ホミノイド出現のための新たな生息環境? (A new habitat for hominoid emergence?)
ホミノイド(ヒト上科)の系統は中新世に大きな形態変化を起こし、強い後肢とより直立した姿勢を獲得した。これらの変化に関する有力な仮説は、それらが熱帯樹林の木々の枝の末端にある果実を採餌するための適応だったというものである。今回2つの論文が、そうではなくそのような変化が、季節によっては乾燥する疎林の葉を採餌するための適応によって引き起こされたのかもしれないと主張している。Peppeたちは、哺乳類化石の研究採掘場から得られた新たなデータを用いて、アフリカ東部におけるC4光合成経路を備えた植物が主体の植物生物群系の拡大が、以前の推定より1000万年以上早く生じたらしいことを見出した。MacLatchyたちは、この時代のこの地域における最初期の類人猿であるMorotopithecusの化石を調べ、水不足状態の植物を摂取していたことを示す同位体からの証拠、および現代類人猿と似た強い後肢を示す後頭部の形態を見出した。共にこれらの論文は、初期ホミノイドがこれまで信じられていたのに比べて, より乾燥しより変動の多い環境で出現したことを示唆している。(MY,nk,kj,kh)
- 中新世:約2300万年前から約500万年前の時代区分。
- C4光合成:イネ科などの限られた植物が持ち、二酸化炭素の濃縮経路を持つ光合成経路のこと。通常の光合成機構(C3光合成)を持つ植物は、乾燥条件では水の蒸散を抑えるため気孔を閉じ光合成がなされないが、C4光合成機構を持つ植物はこの条件でも、乾燥度の低い夜間に濃縮した二酸化炭素によって光合成を行うことができる。