宿主植物が真菌類を育てる (Host plant nurtures fungus)
真菌類の中には、その寄生(宿主)に繁殖を依存するものがある。ウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)は独力で成長することができるが、繁殖については宿主植物のトウモロコシに依存している。Kretschmerたちは、この絶対寄生真菌の生活様式を維持するのに宿主のどの栄養素が必要なのかを分析した。この真菌は、トウモロコシがC4光合成の基質として用いるリンゴ酸などの有機酸を含む栄養素の組み合わせに応答する。ジカルボン酸輸送体の同定により、宿主植物からこれらの有機酸を引き出すこの真菌の能力がこの黒穂病菌の病毒性の一因であることが示された。そのような栄養素が確保されれば、この真菌はその後、その生活環を進めることができるのである。(MY,nk,kj,kh)
- 絶対寄生:寄生生物にとって、宿主が生きた状態であることが必須なこと。
- C4光合成:トウモロコシやサトウキビなど限られた植物が持ち、太陽光の強い環境下でも二酸化炭素を有効に利用できる光合成経路のこと。葉肉細胞でリンゴ酸やアスパラギン酸などのC4化合物が作られ、これが維管束鞘細胞に運ばれて二酸化炭素が遊離され、この二酸化炭素がカルビン回路(C3回路)で固定化されてグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)となる。G3Pから単糖や多糖が作られる。
- ジカルボン酸輸送体:葉緑体内で行われる生合成で必要な葉緑体包膜を横切る物質移動に関与する輸送体(トランスポーター)の1つ。リンゴ酸、2-オキソグルタル酸、グルタミン酸などのジカルボン酸(-COOHを2個もつ有機酸)を特異的に輸送する。