AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約 |
|
Evan Leibovitch
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
どんなビジネスにおいても長々と中断する余裕はないので, OSの選 択が重要である. Linux は, 商業世界において比較的最近利用でき るようになった選択肢であるが, Windows と Unix のいくつかの長 所を融合し, 優れた技術と, 社会と商業事情の可能な最良の調和を 奨励する姿勢の両方を, ビジネスに提供する.
Frank Hecker
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
Netscape社の開発者である Hecker は, 商業オープンソースソフト ウェアのビジネスについて, なぜ企業がオープンソースモデルを採 用できるのか, オープンソースのライセンシングはどのように機能 するのか, どんなビジネスモデルが利用できるのか, オープンソー スに関する様々な異議に対してどのように答えられるのか論じる.
Greg Perkins
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
オープンソースコミュニティは, 資本主義者のフリーマーケットに 現れるのによく似た, 個人主義と自然発生的な秩序を示している. これらは平和にそして生産的に共存することへのある種の組織奨励 を生み出す. これはまさにオープンソースと資本主義双方のとてつ もない成功を呼び起こすものである.
Jacob Hallen, Anders Hammarqvist, Fredrik Juhlin, and Anders Chrigstrom
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
NetGuide は, 4年間にわたって Linux を主要 OS として使ってき て, 良い結果を出している. 本稿は, システムのセットアップと進 化, 問題とその解決, Linux に関する有望な経験, そして商用セッ ティングにおいて Linux をうまく走らせるのに必要な教育と専門 知識について述べている.
Shahid H. Bokhari and Rafeequr Rehman
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
Linux は 工業国に比べてはるかに大きな影響を, いろいろな風に 発展途上国に与えている. 著者らは, パキスタンの大学と産業にお いて, Linux を生産的に使ってきた. 本稿では, 大学生の教育のた めに 84席の Linux 研究室をセットアップした際に何を学んだか, そして, パキスタンの ISP(インターネットサービスプロバイダ) が Linux を利用してどのようにサービスを改善したかについて詳 述する.
Terry Bollinger
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
本稿は, 様々な環境における Linux のいくつかの興味深い応用に ついて議論する. 応用としては, 遠隔で近づきにくいセンサーを使 う海洋学研究室, 少額予算での高速ネットワークの開発, 2人と Unix マシン 1台から Linux ワークステーション群を使う15人へと 発展した出版会社, ヨーロッパと南アメリカにおける『ソフトリア ルタイム』制御システムの開発, 複雑なリアルタイム組み込みアプ リケーションを構築する軍の契約者, そして天気のシミュレーショ ンなどのスーパーコンピューティングタスクのための Beowulf ク ラスタコンピュータの利用を含んでいる.
Gerald M. Weinberg
IEEE Software, Vol. 16, No. 1, January/February 1999
この Gerald Weinberg 著『計算機プログラミングの心理学 (Psychology of Computer Programming)』25周年記念版からの抜粋 は, 大きく誤解される『エゴのないプログラミング』という考えに ついて述べている. Weinberg は, プログラミングにおけるエゴの 問題が, 社会環境とエゴの価値体系を再構成することによって克服 できると論じている.
Karlheinz Kautz
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
計測の計画を成功させる鍵は, どんなに小さい組織であっても, その組織にとって, メトリクスを意味のあるものにし, かつ組織に合ったものにすることである. ここに著者は, 3つの小さな会社が, 変更要求の処理, 誤りの修正, そしてシステムのバージョンと製品リリースの開発に要する時間を いかにして削減したか説明する. それぞれの会社は, メトリクスプログラムを実施して, 構成と変更管理のための 新しい実践方法とツールが, ソフトウェアのプロセスに どのくらい影響しているか評価した. はじめは, ソフトウェア開発者はこの労力を受け入れるのに 大きな懐疑心を持っていたが, 最後には開発者も顧客も仕事が改善されたことに感謝した.
