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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science January 19, 2001, Vol.291
楕円体のコロイド(Ellipsoidal Colloidals)
径の分布が約5%の、ナノスケールのコロイド粒子を作るロストワックス法について報告す る。それには、コロイド粒子の結晶を鋳型として用いる。粒子間の空間はポリマーで充填 され、もとのコロイドが取り除かれると、これを鋳型にして他の物質を詰めると、興味あ る磁気的性質や光学的性質を持った任意のコロイド粒子ができるはずである。しかし、特 定の径の範囲のコロイド粒子が容易にできるわけではない。Jiangたち(p. 453; および 、Malloukによる 展望記事参照)は、ポリマーの鋳型を用いて、金属、酸化物、ポリマ ーのコロイド粒子を作って見せた。また、鋳型のポリマーは一方向に変形することができ るため、軸比が最大4:1の楕円体粒子を作れることも示した。(Ej)
構造レベルにおける気相ダイナミクス(Gas-Phase Dynamics at the Structural Level)
フェムト秒のレーザーパルスによって開始されるような化学反応の超高速ダイナミクスは 、通常は振動およぴ質量分光学のような間接的な方法によって探査される。このような過 程の直接的な構造は、X線回折によって研究することができるが、それらは通常、結晶あ るいは表面に限定されている。Ihee たち (p.458) は、超高速電子線回折装置による小さ な分子の気相反応に対して得られた結果を報告している。彼らは、ハロエタンの段階的脱 離反応や、環状炭化水素の開環反応についてキャラクタリゼーションを行なっている。後 者のケースは、超高速電子線回折の有用なデータを得るために重い原子は必ずしも必要な いことを示している。(Wt)
量子ドット分子のもつれ(Entanglement in a Quantum-Dot Molecule)
固体方式の量子コンピューティングとして可能性のあるものは、これらを統合化してスケ ールアップできる可能性があるために、興味深い。Bayer たち(p.451) は、単一の量子ド ットの垂直方向に結合したペア、すなわち分子の結果について述べている。結合した電 子-正孔対(励起子)は、光学的励起と印加された電界下において、電子-正孔対に対してち ょうど4個の可能な配置でもって生成される。ドットが結合すると、励起スペクトルは単 一ドットに対するものと異なってくる。これらの可能な励起子状態間のもつれは、励起ス ペクトルにおけるエネルギー分裂として現れる。さらに、 ドット間隔が4nmまで減少されるにつれて、そのエネルギー分裂は40meVまで増加した。こ れは、室温演算の可能性を示している。(Wt)。
生物学的インシュレータ(Biological Insulators)
インシュレータあるいは染色質境界エレメントは、遺伝子の働きを調節する特殊な染色質 構造である。これらの構造は、遺伝子調節エレメントとその遺伝子のプロモータとの間に 位置するときには、転写エンハンサーあるいはサイレンサーの作用を妨げる。Cai と Shen (p. 493) 及び Muravyova たち(p. 495)による二つの研究は、インシュレータの作 用メカニズムを調べるためにショウジョウバエ遺伝学を採用している。インシュレータの コピー数と位置を変えて行った実験は、タンパク質に結合するインシュレータ複合体間の 相互作用を介して染色質ループ領域の形成を刺激することによって、インシュレータがエ ンハンサー-プロモータ相互作用に影響しそうであることを示している。Bell たち(p. 447)によるレビューは、広範囲のインシュレータの構造、機能、そして調節における最近 の研究をハイライトしている。(hk)
金星の小さな緑色の線(Little Green Lines on Venus)
