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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science October 3, 1997, Vol.278
冬のオゾンホール(Winter ozone hole)
南極のオゾンホール生成プロセスについて活発に研究が行われているが、 南極の冬には、殆ど太陽光が届かず、測定の技術的な困難さから、冬季の 測定は殆ど南緯75度以北で行われている。Roscoeたちは(p.93)南緯65度の ファラデーで1990年、1991年と1994年の冬の期間中測定した総オゾン値を 示し、オゾンの枯渇は6月に始まることを示した。モデルによる計算では、 これは孤立した現象ではなく、オゾン破壊は太陽の当たる渦の縁で真冬に 開始されることが示された。(Na)
欠陥からデバイスへ(From defects to devices)
単層の壁面からなるカーボンナノチューブ(SWNTs) の欠陥は、その局所的な 電気的特性を突然に変化させることできる。Collinsたち(p.100; Saito による 展望記事(p.77)も参照のこと) は、走査型トンネル顕微鏡の先端を用いてチューブ の束、すなわち「ロープ」(2μmまでの距離のものに対して)から SWNTs を 抜き取った。このトンネル顕微鏡の先端はチューブの端に強く付着している。 チューブが抜き取られるにつれ、伝導度はわずかな動き(数ナノメートル)で、 グラファイトに典型的な応答から非常に比線形で整流性のある応答へと突然に 変化することがあった。このような突然の「オン−オフ」特性は、潜在的には デバイスに用いることができるであろう。(Wt)
過剰配達(Exta deliveries)
スウェーデンから見つかった下部オルトビス紀(約、4億8000万年 前から始まる)の石灰岩中には、それ以前や、それ以後に比べて多くの微 小隕石が含まれている。Schmitzたち(p.88)は、これらの岩石 から更に多くの隕石試料を集め、オスミウムの同位体やイリジウムの含有 量を利用して、この時期、宇宙物質の地球への流入が、約1桁増加したこ とを示した。彼らは、この宇宙塵の増加は、この時期に大規模な隕石の衝 突か、あるいは、隕石母天体の破壊と関係があるのではないか、と推測し ている。(Ej,Nk,hE)
蛋白質のデザイナー(Designer protein)
物理化学的なポテンシャル関数と立体化学的な拘束とに基づく計算アルゴ リズムは、 可能性のあるアミノ酸配列のデザインを決めるために、長いライブラリ をスクリーニング するのに用いられてきた。Dahiyat and Mayo(p.82; DeGrado による 展望記事 (p.80)を参照のこと)は、1.9 × 10^27個の組合わせを スクリーニングして、ββαの ジンクフィンガー領域を採る28残基蛋白質の全配列(FSD-1)を 決定した。 その溶液構造は蛋白質は目標と する折り畳み構造を採ることを示している。(Wt)
活動しているがゆえの無応答(Actively unresponsive)
悪い状況においては、それが特異的に働くはずの抗原によって、T細胞が働きを 開始するのではなく、かえって働きを停止することがある。Boussiotisたちは、 そうして生じる「不応答(anergy)」と呼ばれる無応答性の状態が、活性化した 小さなGタンパク質Rap1によって維持されることを見い出した(p.124)。つまり、 抗原に対して応答できないというのは、サイトカインであるインターロイキン-2の産生に 到る信号伝達経路の遮断だけのためではなく、それに代わる別の経路が活性化する せいでもあるのだ。(KF)
重い因子(Weighty factor)
体重は、神経ペプチドと、これの受容体との相互作用によって制御されて いるのかも知れない。Agoutiペプチドは、通常は色素沈着を制御している 皮膚中で発現されるが、マウス中で過剰発現された時には肥満を引き起こす ことが出来る。 Agouti関連ペプチド(Agouti-related peptide=AGRP)はAgoutiペプチドと 類似の配列を持つが、Ollmannたち(p.135)が示したように、発現と情報伝達 特性が異なっている。AGRPは、通常、副腎腺や視床下部中に発現されるが、 Agoutiに対する受容体の特異的サブセットと結合する。マウス中のAGRPの 過剰発現は、体重に影響を及ぼすが色素沈着には影響を及ぼさない。(Ej,hE,Kj)
二つのこぶをもつCAML(CAML with two humps)
