太陽光による制御 (Solar controller)
約125万年前までは、氷河周期は4万年の赤道傾斜角日射周期を反映していたが、過去80万年にわたって、氷河周期は10万年の離心率周期によって調整されてきた。歳差運動の23,000年周期の役割は何であろうか。Barkerたちは、過去百万年の間は氷河期の終結が主に歳差運動に依存していたことを示す、170万年の記録を提示している。氷河期周期に影響を与える要因の変化は氷床の大きさの作用であるように思われる。(Sk,kj,kh)
AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約 |
約125万年前までは、氷河周期は4万年の赤道傾斜角日射周期を反映していたが、過去80万年にわたって、氷河周期は10万年の離心率周期によって調整されてきた。歳差運動の23,000年周期の役割は何であろうか。Barkerたちは、過去百万年の間は氷河期の終結が主に歳差運動に依存していたことを示す、170万年の記録を提示している。氷河期周期に影響を与える要因の変化は氷床の大きさの作用であるように思われる。(Sk,kj,kh)
FTOは最初に発見されたRNA脱メチル化酵素で、メッセンジャーRNAのN6メチルアデノシン(m6A)修飾を元に戻す機能を有する。過去の膨大な研究にも関わらず、哺乳類の発生におけるFTOの生理的基質ははっきりわかっていない。Weiたちは、マウス胚幹細胞とマウス組織におけるFTOの主要基質として、哺乳類に最も豊富にあるレトロトランスポゾンの1つである長鎖散在反復配列-1(LINE1)から転写されたRNAを明らかにした。FTOによるm6Aの脱メチル化は、LINE1由来RNAの水準を調節し、これが、クロマチンの局所および広範囲の状態を形作る。細胞内でのFtoの欠失は、遺伝子内のLINE由来RNAを抑制することで、LINE1含有遺伝子を非活性化する。このFTO-LINE1由来RNAの連携はまた、マウスの卵母細胞と胚の発生に影響を及ぼす。(MY,kh)
ヒドロトリオキシド(ROOOH)は、その強力な酸化特性と、大気に関連したRO2 + OHの反応で形成されるかもしれないという理論的予測のせいで、大気化学研究者間の興味を引き付けてきた。これまでの研究の多くはCH3O2に焦点を当ててきたが、この物質の化学作用は大した役割を果たしていないことが分かってきた。Berndtたちは、直接検出のための質量分析法を基にした測定法と地球モデルによって補完された第一原理計算 (ab initio) を用いて、より重たいRO2に対してROOOHが常に形成可能であることと、かなりの寿命を持つことを示した。検出が可能性でしかなかった大気中の(ROOOHの)定常状態濃度が確立された。この研究は、これまで大気の反応速度モデルで無視されていた強力な酸化剤の重要な部類に目を向けるものである。(Sk,nk,kh)
不均一系触媒においては、遷移金属ナノ粒子とその酸化物支持体間の相互作用は、主に金属表面と酸化物表面の間を動く被吸着化学種による作用の可能性がある。しかし、大幅な再構造化が生じることがある。酸化チタンに担持された白金ナノ粒子の場合には、反応条件により、この酸化物支持体が白金を包み込んで(カプセル化して)非活性化をもたらす可能性がある。Freyたちは透過型電子顕微鏡を用いて、この系が水素と酸素の1バール圧の混合気体と相互作用して水を形成するのを撮影した。この酸化還元活性な化学雰囲気の効果には、カプセル化層の不安定化が含まれており、そしてまた、白金粒子が双晶面を形成し、酸化チタン表面を横切って一方向に移動することが含まれていた。(MY,nk,kh)
