Checking Back?)
霊長類の脳において、陳述記憶を符号化したり検索したりすることは、内側の側頭葉シ ステムと新皮質との相互作用に依存する。Nayaたち(p 661)は、活動中の覚醒のサルに おける鼻周囲皮質の領域36および領域TEの神経細胞の活性を記録したが、これらの領域 は、形態学的に別でありながら、相互に相互接続する側頭皮質領域でもある。長期記憶 から標的を検索することを必要とする視覚的な対を連合する課題をやる間に、脳におい て前方向へ伝播する正常な知覚的信号だけではなく、後方向へ伝搬する記憶信号も観察 した。それは、対象に関して蓄えられた知識を引き出す働きをするのかもしれない 。(An)
サポート役以上(More than a Supporting Role)
グリア細胞はしばしば、数的には少ないものの有名なニューロン性脳細胞の“サポート ”役として記述される。ここでUllianたち(p. 657;Helmuthによるthe news storyを 参照)は、培養下におけるグリア細胞がニューロンに属するシナプスの数をコントロ ールし、そしてシナプスにおける適切な電気生理学的反応を維持するために必要である ことを示す。新生児ラットでは、生後1週間後、星状グリア細胞が現れてそして増殖す るのとまさに同時に、シナプスが上部小丘で形成される。著者たちによれば、グリア細 胞が、発生中の脳内における未成熟かつ高度に塑性のシナプスを、シナプス回路構成を 適所で固定化するために、増加させ安定化させる引き金となりうることが示唆される 。(NF)
脂質を外に(Exposing Lipids)
NK-T細胞は、タンパク質由来抗原よりも脂質を認識する、少数かつまれなクラスのT細胞 である。脂質抗原、すなわちCD1分子、の提示に関与する構造はかなりの期間研究されて きたが、しかしこの様式の抗原提示に対する細胞内での要求性については、未だ確定して いなかった。Prigozyたち(p. 664)は、タンパク質抗原に関しては、細胞内修飾がT細胞 に対する脂質の提示に必須の部分であり得ることを報告する。著者らは、モデルグライコ スフィンゴ脂質抗原の前駆体を使用して、リソソーム小胞の酵素的機構が正常の場合にの み、NK-T細胞による抗原認識が生じうることを見いだした。このプロセスには 、Galα1→2GalCerを修飾する酵素、α-ガラクトシダーゼAによる末端糖基の除去が関与 しており、この結果、抗原性モノサッカライドエピトープを生成するように修飾された脂 質が提示分子CD1dと結合することが可能になる。(NF)
ゆっくりと動いていく(Crawling Along)
キネシンのような運動性タンパク質は一般に、糸状の尾部につながった2つの「頭部 」をもっている。運動性タンパク質は、微小管(microtubule)として知られる細胞内経 路に沿って自分自身(およびそれに載ったもの)を運ぶためにエネルギーを使う 。KawaguchiとIshiwataは、このプロセスを巧妙な生物物理学的技法を用いて他のプロ セスから切り離して調べ、運動性タンパク質が微小管に沿ってゆっくり移動していく際 、いつ、どのようにして、頭部領域がアデノシン三リン酸からのエネルギーを使うか 、を解析した(p. 667)。彼らの発見したことは、運動体が移動する際、あるときは1つ の頭部、次には2つの頭部というふうに交互に、微小管に結合している、という考え方 を支持するものである。(KF)
チチカカ湖における移り変わり(Ups and Downs in Lake Titicaca)
南アメリカで唯一の大きく深い湖であるチチカカ湖は、気象の歴史についての重要な記 録庫である。なぜなら、隣接するアマゾン流域の標本である熱帯のシグナルを記録して いるからである。南米大陸内の他の地域からのデータは相対的に少ないこと、そして存 在する記録間に矛盾が多いことから、気象を復元するためにその重要性が増している 。Bakerたち(p.640)は、チチカカ湖からの堆積物の掘削コアを使い、熱帯南米地域に極 度な降雨あるいは乾燥の期間が存在した時に、熱帯アンデスにおける最後の氷河最盛期 が高緯度地域と同じ時期に記録されているかどうか、そして熱帯南米地域における雨期 や乾期の期間と熱帯大西洋における海面温度の変動との間に一貫した関係があるかどう かを評価した。こうした結果、アマゾンの降雨と北大西洋の海面温度とに強い関連性が あることを示した。(TO)
有害な空気に晒されて(Airing on the Side of Caution)
好気生物は、生命を維持するために酸素の代謝に依存しているが、また、それによる有 毒な副産物である活性酸素とも闘わなければならない。この活性酸素は、加齢や、酸化 によるストレスなどのプロセスにおいて機能しているとされている。抗酸化のための防 御システムは、そうした有害分子を除去するように働いている。この抗酸化のための防 御システムにごくふつうに存在している2つの酵素は、グルタチオン還元酵素とチオレ ドキシン還元酵素である。ゲノム分析によると、キイロショウジョウバエにはグルタチ オン還元酵素がないことが明らかになっている。Kanzokたちはこのたび、ショウジョウ バエ、またおそらくは他の昆虫も、その代わりにチオレドキシン系を使って、グルタチ オン・ジスルフィドを還元している、と報告している(p. 643)。(KF)
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