ウイルス防御における翻訳阻害 (Translation inhibition in viral defense)
原核生物のIII型CRISPR-Cas系は、外来核酸から宿主細胞を保護する複雑で効率的な障壁である。ウイルス感染に対処するために、これらの系ではしばしば、CRISPRのガイドRNAによるウイルスRNAおよびDNAの切断と、環状オリゴアデニル酸(cAn)シグナル伝達分子の合成を組み合わせるが、これがCRISPR-Cas防御を強化する多様な範囲の補助タンパク質を活性化する。Mogilaたちは、cAn-依存性エフェクター(Cami1:CRISPR-Cas-associated mRNA interferase 1と命名)をつきとめた。これはIII型CRISPR-Casシグナル伝達に応答して、翻訳中の細菌リボソームにおけるmRNAを切断して、これによってタンパク質合成と細胞増殖を阻止する。Cami1は活性なリボソーム・ストーク依存性の捕獲機構を用いており、これは真核細胞の抗ウイルス性リボソーム不活化タンパク質の捕獲機構と似ている。(hE,KU,kj,kh)
- CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)-Cas(CRISPR-associated)系:遺伝子編集に応用される技術で,多くの細菌が持つ獲得免疫システムで,細菌に侵入してきたプラスミドや,ファージ由来のDNAあるいはRNAを異物として認識し分解する。III型クリスパー系は新しく転写されたRNAに結合したガイドRNAを中心にCas10、Csm2,3,4,5タンパク質が結合し、侵入してきたDNAと転写されたRNAを同時に分解する複雑なシステムである。