CAMLタンパク質(カルシウム信号変調サイクロフィリンリガンド)は、初めは サイクロフィリンBと相互作用するものとして同定され、そのため免疫抑制薬 シクロスポリンAの細胞での作用や、リンパ球における転写制御因子NF-AT の制御に関与するものと考えられていた。Von B=FClowとBramは、このたび CAMLと相互作用する、もう一つのタンパク質を同定した(p. 138)。これは、 膜貫通性活性化因子かつCAML相互作用子(transmembrane activator and CAML-interactor)、つまりTACIと呼ばれる。 TACIは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリの一メンバで、TACIが抗体と クロスリンクすることによって、NF-ATやその他の転写因子の活性化が生じるのである。 彼らの結果は、普通ではない信号伝達機構の存在を示唆している。細胞内の小胞で 見い出されるCAMLと細胞表面受容体TACIとの相互作用が、NF-ATがTACIに 反応して活性化するために必要だと考えられるのである。(KF)
熱ショックタンパク質対癌(Heat shock proteins versus cancer)
現在の癌への対処において最も解決が難しい問題の一つは、転移である。 Tamuraたちは、転移性癌のマウスモデルにおいて、多様な組織学上の起源 をもつ、 非免疫原性の腫瘍を調べた(p. 117)。彼らは、原発腫瘍とその転移 性の 腫瘍の双方から、それ自身の細胞の環境に由来するランダムなペプチドに 結合 した熱ショックタンパク質GP96を分離し、それを、すでにはっきり した腫瘍を もっているマウスに注入した。もとの腫瘍も転移したものもどちらも退化 し、 寿命は伸びることになった。(KF)
チャネルのチューニング(Tuning channels)
嗅覚と網膜の受容体細胞における環状ヌクレオチドによってゲートされた イオンチャネルは、感覚性刺激に対する応答に関与している。VarnumとZagottaは、 リガンドではなくカルシウムセンサーカルモジュリンに結合しているそのチャネルの アミノ末端領域が、細胞内のカルシウムレベルに応答してリガンド結合がおきた後の チャネル-ゲート開閉の「調節(チューニング)」に直接の役割を果たしていること を明らかにした(p. 110)。(KF)
オリゴマーの信号(Oligomeric signal)
酵母の接合フェロモンへの応答は、脊椎動物の情報伝達経路と類似した複雑な 情報伝達経路を通じて起きる。フェロモンが、自分の受容体に結合することに よって、ヘテロ三量体グアニン・ヌクレオチド-結合タンパク質(Gタンパク質) を活性化させる。Gタンパク質のβサブユニットは、明らかにSte5タンパク質と 「対話」する。このSte5は、情報を伝達する一連のタンパク質キナーゼの骨格と して機能する。Inouyeたち(p.103)は、、この情報伝達のためには、Ste5の オリゴマー形成が必要十分であることを示した。彼らは、Gタンパク質との相互 作用や、二量体化のために不可欠な、Ste5中のタンパク質領域を限定した。 類似の領域は、ヒトの乳ガン感受性決定タンパク質であるBRCA1のような タンパク質中にも生じる。(Ej,hE,Kj)
彗星起源(Cometary origins)
彗星の化学分析、わけても同位体分析は、その起源や組成や進化を推測するのに 鍵となる。Jewittたち(p.90)は、ヘール・ボップ彗星中の炭素、窒素、硫黄の 同位体測定について報告している。この同位体比は太陽系の比と一致しており、 このことから、彗星の揮発成分は、太陽系に起源をもつことが推測される。 (Ej,Nk,hE)
少ないエラーで読み出す(Reading with fewer errors)
ホログラフィ記録は膨大なデータを記憶する可能性を持っているが、簡単に 活用可能なデジタル情報を正確に復元するためには非常に大きな課題がある。 Shenたち(p.96)は、データを現す信号の書き込みパルスと読み出しパルスが時間的に 離れているタイムドメインホログラフィを用いた。彼らは、エラーレイトを 十分に下げることで、エラー訂正コードが不要となる可能性のあるデータ復元 アルゴリズムも実演した。このシステムには、まだ希土類をドープした結晶を 極低温下で使用する必要があるが、開発された光記憶技術は、改良されたデータ 記憶媒体に匹敵するものであろう。(Na)
自己回避に向けて(Toward self-avoidance)
