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Science March 15, 1996
隕石の起源のモデリング ( Modeling meteoritic origins)
コンドライト(球粒隕石)は、太陽系の原始星雲中で、初期の段階で形成されたと考えら
れている、コンド
リュールとして知られる小さな球形物質やその他の粒子を含んでいるようなタイプの隕
石である。正確な
コンドライトの起源は明確なものではなかった-----一つの問題は、それらは短い期間(
およそ1時間)の
間に、高温に(絶対温度2000Kあるいはそれ以上)達したようにみえることである。 Shu e
t al. (p. 1545)
は、一連の数値計算によって、コンドリュールと他の粒子は、初期の太陽の近くの風に
よる空気力学的抗
力の結果として形成されたという考えを提案している。熱的な歴史に加え、彼らのモデ
ルは、コンドリュ
ールに見られる粒子が様々な大きさとタイプであることを主張している。(Wt)
マントルの中にまっ逆さま (Diving into the mantle)
複雑で、地震を起こし易く、4プレートが衝突しているインドネシアの沈み込み帯は
、より興味をそそる場所の一つを代表しているが、ここでの沈み込んでいる岩板の明
瞭な解像の画像は、プレートの衝突とマントル対流のより良い理解を与えてくれる。
Widiyantoroとvan der Hilst(p.1566)は、大量の地震記録からの、地球規模および局
地的なP波のデータのみならず、マントル内の僅かに異なる経路を拾ったP波の位相
を利用して、線形逆トモグラフィーを実行し、スマトラ深部の画像を得た。彼らは、
岩板が少なくとも1200キロメートルのマントル底部まで侵入しており、沈み込んだプ
レートは、第三紀初期のスマトラの回転によって分離された、と推論している。(Ej)
すばやい変換 ( Quick conversions)
天然ガス中に見られるような、軽いパラフィン系炭化水素は、他の生成物に変換するこ
とによりその価値
を増すことができる-----それらは、全く反応しないか、いったん活性化させられれば、
二酸化炭素‾や水
などの望ましからざる生成物になるか、どちらかをとる傾向がある。 Goetsch and Schm
idt (p. 1560)は
、エタン、プロパン、ノルマルブタンを部分的に酸化して、酸素添加物やオレフィン系
化合物を生成する
、単純な経路を見出した。彼らは、パラフィン系炭化水素と酸素の混合物をプラチナの
金網状の触媒上を
通過させた。これは、高速な化学的加熱(およそ5ミリ秒)と、続いての急冷(およそ20
0ミリ秒)を生じ
させる。これらの高速な変換が、完全な酸化を防ぐのに役に立つのである。(Wt)
鉄を横切らせて ( Getting iron across)
鉄は、多くの欠くことのできない酵素の活性サイトに取り入れられるために、細胞膜を
横切らなければならない。鉄が実際に脂質二重層を横切るメカニズムは、多年に渡り捉
えることができないままであった。Stearman et al. (p. 1552; Kaplan and O'Halloran
,
p. 1510の「展望」を参照のこと)は、酵母細胞膜中において、鉄輸送の複合体を形成す
る、一対のタンパク質のキャラクタリゼーションを行った。健康と病気とを考える上で
重要と思われる哺乳類の相同体(酵母と相同なもの)というものを、いまや同定するこ
とが可能である。 (Wt)
コカイン欲求 (Cocaine cravings)
コカイン中毒から引き離すとき、しばしば、高純度コカインが引き起こすのと類似
の、薬物に対する強い欲求が特徴的に生ずる。脳内におけるコカイン補強の主要な部
位はmesolimbic dopamine システムであり、ここでドーパミンは2種類の部位に作用
する;D1-とD2-様受容体に。Selfたち(p.1586;およびO'Brienによるニュース解説p.1
499参照)はラットのコカイン欲求行動を研究し、D2-様受容体が活性化されることに
よって、コカインに再度虜になること、しかし、D1-様受容体が活性化されると、コ
カイン欲求行動が阻害されることがわかった。この結果から、D1-様受容体アゴニスト
は、コカイン中毒の治療に於て、再度虜になることを防ぐのに有用であるかもしれな
いことを示唆している。(Ej)
V(D)J再組換えの化学(Chemistry of V (D)J recombination)
膨大な数の抗原を認識出来るのは、生殖系列T細胞受容体のvariable(V)、
diversity(D)、そして、joining(J)遺伝子断片(gene segment)と免疫グロブリン遺伝子
と
の組換えによって可能になる。van Gent
ち(p.1592;およびCraigによる「展望」参照p.1512)の報告によると、V(D)J 再組換えの
化学的メカニズムは、レトロウイルスインテグラーゼによって、バクテリアDNA断片(
DNA segment)を動かすために用いられている転位メカニズムと驚くほど似ていること
が示された。彼らによると、反応は、直接エステル置換によって進行する。V(D)J再
組換えの場合には、開裂反応はRAG1とRAG2タンパク質によって触媒され、その結果、ヘ
アーピン構造が形成される;引き続いて起きる、これら構造の不正確なプロセシングに
よ
って、受容体は更に多様性を増加させる。(Ej)
錨の整列 (Anchors array)
細胞内部の生化学的シグナル経路の正確な制御と連携が行われるためには、ある種の
成分が特定の部位に局在している必要がある。Klauckたち(p.1589)は、神経細胞が他
の細胞から信号を受け取っている特定のシナプス領域でのシグナリング分子の組織に
ついて述べている。キナーゼをつなぎ留めるタンパク質は、アデノシン3',5'-
モノフォスファターゼ-依存性プロテインキナーゼ(PKA または A キナーゼ)とフォス
ファターゼ2B(Calcineurin)をつなぎ留める、骨格としての役目を持つだけでなく、
プロテインキナーゼCもつなぎ留める。たぶん、この整列により、シプナスで受信
されたシグナルによって迅速に酵素が制御され、直ちに適切な基質にアクセスする。(Ej
)
羽をつける (Winging it)
ショウジョウバエの羽の発達中に、前部殻=後部殻(AP)の境界に沿う細胞は、背=腹(D
V)殻経路に沿っている細胞と相互作用をし、その結果、近位=遠位軸に沿っての発達
を促進する。AP軸とDV軸が確定するには2つの遺伝子を含むシグナルの形質導入経路に
よ
って調節されている:即ち、トランスフォーミング成長因子β相同体であるdecapentap
legic(dpp)と、分泌糖タンパク質(glycoprotein)であるwingless(wg)によって。 Gri
mmとPflugfelder(p.1601)は、羽の形成におけるoptomotor-blind(omb)の役割をしら
べ、omb が遠位の羽形成に必要であること、そして、wgとdppシグナリングの両方に
応答することを見いだした。(Ej)
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