Ross Grable, Jacquelyn Jernigan, Casey Pogue, and Dale Divis
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
たくさんの小さな組み込みアプリケーションソフトウェア パッケージを開発し保守する組織は, うまく構成された メトリクスプログラムの恩恵を受けることができる. 米陸軍ミサイル司令部(US Army Missile Command) 研究開発センター(Research, Development, and Engineering Center) のソフトウェア工学理事会(Software Engineering Directorate) におけるソフトウェアデータの収集は, 一貫性がなく信頼性が低く不完全なデータを, 周期的に大騒ぎして集めることから始まった. 協調された活動と上からの管理の関与があって初めて, 有効なソフトウェアメトリクスのプログラムとなった.
Peter Aiken, Ojelanki K. Ngwenyama, and Lewis Broome
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
ヴァージニア州政府が多大な労力をかけて レガシーな給与人事システムの入れ替えに着手した時, 新しい情報システムへの迅速でスムーズな移行が必要であった. 著者らは, PeopleSoft の新しい商用クライアントサーバシステムの リバースエンジニアリングを行うプロジェクトに参加した. 十分な文書が手に入らなかったために, レガシーなシステムも新しいシステムも同様に, その中に『隠された』情報を掘り出す必要があった. 著者らは, そのシステム情報がいかに実装と保守の助けとなったか述べる.
Gilles Muller and Ulrik Pagh Schultz
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
Java は, 効率を犠牲にして, 可搬性と安全性を提供する. この効率の欠如を克服する多くの解が提案されてきたが, それらの多くは可搬性もしくは動的にバイトコードをロードする 能力を損なうものである. 著者らは, これらの要因の全てを調停する解を示す. Harrissa は Java プログラムの効率の良い実行環境であり, コンパイルされたメソッドと, インタープリットされるメソッドの 混在を可能にする. Harissa のコンパイラは, Java バイトコードを C に変換し, いくつかの積極的な最適化を取り入れ, 2つ以上の要因により JIT システムより優れている.
Dror G. Feitelson and Michael Naaman
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
最近の OS は高度にパラメータ化されており, システム管理者は局所的な作業負荷を最適化するように 調整することができる. しかし, これは難しく, また時間のかかる作業である. 著者らは, システムにおけるアイドルループの代わりに, 様々なパラメータ値におけるシステムパフォーマンスの シミュレーションを実行することで, このプロセスを自動化する仕組みを提案する. シミュレーションは, 局所的な作業負荷に関する情報を含む ログファイルにより駆動され, 遺伝的アルゴリズムが用いてパラメータの最適値を探索する. シミュレーションの求めたパラメータ値は, 断片化(fragmentation)を削減し, デフォルト値を使った場合に失われる計算サイクルの 4分の1を救い出した.
Brian Kernighan and Rob Pike
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
著者らの新刊である『The Practice of Programming (プログラミングの作法)』からのこの抜粋により, あなたはパフォーマンス改善をさっと練習することができる. 更に重要なのは, Kernighan と Pike のおかげで, いつパフォーマンスの改善が必要なのか, そしてパフォーマンスの改善は必要なのかどうかを 決定することができ, 重要でないソフトウェアアプリケーションの オーバーエンジニアリングを避けることができる.
Jorgen Boegh, Stefano Depanfilis, Barbara Kitchenham, and Alberto Pasquini
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
Software Quality in Development(開発におけるソフトウェアの品質), 略称 Squid は, 品質の保証と管理のための手法とツールである. これによりソフトウェア開発部門は, 計測を用いて, 開発期間における製品品質の計画と管理を行い, 最終的な製品品質を評価し, ソフトウェア開発プロセスを改善することができる. この手法とツールは, Telescience という実際の ソフトウェア開発プロジェクトで使われた. このプロジェクトは南極の科学基地を自動化し, 南極の冬の間, 科学実験の遠隔監視と制御を可能にすることを 目的としている.