T細胞系列マーカーとしての作用に加えて、CD8ヘテロ二量体は、抗原刺激後のT細胞受容体(TCR)シグナル伝達を強める補助受容体として作用している。CD8が何らかの他の抗原非依存性機能を果たしているかどうかは不明である。Zhengたちは、マウスにおけるCD8αの誘発性欠失が、ナイーブおよびメモリーの両方のCD8T細胞の休止状態の喪失をもたらすことを見出した。この休止状態は、それらの生存とレパートリー多様性に不可欠である。休止状態は、細胞表面のCD8α-PILRa相互作用を介したT細胞-骨髄細胞クロストークによって積極的に維持される。この相互作用の途絶は、自発的な活性化とそれに続く末梢リンパ器官におけるナイーブおよびメモリーCD8陽性T細胞プールの喪失に導く。(KU,kj,kh)
火星は、過去においては現在よりはるかに温暖で湿潤であったが、この変化がいつ、なぜ起こったのかについては盛んに議論されている。一般的なモデルは、大気中の二酸化炭素(CO2)が減少し、温室効果ガスの放射強制力が低下したことが原因であるとするものである。これまでの研究では、他の温室効果ガスが関与している可能性が指摘されていたが、その重要性はまだわかっていない。Kiteたちは、温室効果がどのように変化したのかの代わりとして、遠隔測定によるデータを用いて、火星における河川の空間分布を経時的に追跡した。著者たちは、湿潤-乾燥遷移におけるCO2の強制力と他の気体による強制力の相対的重要性に関する洞察を提供する気候モデルに制限を与えることができた。意外にも、彼らのモデルは、CO2以外の気体の減少が、この惑星の寒冷化と乾燥に主要な役割を果たした可能性を示唆している。(Wt,kh)
二次元材料を積み重ねることは、興味深く有用なさまざまな特性に至る可能性がある。例えば、圧電性や強誘電性は、層を相対的にねじることによって発現する可能性がある。Rogéeたちは、この種の特性を得るため、二硫化モリブデンと二硫化タングステンの層を交互に積み重ねるというこれまでとは異なる方法を用いた。この方法では、ねじれを必要とせずに対称性を破ることができる。著者たちは、これらの蒸着ヘテロ二層膜を強誘電体トンネル接合素子にできることを示している。(Wt)
去勢抵抗性前立腺ガン(CRPC)におけるアンドロゲン受容体依存性の喪失を示す前立腺腫瘍には、治療介入が必要とされる。しかしながら、前立腺ガン細胞株モデルが不足している。Tangたちは、配列決定技術とトランスクリプトミクスを組み合わせて、多数のCRPCオルガノイド、細胞株、および患者由来の異種移植片に対する分子研究を行い、腫瘍を構成する4つの異なる遺伝子サブグループを同定した。主要な転写因子が各サブグループで同定され、サブグループ4のより深い分析により、オープン・クロマチンを形成する正のフィードバック・ループの同定に至った。これらのデータから、著者たちは、転写共活性化因子YAPとTAZの阻害剤を用いて、この研究で観察された2番目に一般的なタイプのCRPCであるサブグループ4のような腫瘍を持つ人たちを治療できるかもしれないと提唱している。(KU,MY,nk)
心拍数の低い患者、とりわけ循環器系手術後の患者を補助するための低侵襲性素子への要求は、未だに対処されていないままである。これが必要なのは、内部電極と電池パックを結ぶのに必要な配線が、感染を起こし入院を長引かせる一般的な原因だからである。Choiたちは、心拍数の監視と制御のための、生分解性で閉ループ型かつ無線を用いた微小電気機械システム(Bio-MEMS)を開発した(Zimmermannによる展望記事参照)。使われている素子は、心拍数の監視と制御の両方が可能なため、患者の生理的状態に応答して、搭載されている電子工学技術を用いて要求に応じる再プロブラムが可能である。さらに、この素子の電池は、無線により皮膚素通りでの充電が可能であり、経皮配線を完全に不要にする。(MY,ok,nk,kh)
