AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 4, 1995


くっついたり、畳まれたり、もつれたり (Binding,folding and unraveling)

切断認識要素を持っている12塩基対のDNAに結合した Bam HIエンドヌクレアーゼ 酵素の結晶構造はDNAのB-構造を保持している。Newmanたちは (p.656)この酵素が大きな変化を経由していることを見いだした。このサブユニットは回転した り、構造の乱れた部分が畳まれたりするが、カルボキシル末端 を持つ螺旋は構造の乱れた腕を形成し、他のユニットの小溝に はまり込んだり、糖-リン酸の骨格と結合したりする。


波を捕まえる (Catching the waves)

自己触媒反応(反応生成物が次々触媒作用する反応)の反応体の濃度が拡散によっ て適度に制御されると、移動する波のような2次元形状になる。また、電極電圧低下によるポテ ンシャルの勾配によって反応状態を制御出来るような系でも電気化学反応が波を形成する ことがある。Flaergenたち(p.668)は表面プラズモン共鳴の技術を使って銀電極上の ポテンシャル波の像を観察した。その結果、波のスピードは秒速数メートルであり、 これは神経繊維上の興奮信号の伝達速度に対応する。


色鮮やかな受容体 (Colorful receptor)

Bellたち(p.671)によって設計された分子はクリアチニンだけを認識する。このクリ アチニンは腎臓機能のインディケーターである窒素代謝の最終生成物である。クリ アチニンとの結合はプロトンを分子の一端から他端へ移動させ、識別可能な色の変化を 伴う。これによって簡単なクリアチニンの検出が出来そうだ。


赤い色から (Out of the Red)

拡散した星間バンドは目立つ吸光性の星間物質であるが、その起源は宇宙塵か、分 子かはっきりしない。Sarreたち(p.674)は Red Rectangle 星雲の中心のA0型星から 色々な距離にある、波長が579から662ナノメーターのバンドの高解像スペクトルを得 た。このバンドの波長は星から遠ざかるほどシフトして行き、遂にシャープな拡散 バンドの波長に一致することから、このバンドは分子の電子的遷移から生じている らしい。


いつからか?が問題だ (A question of when)

En-1遺伝子に突然変異を持つマウスは生まれた途端に死亡するが、中後部脳の大規模 な欠損が見られ、En-2 突然変異体は生きながらえるが、大脳に欠陥を持つ。これらの 遺伝子は、遺伝子重複の過程で生じるのであろうが、55%が同一であるに過ぎず、En- 1 は En-2 より以前に、脳の中後部と思われる領域で発現している。Hansたち(p.679、及びM arxの 解説p.633)はEn-2をEn-1の部位に挿入して置き換え、En-1突然変異体を生存させた。En- 1と En-2タンパク質は生化学的には似た性質を示すが、発現パターンの変化の過程で新たな 役割を獲得 したと見られる。


埋め込まれたアルゴリズム (Nested algorithms)

昆虫が込み入った巣を作るとき、各々の昆虫は自分が建設の各段階で何をすべきかをど うやって知っているのだろう。Theraulaz と Bonabeau(p.686)は、多数のランダムに動 き回るエージェントが特定のブロック構造を認識したとき、持っているブロックを置く ようなコンピュータアルゴリズムを作った。その内のいくつかは実際のすずめ蜂の巣と 似ていた。


一緒の方がいい (Better together)

ウイルス耐性は、AIDS患者のHIVの複製を阻害する目的で用いる、AZTや3TCのような薬の 有効性に制約をもたらす。Larder たち(p.696)は試験管内の研究からHIV逆転写酵素の AZT耐性突然変異の表現型は、残基184内で3TCによって誘発される突然変異によって抑圧されること を見いだした。試験管内でAZTと3TC との両方で野生型ウイルスを処置したが、AZTに耐性 を持った突然変異体は、発育しなかった。両方の薬を併用している患者は、AZTだけ使って いる患者に比べAZT耐性突然変異体を生成する速度が遅いことが、24週間の試験投薬で解った。


アレルギーの発達 (Allergy advance)

アレルギー反応の詳しいことは未だに解ってない。9年前、人間の好塩基球に働き かけてヒスタミンを放出する因子が報告された。このヒスタミン放出因子(HRF)は イミュノグロブリンE (IgE) に依存し、患者のアレルギー反応の強さに関連しているIgE 内の異質性を性格づけしている。HRF は現在まで分子のキャラクターライゼイション(性状決定) に手掛けてきた。 MacDonaldたちは(p.688) このクローニング、配列決定、および発現に ついて記述し、アレルギーの理解と治療に新たな可能性を開いてきた。


2重の責任 (Double duty)

真核細胞のDNAポリメラーゼβ(polβ)はDNA合成の段階で、塩切り出しDNA修復に関与 していると思われている。MatsumotoとKim(p.699)は polβが修復プロセスの中で第2の 際だった役割を演じているいると報告した。即ち、 β-eliminationによって、修復反応の共通の中間生成物である切開された apurinic-apyrimidinic のサイトから 5'-terminal deoxyribose phosphate residue の放出を促進する。・除去活 性(excision activity)は polβのアミノ端の8−キロダルトンのフラグメントの中に存在 する。この除去とポリメラーゼ活動の物理的な会合が修復効果を増強すると思われる。


見てから行動へ (See and do)

どうやって認識が運動の制御へ影響するのか?Pellizzerたち(p.702)は指示した事柄を思 い浮かべながらあるタスクを猿にやらせた場合の運動中枢の神経細胞の活性を調べた。猿は環境 から受ける刺激に応じて、決められた方向に行動を起こすことをしなければならないよう 仕込まれた。以前、目標物を決まった角度だけ回転させた状態に置くような実験では、 刺激点の角度から、決まった角度だけ加算された角度の目標物に向かって神経細胞が活性化 された。それに比べ、刺激の提示順番に応じて、目標物の方向が規定されるような実験では、 結果としての動きは、信号のスタート点の方位から不連続な角度だけシフトした。


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