Pete Sawyer, Ian Sommerville, and Stephen Viller
IEEE Software, Vol. 16, No. 2, March/April 1999
あまりにもしばしば, ソフトウェア製品は重大な顧客要求を満たすことができず, 開発者は既存のソフトウェアプロセス改善 (Software Process Improvement)モデルに助けを求める. 著者らは, SPIだけでは要求工程を実施あるいは改善するのに 十分ではないことを示す. 彼らは, 標準的なSPIの実施と優れた要求の慣習に基づいた手法を開発した. これにより, 要求の獲得と管理を適切に扱うことが確実になる.
John S. Reel
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 18-23, May/June 1999
ソフトウェア開発の管理を成功させるのに魔法は存在しない. しか し, 我々は今なお, アイデアから機能する製品へと一貫性を保って 移行する能力を得てはいない. 最近の研究によると, ソフトウェア 開発プロジェクトの失敗率は実際のところ上昇している. Reel は, みなさんをプロジェクト成功の道へと導く, ソフトウェア管理の5 つの重大な成功要因を明らかにする.
Buford D. Tackett and Buddy Van Doren
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 24-29, May/June 1999
状態に基づくプロセス(State-Based Process)は, 北大西洋航空宇 宙防衛司令部(North Atlantic Aerospace Defense Command)のミッ ションクリティカルな自動ミサイル警告システムを開発するために 作られた. このプロジェクトチームは, 予算を10億ドル超過し計画 より10年遅れた, ある典型的な『食い逃げ(runaway)』プロジェク トの近くで働いた. 驚いたことに, 著者らは, 期限通りに予算以内 で, 事実上欠陥もなく, かつ顧客の要求を全て満たしたロバストな システムをもたらした.
Christopher Holland and Ben Light
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 30-36, May/June 1999
企業は, ITプラニングとレガシーシステムの管理のための, 既製の ERPソリューションへと移行しつつある. しかし, パッケージ化さ れたシステムのカスタマイズと運用はくじけそうになる作業である. 著者らのCSFフレームワークは, 運用戦略の構築においてマネージャ の指針となりうる. 2つの企業におけるERP運用の試みに対する彼ら の分析は, プロジェクト以前の計画から, プロジェクト後の成功と 失敗の戦略のレビューまでカバーしている.
Brian Fitzgerald and Tom O'Kane
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 37-45, May/June 1999
長期にわたるソフトウェアプロセス改善の努力について調査するこ とで, その成功に関連する特定の要因が明らかになる. このケース スタディは, Motorola社の Cellular Infrastructure Group はCMM レベル4に進んだことを示し, その達成に関係する重大な成功要因 を調べ, グループのソフトウェアプロセス改善を最適化するために 何が必要であるか議論している.
Shirley Becker and Mitchell Bostelman
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 46-51, May/June 1999
プロジェクトレベルの手法と目標は, 会社のビジョンとしばしば同 調していなかったり, 実はそれに反していることもある. 会社のコ ミニュケーションにおけるこの亀裂は, 会社の競争力, 成長, そし て安定を阻害するかもしれない. バランス・スコアカード (Balanced Scorecard)と Goal Questions Metrics (GQM, 目標/質 問/メトリクス)という2つの有名な技法を統合することで, それぞ れの管理レベルにおける組織の目標を組み込んだ包括的計測プログ ラムを提供することができる.
[訳者解説]
Capers Jones
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 55-61, May/June 1999
アメリカ合衆国においても世界中においても, 現在のユーロへの変 換作業と2000年問題の解決は, ソフトウェア労働者不足に拍車をか けている. この記事は一般論を越えて, 特定のソフトウェア職に必 要とされる労働者の数まで推定する. 著者は, 実際に適用されれば 労働力酷使を軽減することができるような, 短期的戦略と長期的戦 略の両方を提案する.
Subroto Bagchi
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 62-65, May/June 1999
ソフトウェアサービスの世界的需要は, 才能のあるソフトウェア技 術者の現在の生産よりもずっと速いスピードで増加している. 著者 は, インドのソフトウェアサービス産業の成長と未来について議論 し, 数を増す教養のある熟練したソフトウェア専門家により, イン ドがいかにこの需要を満たすことができるか示す.