抗原を適正なT細胞に提示すると免疫応答が惹起されるが、不適正な(自己) ペプチドがクラスII分子に結合され、自己免疫応答が起きる場合がある。 どのようにしてペプチドの装填が制御されているのであろうか?。Denzinたち (p.106)によると、DMと呼ばれるクラスII類似の分子に調整されて、ペプチドを クラスII分子上に装填するシステム自体が、DOと呼ばれるもう一つ別のクラス II様分子によって制御されている。DOはDMと結合し、クラスIIへのペプチド装填 の際にDMの効率を悪くさせる。通常ではクラスIIやDMを発現しない細胞が、 感染中は、これらの遺伝子のスイッチをオンにすることによってインターフェロンγ に 応答し、プロフェッショナルの抗原提示細胞(APC)と同様なものに変身する。 これは、マクロファージが抗原を提示し、T細胞のスイッチをオンにするのと似てい る。 しかし、プロフェッショナルのAPCは、常にDOを発現するが、これは自己ペプチドの 発現 (および、不利益な自己免疫の活性化)に対する緩衝として、概念的には正常に機能 して いる。感染中は、活性化されたプロフェッショナルのAPCはDMのDOに対する比率を増 加 させて、抗原提示のブロック効果を克服している。(Ej,hE,Kj)
カルシウム欠乏による死(Death without calcium)
脳発生の間やいくつかの疾病におけるニューロン死が、細胞外のカリウム濃度の 上昇によって防ぐことができる。 この効果は、アポトーシスの原因としてよく知られているカリウムのカルシウムへの 影響によって、間接的に仲介されていると思われている。 今回Yuたち(p.114)は、ニューロンのアポトーシスのある型においては、遅延整流カリウム 電流の増強とその結果である細胞内カリウムの減少が細胞死に必要と十分であるかも しれないことを示している。 (An)
制御された腫瘍形成(Controlled tumorigenesis)
ヒトの癌における腫瘍抑制遺伝子の役割をより良く知るために、科学者たちは、 対立遺伝子の片方、あるいは両方が不活性化されたマウスモデルをしばしば創造する 。 しかし、多くの場合、これら変異体マウスは胚形成時に及ぼす欠失遺伝子の影響で、 出生前に死亡する。Shibataたち(p.120)は、腫瘍抑制遺伝子の不活性化が、 目的の組織で働くように仕向けた。大腸癌の発生に関わっているAPC遺伝子を 変形して、Creリコンビナーゼの認識部位をイントロン内部に持つようにし、そして 、 マウス生殖系細胞に変異対立遺伝子を導入した。この変形したAPC対立遺伝子に ホモ接合性のマウスは正常に発生したが、Creリコンビナーゼをコードする アデノウイルスで局所感染させると急速に直腸腫瘍を発生させた。(Ej,hE,Kj)
家の掃除(Cleaning house)
生物体の生存のために、DNA配列がタンパク質に転換される過程の忠実度が 決定的である。Taddeiたち(p.128)は、大腸菌におけるmutT遺伝子の生成物が8- オキソ-デオキシグアノシン三リン酸という可能性のある変異誘発物質を、RNAを 生成するためのリボヌクレオチド前駆物質プールから除去することによって 衛生的な過程に寄与することを発見した。(Bridgesによる展望参考) (An)
射程範囲(Firing range)
皮質における主要な抑制性神経伝達物質はγアミノ酪酸(GABA)で、2つの主要な 受容体サブタイプAとサブタイプBを伴う。Kimたち(p.130)は、ニューロンの 発火パターン依存性抑圧性応答を調べるため、視床神経の対(サブタイプAと サブタイプBのペア)となった記録を利用した。ゆっくりした、しかし、安定した 発火周期では小振幅のGABAA応答が見られた;高周期のバースト(突発信号)には 大振幅GABAA応答が伴う;そして、長期間の高周期発火ではGABAB抑制電位を 回復した。更に、1つのニューロンは3つの動作を示し、3つの発火状態は、睡眠 -覚醒状態における活動のネットワーク型と対応している。(Ej,hE,Kj)
核のタンパク質の搬出の仲介(Mediating export of nuclear proteins)
karyopherinβファミリを含むいくつかのタンパク質が、タンパク質を核へ移入する 経路に関わっている。搬出を仲介するタンパク質がよりわかりにくかった。 Ossareh-Nazariたち(p.141)は、karyopherinβファミリの配列と類似しているタンパク質 である染色体維持領域1(CRM1)が、信号によって仲介されているタンパク質核外移行に 関与していることを示している。 CRM1は、ロイシンに富む核外移行信号(NES)との複合体を形成するが、この相互作用が leptomycin Bという薬によって遮断されることができる。 半透化した細胞アッセイによって、leptomycin B がNESを含むタンパク質の核外移行を 遮断することができることが示されている。 (An)
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