呼吸と発声の連携 (The coordination of breathing and speaking)
音声は気道で生成されるため、哺乳類における発声は呼吸と連携する必要がある。これまでの研究は、発声を調節する脳核を特定してきたが、声帯内転と音声-呼吸の連携を担うニューロンはまだ分かっていない。Parkたちは、マウスにおける音声生成と音声-呼吸の結合を直接仲介する神経回路を研究した(Hageによる展望記事参照)。著者たちは、後曖昧核(RAmVOC)に位置する発声特異的な喉頭関連運動前野のニューロンを、声帯閉鎖を駆動しこれにより呼気努力と音声生成を調整するための重要な制御中心部として特定した。プレボッツィンガー複合体によるこれらのニューロンの抑制が、発声の吸気開閉の基礎をなしている。声の音節は、RAmVOCが喉頭運動ニューロンを興奮させることによって生成され、これがプレボッツィンガー複合体が仲介する律動抑制によって周期的に中断される。(KU,MY)
【訳注】
- 声帯内転:甲状軟骨上部の披裂軟骨は、回転運動をして声帯を開閉させる機能があり、この回転運動において、声門を閉じる内周りの回転運動を内転、声門を広げる外周りの回転運動を外転という。
- 運動前野:前頭葉にあり、脳幹や脊髄に直接投射をしていて運動の実行に関与する。感覚情報に基づく運動、運動の企画、運動の準備等で主要な役割を果たしている。
- プレボッツィンガー複合体:延髄腹外側部の呼吸グループにある介在ニューロンのクラスターで、哺乳類の呼吸リズムの生成に不可欠。
Science p. 1074, 10.1126/science.adi8081; see also p. 1059, 10.1126/science.ado2114