Ahmed Seffah
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 66-70, May/June 1999
このカナダと北アメリカにおけるソフトウェア人員問題に関する概 論において, 徒弟制度や共同訓練に対する新しいアプローチに, 継 続的な教育活動を適合させることを, 著者は提案する. モントリオー ルのコンピュータ研究所(Computer Research Institute of Montreal)によって生み出された教育プログラムは, 技術文書作成, 費用/便益調査の指揮, そしてチームでの作業といった重大な能力 に焦点を当てている.
Jorg Noack and Bruno Schienmann
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 71-81, May/June 1999
オブジェクト指向開発方法論を大規模な組織に導入するには特別な 手法論的手引きが必要である. 著者らを含むチームは, モデリング, プログラミング, アーキテクチャ, プロセスのガイドラインを統合 したオブジェクト指向アプリケーション開発ツールを開発した. こ の一貫したOO開発手法は幅広いプロジェクトに適用できる.
Soumitra Dutta, Michael Lee, and Luk Van Wassenhove
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 82-90, May/June 1999
ソフトウェア開発組織は, 開発プロセスの改善にベストプラクティ スを用いることの重要性に, 徐々に気がつきつつある. いったい何 社が実際にそれを採用しているのだろう? 著者らはその答えを見 つけるために, ヨーロッパの20ヶ国における約400社のデータを解 析した.
Ivar Jacobson, Grady Booch, and James Rumbaugh
IEEE Software, Vol. 16, No. 3, pp. 96-102, May/June 1999
この『統一ソフトウェア開発プロセス』(The Unified Software Development Process)からの抜粋は, UMLを使ったモデリングに実 用的な焦点を当てながら, 新しい統一プロセス(Unified Process) の概要を細かに説明する. 著者らは, ユースケースに基づく, アー キテクチャ中心の, 反復的でインクリメンタルなプロセスの基本構 造について述べる.
Carolina Cruz Neira and Robyn R. Lutz
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 26-30, July/August 1999
仮想環境(VE; Virtual Environment)が研究室から商用へと移行す るにつれて, VEのシミュレートするシステムを認証する際の, VEの 適切な役割を定義する必要が出てきている. 本稿では, この開発中 の技術に特有な特徴と, VEを認証に用いる際に考慮すべき問題点に ついて述べる.
Patricia Rodriguez-Dapena
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 31-38, July/August 1999
複数ドメインのソフトウェア集約的システム認証が, いくつかの国 際標準化組織において関心を集めつつある. 従来, 認証はドメイン に特化した技術的要求と操作上の要求, 異なるサブシステムの信頼 性に関する履歴情報, 障害データの履歴に基づいていたが, それら はドメインにまたがるシステムで入手することは許されない. 認証 の権限に対する国際的かつ学際的な法律上の認識が必要である. 著者は, この重要かつタイムリーな問題の法律的側面と技術的側面 の両方を探究する.
Shukri A. Wakid, D. Richard Kuhn, and Dolores R. Wallace
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 39-47, July/August 1999
米NIST(National Institute of Standards and Technology)の情報 技術研究室(Information Technology Laboratory)では, IT産業の ための包括的な認証能力の確立に研究の焦点を当てている. 本稿で は, NISTの研究と, それがどのように応用できるかについて述べる.
Jeffrey Voas
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 48-54, July/August 1999
複数のプラットフォームにまたがって, 複数の環境において利用さ れる可能性のある製品に, 全権委任高保証の認証を交付することは 無意味である. 我々は, ソフトウェア認証を, 製品の既知の環境と 操作プロファイルに結び付けるべきである. Voas は, 高い保証を 実証するための, 望ましい行動のテスト, 異常テスト, 欠陥注入と いう3つの技法を提案する. いずれも, 製品の操作プロファイルを 利用して, 破滅的事象をまねきかねないソフトウェアに関する異常 を検知する.
