AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 25, 1995


無意味から意味のある情報へ (Making sense of our senses)

人間は無意味なたくさんの刺激情報を集めて、どうやって感情的な状態にまで集積し ているのだろうか?小脳扁桃または海馬あるいは両方に病変を持つ3人の患者を研究し た結 果、Becharaたち(p1115)が得た結論は、小脳扁桃は外部の出来事に対して感情的に反 応するために不可欠であり、海馬はこれら出来事の事実関係を確立する上で不可欠で ある、と言うことである。患者は、あらかじめ、いくつかのカラースライドの中の特 定の1つが提示された時不愉快な大きな音が出るように作られた条件に慣らされてい る。小脳扁桃に損傷を受けた患者は、大きな音の知覚を妨げられることなく音への自 律的な反応を喪失する。一方、海馬損傷の場合は条件反射は残るが事実関係がわから なくなる。


アパーチャーのない光学顕微鏡像 (Apertureless imaging)

近接場走査光学顕微鏡は微少なアパーチャーで制限された光源によって50ナノメー トルの解像度を得ることができる。Zenhausernたち(p.1083)は、微少な反射振動針尖 端で散乱された光の干渉を利用した検出で1ナノメートルの解像度を得たと報告して いる。この尖端部の大きさが光源の大きさを決め、コントラストを決める要因は通常 の近接場走査光学顕微鏡と異なり針尖端とサンプル間の双極子相互作用に依存す る。理論的には原子の大きさまでの解像度が可能である。


炭酸ガスはどこへ行ってしまうのか? (Where CO2 goes)

炭酸ガスの発生源と吸収先がよくわからないため、地球の温室効果の解析はややこし い。Ciaisたち(p.1098)は、世界中の今までにない広い地域のデータを提出し、19 92年から1993年の間、北半球の地表に大きな吸収源があることを示した。この 吸収源は天然起源のものかも知れないし、あるいは人的な起源のものかも知れない。 地上での炭素の蓄積は海に比べ環境変化に敏感であるから、炭酸ガスが今まで考えら れていたより大きな割合で地上に蓄積されていると言うことは、地中の蓄積量は将来 の大気中の炭酸ガス増加に、より重大な影響がありそうだ。


点灯が容易に (Easier to turn on)

ポリマーの発光ダイオード(LED)は、無機のLEDに比べていくつかの利点があるが、寿 命が短いと言う欠点をもっていた。Peiたち(p.1086; およびServiceによるニュース 記事p.1042)は、電気化学的手法で、接合ポリマーの薄膜の反対側にp型とn型層を ドープさせたLEDを作った。発光物質のバンドギャップに近い電圧を印加することで 、いろいろな色による発光を可能にした。LEDの寿命は、今までより長くなり、また 膜厚への依存性も減少した。


分岐ルート (Branch route)

デンドリマーと呼ばれる大規模樹状ポリマーは色々な応用が考えられているが、合成す るの に何回もの工程を必要とするので高くつく。Frechetたち(p.1080; およびDeSimoneに よる解説p.1060)によれば、ビニールモノマーを活性化して多数の成長する鎖を作り 、不規則な樹状ポリマーを一工程で作ることに成功した。


熱湯の熱源 (Hot water heaters)

熱水性海水の海洋地殻との相互作用は、東太平洋高地(East Pacific Rise)の超高速 拡大に大きな影響をうける。ここの海嶺から、ヘリウム3を豊富に含む水のプリュー ムが出てくるが、熱水がどのように分布するかはよく解ってない。Urabeたち(p.1092 )による大規模な調査によって、調査した海嶺、特に軸状のマグマ溜りの上、の60 %から熱水プリュームが確認された。


つのる痛み (Growing pains)

エネルギーを節約しながら、また、環境を保全しながら、開発途上国はどうやって生 活水準を向上さることが出来るのか?Goldemberg(p.1058)は、政策フォーラムで、エ ネルギーの効率化の進展を考慮しても途上国のエネルギー需要増加には追い付かない 、と言っている。経済成長には新エネルギー源の利用と環境の損傷のバランスを取る 必要があると。


動物の個体数の不思議 (Population puzzle)

動物の個体数は循環的に変化したり、或は、急に減少したりするようだ;この変動を 理解するための実験的、理論的な方法が出された。Krebsたち(p.1112;およびStensethに よる 解説p.1061)は、カンジキウサギ(snowshoe hare)の食物の量や天敵の数をコントロー ルし、10年周期の個体数の変化を、食物、個体数、天敵数の3つの食物連鎖レベルで の相互作用か ら結論づけた。過剰な漁獲による魚の個体数の枯渇は再生産のための個体数が減少す るから(これをdepensationと呼んでいるが)、個体数は回復しないであろう。Myers たち(p.1106; およびBarinagaによるニュース解説p.1043)は、128種の魚の生存 量のデータを解析し、太平洋の鮭を含む3種の魚は、このdepensation を経験したこ とがあることを発見した。このモデルによれば、多くの心配されている魚の生存量は 、もし、過剰漁獲を止めれば、回復することを示している。


チトクロームC酸化酵素の中で (Inside cytochrome c oxidase)

チトクロームC酸化酵素(オキシダーゼ)によって真核生物のミトコンドリア内部細 胞膜の中で、酸素分子は水に変えられる。このプロセスはアデノシン3燐酸の合成と 関連する。Tsukiharaたち(p.1069; およびGennis and Ferguson-Millerによる解説 p.1063)は、この細胞膜タンパク質を結晶化し金属を含んでいるサイトの構造決定を した。


エネルギー危機 (Energy crisis)

CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBP-α)は、エネルギー代謝に 関係する遺伝子を制御すると言われている肝臓内部に発現されるbZIP転写因子である 。Wangたちは(p.1108)c/ebp-α遺伝子が除かれたマウスを作った。この突然変 異体マウスは同腹のマウスと誕生時には見分けがつかないように見えるが、肝臓グリコ ーゲンを 蓄積することが出来ず、低血糖症によって、生後8時間で死亡する。このマウスは多 くの機能障害によって、エネルギーのホメオスタシス(恒常性)を確立し、保持する ことが出来ない。


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