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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science April 23, 1999, Vol.284
大量のマグマの流出(Megaflood Basalt)
氾濫玄武岩(flood basalt)とは、白亜紀末期の大量絶滅に近い頃に 形成されたデカン氾濫玄武岩や、ペルム紀末期の大量絶滅の間に形 成されたシベリアの氾濫玄武岩など、比較的短期間(数百万年)のう ちに生じたマグマの大量な(百万立方キロメートルにもなる)噴出で ある。Marzoliたちはこのたび、最大の氾濫玄武岩の地域は、2億 年前、三畳紀とジュラ紀の境界における大量絶滅の期間に形成され た、と示唆している(p. 616; また、Olsenによる展望記事参照のこ と)。彼らは、北部中央ブラジルの広大な岩脈やその他の玄武岩に ついて2億年前までの年代が遡れることを明らかにし、これらと、 北米や南米、アフリカ、ヨーロッパの海岸沿いの領域にひろがっ た似たような年代の他の玄武岩との関連を明らかにした。これら を合わせると、玄武岩質のマグマの体積は、300万立方キロメー トルもあった可能性がある。(KF)
ぎりぎりの電子溶媒和作用(Barely Solvating an Electron)
水はイオンに溶媒和するだけでなく、水溶性のヨウ素イオンが紫 外線照射の過程でその電子を溶媒に放出するとき生じるように単 一の電子にも溶媒和する。Lehrたち(p.635)はヘムト秒分解能の 光電子分光装置を用いて、溶媒和電子を安定化させるに必要な一 個の水クラスターの最小数を決定した。ヨウ素イオンの回りに4 個の水分子からなるクラスターは光励起の後単純な減衰を示すが、 5個ないし6個の水分子を持つクラスターでは、その構造を再配列 し通常の水と同じように自由電子を安定化させているらしい。 (KU,Nk)
ホモ属の出現(Emergence of Homo)
200万年から300万年前の間に人類の進化について、道具の使用、 肉食などを含む食餌の拡大、住居や姿勢の変化、脳の容量の増加、 そして最後にホモ属の出現など、幾つもの基本的な変化の跡がし るされた。しかしながら、この決定的な時期の化石は非常に少な く、この歴史と系統発生学を信頼度高く再構築することは難しかっ た。Asfawたちは(p. 629)、残された頭蓋骨の一部分から、初期 のヒト属の祖先でアファール猿人の子孫と思われる、エチオピア で見つかったアウストラピテクス属の新種について記述している。 その他、下顎骨と大腿、および頭部後方の骨などが見つかってい る(おそらく何人分かの骨と思われる)。de Heinzelinたちは (p. 625、表紙参照)、これらの化石が250万年前のものであるこ とを示している。彼らは、傷があり、つぶれた骨が残されている ことから、初期の原人が肉と髄を原始的な道具で獲得していたこ とを示唆すると記述している(Culottaのニュース解説も参照)。 (Na)
糊を付けすぎないで(Use Glue Sparingly)
シリカゾルは多孔性の材料(エーロゲル)を作るために用いること が出来る。新しい多孔性材料を作る簡単な方法は、シリカを他の 小さな粒子を接着する糊として用いることである。しかしながら、 模型飛行機を作るときなどに接着剤の量が多過ぎるときのように、 多くの場合シリカは他の粒子を完全に覆ってしまう。Morrisたち は(p.622)、超臨界状態でシリカゾルと、金属、酸化物、炭素又は 高分子粒子からなる複合性のゲルを乾燥させると、両方の成分の 特性を保持する微小複合体を生成することを示している。例えば、 カーボンブラックを用いると電気的に導電性な(そして光を吸収す る)エーロゲルネットワークを生成する。(Na,Nk)
ホストにぶら下がって(Hanging On to the Host)
潜在性核抗原(LANA)は、しばしばカポジ肉腫随伴ヘルペスウイル ス(KSHV)-感染した腫瘍中に発現されている、KSHVによってコー ドされるタンパク質である。Ballestasたち(p. 641)は、LANAは、 エピソームを宿主染色体に束縛することによって、ウイルスDNAを エピソーム(自律的に複製する遺伝因子)として感染細胞中に持続 させることを仲介している証拠を見つけた。このプロセスをブロッ クすることで、このような腫瘍の新しい予防や治療方法が生まれる かも知れない。(Ej,hE)
ヘアピンのカーブでRNA を失う(Losing RNA in a Hairpin Turn)
転写の終結は遺伝子発現を制御するために利用されている1つのプ ロセスであるが、YarnellとRoberts (p. 611; および Landickによ る展望記事)は内因性の大腸菌ターミネータについて試験管内でこの プロセスをシミュレートした。Uをコードするエレメントとヘアピン 構造の2つの終結エレメントは、それぞれがポリメラーゼの停止と、 転写複合体からのRNAの抽出を促進する。この意味において、抗ター ミネータはヘアピン形成を阻止することで終結とは逆の作用をし、そ の結果転写リードスルー(読み過ごし)が起きてしまう。内因性終結と 抗終結のモデルが提案されているが、そこでは、RNA合成がなされな い状況下でポリメラーゼ分子がトランスロケーション(転位)して前 進するときに、ターミネータ・ヘアピンがRNAポリメラーゼから新生 RNAを抽出するという。(Ej,hE)