Tim Shimeall and John J. McDermott
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 58-61, July/August 1999
相当な数の報告されたセキュリティ問題に直面し, インターネット の利用者は, インターネット世界が提供するものに参加するために, どのくらいのリスクを進んで受け入れるのか決めなくてはならない. Shimeall と McDermott は, ネットのセキュリティ問題の範囲と根 源について示した後, ソフトウェアの安全性を保証する助けとなる, 我々が即座に取りうる3つの処置について概説する.
第3の既存のシステムの検査と修復は, 2000年問題に関する世界規 模の大努力に匹敵する.
John Michener
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 62-69, July/August 1999
著者は, 様々なインターネットという目標について調べ, ありがち な攻撃者とそのテクニックについて議論する. 彼は, システムの完 全性を保護し, そういった攻撃を防ぐための防御メカニズムを提案 する.
Robert J. Ellison, Richard C. Linger, Thomas Longstaff, and Nancy R. Mead
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 70-77, July/August 1999
生存可能ネットワーク分析(Survivable Network Analysis)手法に より, アーキテクチャレベルでの生存可能性を評価することができ る. 手順には, システムの使命とアーキテクチャの定義, 不可欠な 機能の定義, 妥協できる機能の定義, そしてアーキテクチャ上の弱 点(重要なものと妥協できるものの双方)の生存可能性分析が含まれ る.
本稿は, 大規模分散ヘルスケアシステムのあるサブシステムへの, この手法の適用についてまとめている.
Karl Wiegers
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 78-86, July/August 1999
プロセス工学は時々, 長いタイムフレームの大規模ソフトウェアプ ロジェクトにのみ関連する高級品のように見られる. 本稿ではそう でないことを示す. ここに述べられる Web 開発グループは, 5ヶ月 の間に実質的な利益と文化的利益の両方を獲得しながら, プロジェ クト管理, 変更管理, 要求工学, 品質管理実践(quality practice) のいくつかの側面に取り組んだ.
Jonathan Lee and Nien-Lin Xue
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 92-101, July/August 1999
要求工学の目的は, 必要で価値のあるユーザニーズを引き出して評 価することである. 現在の要求獲得のためのユースケースアプロー チは, ユースケースによる形式化と非機能的要求を適切にサポート していない. 産業界の動向と研究に基づいて, 著者らは, ユースケー スモデルをゴールとともに組み立てる手法を開発した. 彼らは, 単 純な会議計画(meeting planner)システムを用いて, この新しいア プローチの利点を説明している.
Barry Keepence and Mike Mannion
IEEE Software, Vol. 16, No. 4, pp. 102-108, July/August 1999
ソフトウェア部品を再利用することで, 製品ファミリーは, コスト においても時間面においても大きな節約を生み出すことができ る. 著者らは, パターンを用いて変動性をモデル化する, 単純な製 品ファミリー工学的手法を開発し, 欧州宇宙運用センター (European Space Operations Centre)の新しい宇宙飛行計画ソフト ウェアシステムにおいて試験を行い, 有望な結果を得た.
Louis Perrochon and Walter Mann
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
よいソフトウェアの習慣にいつ従う必要があるか? ソフトウェア システムは必ずはじめから, 完全に設計されたアーキテクチャを有 しているべきか? 本稿は, 今日の目まぐるしく変化するソフトウェ ア環境において, ソフトウェア開発者の取り組む問題について議論 する. これらの要求を満たすために, 著者らは『推論された設計 (inferred designs)』という新しい手法のためのモデルとツールを 紹介する.
Steven A. Stolper
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
著者は, Mars Pathfinder(火星探査機)宇宙船のための航空ソフト ウェアアーキテクチャを開発するのに用いられた設計手法について 詳しく述べ, OO設計の側面を従来の機能分解に結合する非形式的な 設計手法について論じ, 従来のOO設計手法に対する明らかな利点を 示す.
James D. Herbsleb and Rebecca E. Grinter
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
実働可能な労働部門を作ることでソフトウェアプロジェクトを調整 する際に, ソフトウェアアーキテクチャが重要な役割を果たす. 著 者らはプロジェクトの作業を調整するのに用いられる様々な手段に ついて述べている. 予期されない事件がいかに効果を制限するか, そして地理的な文化的な組織的な分離によりいかに多所間の意思疏 通を混乱させるか.