天体の大気が太陽照射を受けて発光するが、その中には大気の組成とダイナミクスの理解 に用いることの出来る特徴的な発光線が見られる。特に一般的な原子酸素の遷移により酸 素原子の密度を予測することの出来る緑色の線形発光が見られる。VeneraとPioneer探査 機による金星の観測事実と、原子酸素遷移は二酸化炭素との衝突により消滅されるという モデルによる研究から、金星には緑色の線形発光は見つからないことが示唆される 。Slangerたちは(p. 463)、高分解能のKeck I望遠鏡のエシェル分光計を用いて金星大気 のスペクトルを観測し、強力な緑色の線形発光を検知した。このように、金星大気の酸素 の量とダイナミクスについては更に研究が必要である。(Na,Tk,An)
極対流圏のオゾン減少(Depleted Polar Tropospheric Ozone)
北極の長い夜があけて北極圏に太陽が昇ると、表面レベルのオゾンが著しく減少する。実 験室での研究では、この減少がBr
2
2や BrClのその場測定結果を報告している。このような化学種の濃度増加はオゾン減少と密接 に関連していた。Cl
2
が存在しないということは、BrClが北極地方における光 分解を起こす塩素の主要な源であることを示している。(KU)
追跡、ウマの血統(Tracing Horse Pedigrees)
考古学的事実から、ヒトの文明化についての主な結果として、ウマは約6000年前の中央ア ジアにおいて家畜化されたことが示唆される。家畜化は、1またはほんの一握りの野生集 団から得た複数の個体を用いて行われたのであろうか、あるいは複数の野生集団を使用し て、幅広い地域および時間経過をかけて、行われたのであろうか。Vilaたち(p. 474; Pennisiによるニュース記事を参照)は、ミトコンドリアおよびマイクロサテライトマ ーカーを使用して、現在のウマ血統と12,000ないし28,000年前の野生ウマ化石との遺伝子 変異を定量した。これらの結果から、現在の家畜化されたウマ 集団には、複数の系統を含む様々な母系アレイが存在することがわかり、そしておそらく は複数の野生集団を幅広く馴化する期間があったことがわかった。ヒトとウマの関係は 、家畜化という最初の形態学的証拠が生じるのに先だって、長い間存在していたのだろう 。(NF)
順位付け(Kept in Line)
協同的な動物社会の数種では、繁殖行為が成熟メスの中で不平等に分布し、そのため、数 頭の優位なメスのみが繁殖をする一方で残りのメスは“ヘルパー”である。様々なモデル は、この“繁殖的非対称”を説明するために進展してきた。しかし、このモデルを明確に 試験することは困難を極めることがわかった。南アフリカでのミーアキャット(Suricata suricatta)に関する7年間の研究で、Clutton-Brockたち(p.478;Koenigおよび Haydockの展望記事を参照)は、劣位のメスは、優位なメスのコントロールを凌駕した場 合にのみ繁殖を行いうることを見いだした。彼らは、優位のメスが、ヘルパーとしての劣 位のメスによるサービスを維持するために、劣位のメスに定期的に繁殖させる、という “最適非対称”なる別の仮説については、何ら証拠を見いだすことができなかった 。(NF)
雨の役目を明らかにする(Gauging Rain)
気候の可変性に対する生態系の応答のパターンと機構を理解することは、気候変化に対す る生態系の応答を予想するためのあらゆる試みにとって基礎となるものである。生態系に おける植物の産生に関する伝統的な見方では、年によっての産生の変化は降雨量の変化と 直接相関しているにちがいない、ということになっていた。合衆国内の、降雨量が年 250ミリメートルから1400ミリメートルにわたる14の異なった生態系を長期的に調査した 結果では、そのパターンはそう簡単なものではなくもっと複雑であるということが示され た。KnappとSmithは、産生の長年にわたっての変化は降雨量の変化に関連しているのでは ないこと、また降雨量の変化が最大だからといって産生の変化が最大というわけではない ことを明らかにしたのである(p. 481; また、Kaiserによるニュース記事参照のこと)。彼 らは、産生の変化は、降雨量と植物の成長潜在力との間の相互作用に依存している、とい う提案を行なっている。(KF)
古い治療薬に新しいアイデア(New Ideas on an Old Remedy)