T細胞キナーゼ(T Cell Kinases)
リンパ球抗原受容体からのシグナルを伝達するためには多数のキナー ゼが必要となる。Tecキナーゼファミリーの一員であるBTKはBリン パ球抗原受容体のシグナル伝達に不可欠である。Tリンパ球は3つの Tecキナーゼを含んでいるが、これがT細胞の発生や機能における何 かの役割を演じているのかは不明であった。Schaefferたち(p.638) は、Tecキナーゼを1つ取り除いてもT細胞システムを不能にするこ とはないが、遺伝的にTecファミリーの一員であるRlk と Itkを欠乏 するマウスにおいては、ホスホリパーゼCを通じての情報伝達を阻害 する結果、サイトカイン産生、増殖がなくなるとともに、トキソプラ ズマへの免疫応答に欠陥が見られると報告している。このように、 Tecキナーゼは、T細胞が効果的に機能したり免疫の働きをするため には決定的な役割を果たしている。(Ej,hE)
NOでないことはYesと言うことだ(No NO Means Yes)
システムとしては、不注意な活性化を防止するためにどのくらいの数 の「安全装置」を持っている必要があるのだろうか? 細胞死の経路 は、細胞表面の受容体Fasが、そのリガンドに結合することによって 始まるが、これは複数レベルの内蔵制御装置を持っている。このエ フェクター経路の中心部分はcaspaseプロテアーゼ(タンパク質分解 酵素)カスケードであり、ここでは中間プロテアーゼが次のプロテア ーゼを切断することによって活性化させる。Mannick たち(p. 651)は、 caspase-3の酵素前駆体(zymogen)型は、その触媒作用部位のシステ インにおいてニトロシル基が付加され、ニトロシル基の脱離が caspaseの活性化と相関していることを見つけた。(Ej,hE,Nk)
過ぎたるは・・・(Too Much of a Good Thing)
植物は光で育つが、あまり多量の光は植物に生化学的には日焼けと同 じ作用をもたらす。フォトンを生化学的な酸化還元力に変換する光化 学系分子が充分に無い時、過剰の光エネルギーは反応性の酸素中間体 をつくり近傍の分子にダメージを与える。Karpinskiたち (p.654;FoyerとNoctorによる展望参照)は、植物の中を系統的に動き 回り、そして日陰のもとにある葉に対してすら、もっとフォトンが増 加した場合に備えるよう警告するある成分の存在を示している。 (KU,Nk)
ユビキチン化による腫瘍の抑圧 (Tumor Suppression by Ubiquitination? )
von Hippel-Lindau (VHL)腫瘍は多様な腫瘍の素地となる家族性ガン 症候群であるが、VHL腫瘍サプレッサー遺伝子は、ほとんどの腎臓ガ ンやVHL病において変異を受けている。VHLタンパク質は、転写調節、 ユビキチン仲介のタンパク質分解、及びサイトカイン情報伝達に関与 しているタンパク質と複合体を形成する複合体中に存在している。 Kamuraたち(p. 657) および Skowyraたち(p. 662)は、Rbx1と呼ば れるVHL複合体中の新規なタンパク質を同定し、この発芽酵母におけ る相同体がG1サイクリンCln1を含む多数の基質のユビキチン化に必 要なユビキチンリガーゼの成分であることを示した。Rbx1は、リガ ーゼへの基質の補充と、その内在性ユビキチン化活性の刺激の両方を 行っているように見える。このVHL複合体は多数のタンパク質の分解 を制御している可能性があり、このことからVHL変異がもたらす驚く べき多面的作用が説明できるであろう(Tyers と Willemsによる展 望記事参照)。(Ej,hE)
組み込まれるキナーゼ(Integral Kinase)
レトロウイルスによる感染を受けている間、ウイルスゲノムの相補 DNAのコピーは、宿主細胞のDNA中に組み込まれる。このプロセス には、ウイルスにコードされるインテグラーゼタンパク質のDNA ニッキング(切断)とジョイニング(接合)の活性を必要とする。 Danielたち(p. 644)は、レトロウイルスの組み込みには細胞性DNA 修復タンパク質であるDNA-依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)も 必要であることを示した。この発見は、組み込みの最初の出来事は 宿主細胞のDNAによって損傷として検知され、プロセスの完了には DNA-PK-仲介による修復経路が含まれていることを示唆している。 (Ej,hE)
亜鉛にでニューロンの死を防ぐ (Preventing Zinc-Related Neuronal Death)
