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Science March 22, 1996
若くても耐えられるとは限らない (Young but not necessarily tolerant)
抗原に攻撃されたとき、新生の動物は、大人のそれに比べて免疫反応がずっと弱い。
3編の報告が示すところによると、新生T細胞は、成熟T細胞に比べて、抗原に対し
て、より容易に耐性を示さないばかりか、耐性と紛らわしい反応を示す(Pennisiに
よるニュース解説;P.1665)。Ridge たち(P.1723、および表紙)は、自分自身ので
はない(外来の?)脾臓細胞による新生T細胞の攻撃は、T細胞を不適切な抗原提示
細胞(antigen-presenting cells=APC)に曝し、その結果耐性応答に導く;しかし、本来
の(professional)APCへ曝すことによって、それらを活性化させる。Sarzottiたち(p.17
26)は、ウイルス性抗原が小量投与された場合は細胞障害性Tリンパ球に応答
し、多量の投与では非防御のタイプ2サイトカインに応答することを示している。
Forsthuberたち(p.1728)によると、マウスにおける外来タンパク質(ニワトリ卵白リ
ゾチーム)への応答は耐性ではなく、Tヘルパー2応答である。(Ej)
溶剤の形状 (In a shape of flux)
芳香族有機陽イオンは、有機化学で重要な役目を演ずる。しかし、ベンゼン陽イオン
,C6H6+,の形状については、多数の理論的、実験的研究にも関わらず未解決である。
この陽イオンの電子状態の縮退はヤーン=テラーひずみを導き、通常基底状態の対称性を
低下させる。Lindnerたち(p.1698)は、ゼロ運動エネルギー閾値光イオン化実験に於
て、C6H6+の回転および振動構造を研究した。彼らの結論は、C6H6+は流動構造である
----変形した異性体は、疑似回転を通して容易に相互変換し、分子は基本的にはD6h
対称性を保持する、と言うもの。(Ej)
蛇行を保って (Keeps meandering along)
小川からミシシッピのような大河に至るまで、川の蛇行パターンは、類似しているよ
うに見える。自由に蛇行する川のシミュレーションと、自然の川を比較することによ
って、Stolum(p.1710)は、蛇行する川の平面図が、2つの状態の間を振動するであろ
うと示唆している。そのパターンの1つは、蛇行パターンが規則的でわん曲状態は低
く、他方は、カオス的である。同一の川に両方のパターンが同時に起きうる。移動の
中断が度重なることが、2つの状態間の変遷をもたらす。(Ej)
シングルとダブルと (Singles and doubles)
最近の分子検出と操作の発達によって、単一分子のスペクトル分析やミクロな技術発
達し、局在した化学的環境の情報が得られるようになった。これらの技術においては、
単一
フォトンの吸収が基底状態から励起状態への遷移に導く。Plakhotnikたち(p
.1703)は、単一分子レベルでの2フォトン同時吸収が可能であることを示している。
この非線形光相互作用によって、非線形単一分子走査顕微鏡の可能性が開かれる。(Ej)
てんかん遺伝子 (Epilepsy gene)
染色体21の遺伝子の突然変異は、進行性ミオクロヌスてんかん症(myoclonus epile
psy)(Unverricht-Lundborg type, or EPMI)と関連している。Pinnacchioたち(p.1731
;O'Brienによるニュース解説p.1672)は、患者からの細胞中で、プロテアーゼである
シスタチンBをコードする遺伝子の突然変異体を見つけた。これは、3'スプライ
ス部位とストップコドン(stop codon)部位に生じており、これはメッセンジャーRNA
発現のレベルの低下と関連している。
腫瘍の免疫療法 (Tumor immunotherapy)
T細胞の活性化は、競合する刺激性シグナルと抑止性シグナルの結果に依存する。Leac
hたち(p.1734; およびPardollによる「展望」参照p.1691)は、このようなシグナリ
ングを利用して、腫瘍に対する免疫応答を強化する新しい手法を開発した。彼らは、
CTLA-4と命名された適当なT細胞表面受容体に対する抗体を用いて抑止シグナルを阻
止した。放置しておくと死に至るような定着腫瘍を持つマウスは、CTLA-4に対する抗体
で処置
された場合、強い抗腫瘍反応が開始された。この反応は、腫瘍を取り去り、そして、
再攻撃に対する免疫を誘発するに十分である。
RNAを繕う (Mending your RNAs)
ほとんどのプレメッセンジャーRNAイントロンは、ジヌクレオチドGUで始まり、ジヌ
クレオチドAGで終る。最近、ジヌクレオチドAUで始まり、ジヌクレオチドACで終るマ
イナーのイントロンのクラスが認識された。イントロンのスプライシングには、イン
トロンとsmall nuclear RNA(snRNS)の対合が必要であるので、マイナー イントロン
クラスのスプライシングには、メジャークラスのスプライシングよりは、異なった
snRNAを含むであろうと提案されていた。HallとPadgett(p.1716;およびMount による
「展望」参照p.1690)は、以前は機能が知られていなかったU12 snRNA は、マイナー
クラスのスプライシングに必要であることを見つけた。(Ej)
時計の時間合わせ (Resetting the clock)
ショウジョウバエにおいて、period(per)遺伝子とtimeless(tim)遺伝子は、日周性体
内時計の核をなす。2つの報告が、生物が環境に同調するために必要なプロセスであ
る、光が体内時計リセットにどのように関わるかについて示している(Barinaga, p.
1671,によるニュース解説)。Myersたち(p.1736)と、Leeたち(p.1740)は、光がTIMタ
ンパク質の急激な分解を起こし、これがPER-TIM複合体を分解し、日周体内時計を進
ませたり遅らせたりすることを見いだした。(Ej)
中心体過剰 (Centrosome surplus)
中心体は真核細胞の主要な微小管構成中心体であり、染色体分離の均衡を保つことによ
って
有糸分裂において重要な役目を演ずる。中心体は、1回のセルサイクル当り、通常1
回複製する。Fukasawaたち(p.1744)は、腫瘍抑制タンパク質p53の不足する細胞中で
は機能性中心体(functional centrosome)の多数のコピーが蓄積し、染色体の不均質な
分離が生じる。この発見から、p53は中心体の複製を制御することによってゲノム安
定性を保つのを助けている可能性を示唆している。(Ej)
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