Christopher Alexander
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
この OOPSLA 1996 (Conference on Object-Oriented Programming Systems, Languages, and Applications; オブジェクト指向関連の メジャーな国際会議)における基調講演のほぼ一字一句そのまま書 き写した記事で, Alexander はパターンとパターン言語の歴史と重 要性, 彼のより最近の全体性(wholeness)と美学(aesthetics)の性 質に関する研究, そして彼の分野とソフトウェア開発分野の間の進 行しつつある関係について議論する. Jim Coplien の紹介によりお 膳立てされる.
Don Willerton
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
完全なソフトウェアプロジェクトは存在しない. 事実, ほとんどは ひどいものだ. 要求が曖昧であったり, 予算や資源に乏しかったり, といった具合いだ. 著者は, ソフトウェア開発環境の変遷と, 新し いチームリーダであるウィザード(Wizard)が, いかに現実のカオス とともに従事し, プロジェクトの成功を引き寄せるのかについて述 べる.
Jon Bentley
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
この Bentley の来るべき "Programming Pearls" 第2版からの抜粋 は, 封筒の裏でできるようなごく簡単な計算アプリケーションにつ いて論じている. それは, 悲しいことにコンピューティング分野で は見逃されているが, 実践技術者の間では広く使われているツール である.
Jesus Bisbal, Deirdre Lawless, Bing Wu, and Jane Grimson
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
将来に渡り組織をサポートできるような方法でレガシーデータを獲 得することは重要であるが, 比較的新しい研究領域である. 著者ら は, 健全なレガシー戦略としての移行を主張し, 既存の研究を総括 し, 2つの見込みのあるLIS(legacy information system)のための 方法論, Chicken Little と Butterfly を示す.
Ali Mili, Sherif Yacoub, Edward Addy, and Hafedh Mili
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
再利用の研究開発は正しい方向に進んでいるだろうか? 1997年の ソフトウェア再利用性に関するシンポジウム(1997 Symposium on Software Reusability)でのパネルセッションをもとに, この記事 では, 最近著者が重要であると感じている再利用に関する周知の研 究課題について, 研究目的と提案された研究手法によって技術的課 題と管理的課題に分類して紹介する.
Thomas C. Jepsen, Stephen A. Wright, Richard L. Klevans, and Ze Zhang
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
民間のネットワークと公共のネットワークの双方において, 高帯域 幅と保証されたサービスの品質を提供するために, 次第に ATM が 用いられるようになってきており, ATM マルチメディアの開発には, PC ベースの Linux ワークステーションが理想のプラットフォーム なのである. 著者らは富士通の ATM/Linux 実験ネットワークと開 発環境を用いたプロトタイプ開発の結果を報告する.
Liping Zhoa and Ted Foster
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
オブジェクト指向システム構築において, いくつかのモデリングの 抽象化は, 役割(role)を表現するのに, それらの間の関係を扱うこ とをしない. このモデリング問題の複雑性を軽減し, 表現の柔軟性 を高めるために, 著者らはこららに代わるモデリング手法である役 割モデリングを始めた.
Hermann Kaindl
IEEE Software, Vol. 16, No. 5, September/October 1999
オブジェクト指向分析からオブジェクト指向設計への移行は難しい. 残念ながら, OOA の概念はおよそ10年前に作られたものであるため, 著名な OO に関する出版のほとんどは, この問題を誤って評価して きた. 著者は OOD と OOA の違いを示し, これを通してより意識的 な開発手法について概説する.
David Lorge Parnas
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
計算機科学の学科の多くは, 長い間ソフトウェア工学という語句を ひとつの講座を表すのに用いてきており, ソフトウェア工学は彼ら の学問の一部であると主張する. 一方で, いくつかの工学部は, ソ フトウェア工学は工学系学問の新しい専門分野であると主張する. Parnasは, 従来の計算機科学の教育プログラムと, 大部分の工学系 教育プログラムの違いについて論じ, 我々には, 専門教育に対する 従来の工学的アプローチに従った, ソフトウェア工学の教育プログ ラムが必要であると主張する. 彼はまた, 考察のために, ソフトウェ ア工学カリキュラムのサンプルを示す.