組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)は、最近、心臓発作に対す る新しい治療法として導入されたものである。血栓を溶解するとい う確立した作用に加えて、それにはさらに神経保護の効果があるか も知れない、ということをKimたちは示している(p.647)。tPAは 亜鉛によって引き起こされるニューロンの死を、生体内においても 試験管内においても減少させる。この作用の機構は、tPAが亜鉛と 結合するためではなく、むしろ抗酸化の効果である。投与の経路に 依存して、この作用は、プラスミンによって仲介されるtPAのもう 一つの興奮毒性の副作用のカウンターバランスをとることになる。 (KF)
再検討された同性愛遺伝子説 (Genetic Component of Homosexuality Revisited)
数年前、サイエンス誌は、複数の家族についての遺伝子の分析結果 を公刊したが、それはXq28の領域が同性愛と関連していることを 示唆するものであった。52家族の調査で、Riceたちは、4つのマー カーについての自分たちのデータは、そうした遺伝的な結び付きを 支持しない、と報告している(p. 665)。この複合的な行動の根底に ある基盤を理解するには、より大量のデータ・セットの蓄積が必要 であろう(Wickelgrenによるニュース記事参照)。(KF,Nk)
生体内の補調節因子(Coregulators in Vivo)
生物が正常に発生するためには、非常に多くの遺伝子の発現が、時 間的にかつ空間的に調和よく組み合わさることが要求される。活性 化因子と抑制因子が、調節された遺伝子の発現を、各々増加させた り減少させたりする。補調節因子(coregulator)と呼ばれる付加的 な因子は、活性化因子と抑制因子と、複合体を形成してその機能に 影響を及ぼすことが、現在知られている。最近まで、補調節因子の 研究は、試験管内(invitro)での生化学手法や、あるいは細胞培養 技術によって行なわれてきた。Mannervikたち(p. 606)は、試験 管内での活性化因子や抑制因子を使って行なわれた、最近の機能 的研究をレビューした。その結果から、生物体の中で補調節因子 によって使われている数多くて多様な調節のメカニズムがより良 く理解できるようになった。(TO)
それほど早くない(Not so fast)
ミズーリ州ニューマドリードは、1811年から1812年にかけて数 回の大きな地震に襲われた。それらはプレート境界から遠く離れ て発生したため、これまで謎であった。古地震データや測地デー タはこうした地震は、約数千年ごとに再発することを示していた。 Newmanたち(P.619)のより長期にわたる測地研究によると、 地震帯にかけて地殻の運動はあるとしてもほとんど認められない 程度で、したがって再発期間は非常に長いであろうということを 示した。(TO,Nk)
SIV感染におけるT細胞の代謝回転 (T Cell Turnover in SIV Infection)
H. Mohriたちは、正常なアカゲザルのマカクおよびサル免疫不全 ウイルス(SIV)に感染したマカクにおける、Tリンパ細胞CD4およ びCD8の代謝回転を調査した(1998年2月20日の報告、p. 1223)。 彼らの分析は、「それぞれのリンパ細胞集団における死と増殖速 度には大きな差がある」ことを示し、「動的な平衡を維持するた めには新しい細胞の...大きな源」が必要であることを示しており、 そのことから彼らは、「なぜ、...CD4 T細胞の枯渇は観察されるの に、CD8 T細胞の枯渇は観察されないのか」という疑問を提示して いた。Z. Grossmanたちは、「免疫によって活性化された細胞の死 は、その初期の加速された増殖を制御するのに役立ち、集団全体の 平衡条件へは影響するとは限らないし」、また「枯渇の問題にはほ とんど関係しない」と述べて、Mohriたちの解釈に異議を唱えてい る。彼らは、「急激な増殖の際の、感染した個体におけるリンパ細 胞の...殺害」を引き合いに出すことなしにデータを説明できる「正 常な、進行中の免疫活性化」のモデルを提示している。 I. M. RouzineとJ. M.Coffは、報告の中で、これとは別の説明を提 案しているが、これは、T細胞補充のモデルに従った、(T細胞の代 謝回転を標識するのに用いられた)標識の希釈に基づくものである。 これに応えて、A. S. Perelsonたちは、「標識付けの終了後19週 経過して」集められた新しいデータを提供している。彼らは、「我 々は、SIV感染における免疫刺激が高められた可能性がある、また 我々が測定した多様なリンパ様の集団全ての増殖の加速の原因であ るかもしれない、というどちらのコメントにも同意する。しかし、 T細胞の30から40%にも及ぶものが3週間後にも標識付けられた状 態にあり、反応を刺激するいかなる抗原も意図的に与えられていな い以上、我々は、一部は抗原によって活性化されていたかもしれな いとしても、我々がモニターしていた細胞の大部分が、一般的なT 細胞集団を代表するものであると信じる」と主張している。これら コメントの全文は、
www.sciencemag.org/cgi/content/full/284/5414/555a
で 読むことができる。(KF)
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