タウ・タンパクとTRIM21 (Tau and TRIM21)
ニューロン内でのタウ・タンパクの凝集は、アルツハイマー病などの普通の神経変性疾患の病態の一因となる。Mukadamたちは、細胞内抗体受容体TRIM21を組み入れることによって、抗タウ抗体を用いてタウ病変のマウス・モデルを治療できることを実証している(Nisbetによる展望記事参照)。タウ集合体は、抗体が付与された状態で細胞内に移動することができ、それによりTRIM21と抗体の接触をもたらす。定型でない受容体としてTRIM21はE3ユビキチン・リガーゼ活性を有し、接触がなければさらなる凝集の種として作用するこれらのタウ集合体の不活性化に影響を与えることができる。この経路の発見は、将来の免疫療法の最適化を可能にできるかもしれない。(Sh,MY,kj,kh)
【訳注】
- 細胞内抗体受容体TRIM21:抗体は細胞外で働くとされているが、細胞内で働く場合もあることが近年分かり、細胞内部のセンサーを刺激して、細胞内で免疫系の活性化を引き起こす。TRIM21は細胞内に普遍的にある細胞内抗体のセンサー。
- E3ユビキチン・リガーゼ活性:他のタンパク質の修飾に用いられ、タンパク質分解、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わるユビキチンが結合したE2ユビキチン結合酵素を呼び寄せ、タンパク質の基質を認識し、E2から基質へのユビキチンの転移を促進する性質。
Science, abn1366, this issue p. 1336; see also adg9800, p. 1300