複数の疾病に対して、静脈内γグロブリン(IVIG)投与をする有利な効果は、かなり以前か ら認識されていたが、機構レベルでは、この処置がよく理解されていなかった。IVIGの主 要な適用のひとつは、免疫性血小板減少症(ITP)の処置である。ITPは、抗体依存性経路を 通して、食細胞が循環から血小板を過剰に除去する疾病である。ITPのマウスモデルの研 究では、Samuelssonたち(p 484;LinとKanetによる展望記事参照)は、IVIGの影響が抑制性 Fc受容体によって仲介される証拠を確証的に示している。治療状況が証明されているケ ースについて、抑制性Fc受容体経路を明確にすることは、炎症性障害の処置について、重 要な臨床的前例を提供するであろう。(An)
ある時計の針を進める(Setting Some Clocks Ahead)
動物の末梢性器官には、多数の概日性時計が存在するが、この時計が視床下部における光 同調性マスター時計によって駆動されると考えられている。しかしStokkanたち(p 490)は 、このマスターとスレーブとの関係は明らかではないことを示している。著者は、生体内 で時計をモニターできるように、ルシフェラーゼという発光性分子を発現するラットを作 成した。ラットの摂食スケジュールを変化させると、脳の時計には影響はなかったが、肝 臓の時計は、新しい摂食時間に急速に同調させた。(An)
正確に開始する(Starting Off Correctly)
正確なタンパク質合成のためには、イニシエータ転移RNA(tRNA)が、30Sリボソーム・サブ ユニットのP部位にあるメッセンジャーRNAの開始コドンと塩基対を形成する必要がある 。原核生物では、これは、3つの開始因子(IF1とIF2、IF3)が結合している開始複合体にお いて行われている。Carterたちは、IF1と30Sサブユニットとの複合体の結晶構造を決定し た(p. 498)。A部位はIF1によって立体的にブロックされているように見えるが、この IF1は、IF2と一緒になって、P部位のイニシエータtRNAの正確な位置決めに関与している 可能性がある。IF1結合によって生じる局所的な構造変化が、無傷のリボソームにある 50Sサブユニットと接触する30Sサブユニット領域における立体配置の変化を誘発するので ある。(KF)
鉄の中の音速(Sound Velocities in Iron)
球の核は、核を横切る地震波伝播速度を説明するためには、殆どが鉄で、その他少量のイ オウや酸素のような軽量の成分で構成されている、と考えられている。実験室では地球の 核の状態を再現できるような圧力も温度も作ることが出来ないので、鉄の組成や構造につ いては状態方程式による外捜や間接的な音速予測により推定されている。Fiquetたちは (p. 468)、フォノン分散法でダイアモンドアンビル内の六方最密充填構造の鉄(hexagonal close-packed iron: hcp鉄)の90から110ギガパスカル下の縦波の速度を直接計測した。彼 らの結果は、Birchの法則を用いたhcp鉄データを直線外挿することにより、内核に鉄より も軽い成分が含まれる地震波データと一致する内核の縦波の速度を得られることを示唆し ている。(Na,Tk,YO)
Kaapvaal地殻の結びつき(Coupling Kaapvaal Crust)
楯状地(craton)とは、大陸形成の最初の断片を示している可能性のある古い大陸地殻 (crust)の厚い部分である。そのいくつかは現在まで残っているが、それは、マントルの 厚い部分と結びついて、マントル対流によって引き起こされる広範な加熱と変化の影響を 受けない深いところに根を有するテクトスフィアを作ったせいであろう。Moserたちは 、南アフリカのVredefort衝撃イベントによって隆起して表に出てきたKaapvaal大陸塊の 下方地殻の地質を調査した(p. 465)。Kaapvaalにおける最後の大きなマグマによるイベン トに関係した岩石のウラン-鉛年代測定法によると、地殻はおよそ31.1億年前までに形成 され、変化し終えたことが示された。その後間もなく(およそ30.9億年前)、地殻がマント ルと結合してテクトスフィアを作るのである。(KF,Yo)
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