人間の影響は、我々の世界に土地転換や生息地喪失から気候変化に至るまでの極めて急速な変化をもたらそうとしている。このような変化に直面しても、素早い適応がいくつかの種の存続を助けることができるだろうと主張する人たちもいるが、違いを生じるのに十分なほど素早い適応が生じうるのかについては疑問が残る。Bonnetたちは、19種の動物の長期データで相加遺伝分散を調べたが、これは適応度を高める遺伝的変化に対する淘汰の寄与を決定するもので、それが予想以上に高く、しばしば大幅に高いことを見出した(Walshによる展望記事参照)。これらの結果は、多くの種が、変化している我々の世界に適応するいくらかの能力を持っているかもしれないことを示唆している。(Uc,MY,nk,kh)
エリー湖はカナダと米国の重要な農業地域から水を受け、農業排水に含んでいる高レベルの窒素とリンの影響を受けている。これらの栄養分は光合成を行う生物を急速に増殖させる可能性があり、その一部は水生動物に害を与えまた飲料水を汚染する毒素を産生する。近年では、リンの排出量を減らすことに重点が置かれてきている。Hellwegerたちは大規模な文献のメタ分析の助けを借りて、シアノバクテリア代謝のエージェント・ベース・モデルを開発して、さまざまな栄養・環境条件下で毒素産生がどのように変化するかを決定し、関連する分子機構を明らかにした(OfițeruとPicioreanuによる展望参照)。著者たちは、リンだけ削減すると総バイオマスは低下するが毒素の産生が増加するので、有害となる可能性があることを見出した。提案されている機構は、過酸化水素ストレスへの反応と光透過率の増加が含まれている。(ST,kj,nk,kh)
現代医学における重要性にもかかわらず、病原体はぞっとするほど整然と順応し耐性を獲得または進化させるので、抗生物質は絶えず脅威にさらされている。新しい分子と機構を見つけることは、私たちが前進し続けることができる1つの方法である。二次代謝産物合成遺伝子群に濃縮されているゲノム配列を選別し、Wangたちは、計算論的手法を用いて“cilagicin”と名付けられた環状非リボソーム・リポペプチド抗生物質の構造を予測した(Seipkeによる展望記事参照)。予測されたペプチドの化学合成は、多くの薬剤耐性病原体を含むグラム陽性菌に対する強力で幅広い抗菌活性を明らかにし、cilagicin誘導体は急性感染モデルでマウスを保護した。反応機構実験は、このペプチドが脂質生合成に関与する2つの密接に関連する分子に結合することを示唆した。この能力は耐性の急速な発達を防ぐのに役立つかもしれない。(Sh,kj,kh)
河川のアバルジョンは、河川がそこまでの流路を放棄する場所であり、三角州のような地形構造の一般的な特徴である。Brookeたちは、50年間の衛星画像を用いて、世界中の河川のアバルジョンの位置と変化を調べ(PassalacquaとMoodieによる展望記事参照)、アバルジョンが多くの場合、流路の傾斜またはその河川のすぐ上流の堆積物の変化に関連していることを見出した。しかしながら、場合によっては、河川のアバルジョンが予想よりもはるか上流にあり、これは侵食過程による可能性が高い。アバルジョンは洪水がもたらす危険と強く結びついているため、気候や土地利用の変化という観点で、何がアバルジョンの位置を制御するのかを理解することはきわめて重要である。(Sk,kh)
テラヘルツ波は、その(光子)エネルギーが低いため、検出するのが困難であった。ラチェットは、局所的非対称を用いて無方向性の信号を整流するもので、有望な解決策であるかもしれないと期待されているが、これまではほとんど理論的構想にとどまってきた。Baiたちは、ガリウム-ヒ素からなるラチェット構造を作ることに成功し、近赤外領域からテラヘルツ領域までの放射を効率よく検出できることを示した。この素子は驚くべきことに、4~300テラヘルツという広帯域で応答しかつ既存の広帯域光子型検出器よりも5桁高い最大応答性を併せ持っている。この素子は、生物医学、天体物理、セキュリティー、情報通信系といったさまざまな応用が期待できる。(NK,kj,kh)