Gerald L. Engel
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
ソフトウェア工学調整委員会(Software Engineering Coordinating Committee: SWECC)のソフトウェア工学教育プロジェクト(Software Engineering Education Project: SWEEP)の目的は, ソフトウェア 工学プログラムのための認可基準を作ることである. 本稿は, 今日 までのSWEEPの取り組みを紹介し, 将来の目標について議論する.
Pierre Bourque, Robert Dupuis, Alain Abran, James W. Moore, and Leonard Tripp
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
著者らは, ソフトウェア工学の知識体系(Software Engineering Body of Knowledge: SWE-BOK)への手引きを作るための, IEEE Computer Society と ACM(Association for Computing Machinery) による共同活動について報告する. SWE-BOK プロジェクトは, 現在 全3フェイズのうちの第2フェイズにあり, ソフトウェア工学の学問 分野を特徴付ける知識の中核をなすサブセットを決定しようとして いる. その結果, ソフトウェア工学を専門職業としてよりうまく定 義する手助けとなるだろう.
John R. Speed
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
1998年6月, テキサス職業エンジニア委員会(Texas Board of Professional Engineers)は, ソフトウェア工学を認知された工学 分野のひとつとして制定し, ソフトウェアエンジニアに特化した認 可基準を定めた. 著者は, 含まれる法的問題と, その問題が我々に どのような影響を与えるか説明する. 本稿はまた, ブリティッシュ コロンビア, オンタリオ, そして英国における, 検定と認可に関す るコラムを含んでいる.
James W. Moore
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
今日, ソフトウェア工学に関する何百もの標準, 指針, 教科書が存 在するが, 増大するコレクションは, 様々な標準を統合・組織化す る助けとなる管理手法を必要としている. 本稿は, IEEEソフトウェ ア工学標準委員会(IEEE Software Engineering Standards Committee: SESC)による, 最近出版した SESCコレクションの統合 方針に沿ってまとめられた4巻組版における, 標準コレクション管 理の試みについて議論する.
Don Gotterbarn
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
ソフトウェア工学倫理規範と職業上の実践(Software Engineering Code of Ethics and Professional Practice)は, 最近, IEEE Computer Society と ACM の両者によって認可され, 多くの企業が これを採用した. なぜ専門職が倫理規範を必要とするのだろうか? ソフトウェア工学のような生まれたての専門職において, 規範はど のように機能するのだろうか? 本稿は, 工学的素養のあるなしに 関わらず全てのソフトウェア従事者にとって, すぐに影響のあるこ とと, 長期的な意味合いについて考察する.
Carl K. Chang and Mark Christensen
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
プロジェクト管理者に立ちはだかる技術上かつ管理上の複雑さの制 御を手助けするために, 著者らは, 並行で, 反復的で, 進化的なソ フトウェア開発の性質を捉えたモデルである PM-Net を提案する. それは, 情報の流れの図式モデルを基本として, 意思決定と成果物 の両方を表現する拡張がなされている. 著者らは, その表現と遺伝 的アルゴリズムを融合して, 資源と作業の割り当てにおける可能な 全ての巨大な探索空間を調べることなく, どのように管理者に最適 解或いは近似最適解を提供するか示す.
Sridhar Anandakrishnan
IEEE Software, Vol. 16, No. 6, November/December 1999
南極の氷原という厳しい条件は, 一年中継続して行う地球物理学の データ収集に対して恐るべき難題を引き起こす. 著者は, 小さなワ ンボードコンピュータ上の GNU/Linux OS を用いて, 連続データ収 集エンジンを設計・構築し, 遠隔から地震の記録を行った. GNU/Linux システムの安定性と信頼性によって, 無人遠隔ステーショ ンにとって理想的な選択となった.