交差様式による感覚発達 (Cross-modal sensory development)
感覚系の発達と統合を仲介する機構は完全には解明されていない。Caiたちは、マウスにおいて嗅覚の発達を体性感覚との関係で研究した。マウスでは嗅覚が最初に現れる感覚と考えられていて、体性感覚はそのすぐ後に現れる。著者たちは、他の感覚が発達する前の出生後の早い時期に、嗅覚刺激が体性感覚皮質(S1)を含む広い皮質領域にわたって興奮伝播を誘発することを示した。この嗅覚が仲介する興奮はマウス新生仔のS1内で、ひげにより引き起こされる活性を強化し、そして出生後発育が進むと失われた。発育初期に嗅覚を喪失させると、体性感覚が成体期に損なわれた。これは嗅覚が体性感覚処理の発達に影響を与える発育臨界期間の存在を示唆している。(MY,nk,kj,kh)
- 体性感覚:皮膚にある受容器によって知覚される触覚や圧覚・痛覚・温度覚などと、関節・腱・筋肉などにある受容器によって知覚される位置覚・運動覚・振動覚・重量覚などの感覚のこと。
- 発育臨界期間(developmental window):その期間を逃すとその器官の発育が損なわれるような発育過程の決定的な期間。