AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


[インデックス] [前の号] [次の号]

・・・
Science August 11, 1995


洪新世初期にスペインへの定住 (Setting Spain in the early Pleistocene)

した人類はいつごろヨーロッパに移住したのだろうか?今までの化石からは50 万年前と言うことになっているが、この値は周辺地域の値にくらべてずっ と若い。Carbonellたち(p.826)は、北部中央スペインのGran Dolina 洞穴 の深い地層から古磁気学を利用して(Perez-Gonzales;p.830)、 78万年以上 古い古人類とこれに関連する石器の報告をしている。この年代 は最も若い地磁気反転の時期でもある。(関連記事Gutin, p.754)


突如環状に (Suddenly cyclic)

エネジイン(enediyne) 分子はカーボン同志の2重結合が2つの3重結合を つないでいるが、2つのペアを持たない電子によって環状の芳香族を作る ことが出来る。この様なジラジカルはDNAを切断し、効果的な抗腫瘍 剤になりうる。Warnerたちは(p.814)リガンドが ジフェニルフォスフィンである場合は、白金あるいはパラジュームイオン はBergmanの環化反応の促進剤として利用でき、水銀イオンはこの抑制剤 として利用できる、と報告している。このような制御は、このような薬剤 の働きを対象とした応用に役立てるかもしれない。


溶岩の始まりは? (Basalt beginnings)

2つの同位体システムが、マントルのプリュームの起源と進化を追跡する 物質としてますます重要になりつつある。このプリュームは、地上の大規 模な溶岩流の源と見なされているものであり、これがマントルの深部に由 来しているかどうか未解決である。Basuたち(p.822)は、2億5300万 年前に形成された最大のシベリア溶岩地域のかんらん石結晶が、ヘリウム 3とヘリウム4を高い割合で含むことから、ガスが抜けてないマントル由 来のものであろうと考えた。また、Walkerたち(p.819)は、レニウム= オスミウムの同位体システムは、プリュームに地核が関与していることを 追跡するのに適していると提案している。つまり、核には特にレニウムが豊富で、 オスミウムもマントルに比べて豊富であるから、核物質が少しでも混入す れば検出できると言う。

タンパク質の折り畳みとシャペロニン(chaperonin)非対称性 (Protein folding and chaperonin asymmetry)

Engelたち(p.832)と、Hayer-Hartlたち(p.836)はタンパク質の折り畳みを 行うchaperoinタンパク質複合体は、その機能を発揮している最中にはどんな 形状であるのかを詳細に調べた。その結果、多くのシャペロニンサブユニット から成る2つの複合体が同定された。電子顕微鏡の観察によれば、1つは砲弾型 でもう1つはラグビーボール状だ。非対称な砲弾型のみが、エネルギー依存性 のあるタンパク質の折り畳み反応に関係している。これらのデータはシャペロ ニン反応サイクルの基礎となる。


粒を与えられて (Given the Nod)

まめの根粒形成は共生によって作られる粒化因子(nodulation facotrs; Nod) によって刺激される。合成した粒化因子を非まめ科の植物細胞に与えた ところ、通常は根粒菌で起こされる発生経路の一部は、シグナルトランスダ クションのいくつかのステップを内因性成長因子で制御される非まめ科の経 路の一部と共有していることが解った。合成Nod因子の有効性の解析から脂 肪アシル基による代用品はトランス型がシス型より効果的であることが解っ た。Roehrig et al(p.841).


ナトリウム制御と嚢胞性繊維症 (Sodium regulation and cystic fibrosis)

嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)(CF)患者の気道の上皮細胞はCFのトランス メンブラン制御(CFTR)の欠陥のためCl-イオンを分泌しない。同時に、CF患 者はナトリウムの吸収率が高い。これも気道分泌の異常水和の原因と思われ る。Stuttsたち(p.847;関連記事 Al-Awqari,p.805) は Na+ チャンネルの 機能の変更が、CFTR の変化の結果であると言う。彼らのデータによると CFTR 機能は上皮の Na+ チャンネルの透過性を低下させる。この結果、 CFTR は Cl- チャンネルの制御だけでなく、 Na+ のチャンネル制御を司 るように見える。


おとなしい投薬法 (Sound delivery)

薬剤の経皮投与は、経口投与に比べ胃や腸などの代謝の問題がないなどの いくつかの利点があるが、多くの薬物に対して皮膚の透過率が低いことが この方法の普及を妨げている。Mitragotri たち (p.850) は、低い周波数 の超音波が、大部分の薬物、例えば、インシュリンやインターフェロンγ などのタンパク質に対しても、5、6オーダーも皮膚の透過率を高めること を見いだした。もしかしたら、経皮投与は注射にとって変わるかも知れない。


特徴の表現 (Feature presentation)

視覚系の処理は目の刺激を形状、色、空間的位置といった特徴に分解する。では、 これらの分解された特徴がどうやってまとまった知覚となるのか?これに対する中 枢神経系のメカニズムは数多く提案されてはいるが生物学的な証拠はほとんどない。 Friedman-Hillたち(p.853)は、怪我をして両側の頭頂から後頭部損傷により、特徴 の結び付けが出来ない患者に付いて述べている。


[インデックス] [前の号] [次の号]