神経細胞-アストロサイト間コミュニケーションの再考 (Rethinking neuron-astrocyte communication)
アストロサイトは神経活動を調節することが示されており、神経細胞-アストロサイト間情報伝達の機能障害は多くの認知過程に変化をもたらす。しかしながら、アストロサイトが神経細胞回路網に統合される基本的な機構は、ほとんど解明されないまま残されている。3つの独立した研究が、複数のin vivoおよびin vitroモデルを用いて、アストロサイト-神経細胞間情報伝達に関与する機構と分子因子を研究した(Erogluによる展望記事参照)。Guttenplanたちはショウジョウバエの幼虫と哺乳類のアストロサイト培養物を用いて、ノルエピネフリン(NE)の相同体であるチラミンへの曝露が、通常はアストロサイトが応答しない様々な神経伝達物質に対して 、突然強力に応答する能力を与えることを示した。Chenたちはゼブラフィッシュにおいて、NEがアストロサイト上のNE受容体の活性化、アストロサイトのATP分泌、ATPのアデノシンへの細胞外代謝、そして神経細胞のアデノシン受容体活性化を通して、幼虫の行動を調節することを見出した。最後に、Leftonたちはマウスにおいて、NEがアストロサイトのアドレナリン受容体を含むシグナル伝達経路を通してシナプス機能を調節することを示した。これら3つの研究は、神経細胞のシグナル伝達と回路網機能がアストロサイトにおける評価によって開閉されうるという神経回路網機能のモデルを示唆している。(KU,nk,kh)
【訳注】
- ノルエピネフリン(ノルアドレナリン):シナプス伝達の間に神経細胞から放出される神経伝達物質。
Science p. 763, 10.1126/science.adq5729, p. 769, 10.1126/science.adq5233, p. 776, 10.1126/science.adq5480; see also p. 705, 10.1126/science.adx7102