疼痛管理に対する優れたUPR標的? (A “sUPR” target for pain management?)
小胞体ストレス応答(UPR)は、小胞体に折りたたみ不全或いは誤って折り畳まれたタンパク質が蓄積した際に開始される。 UPRの進化的に高度に保存された分枝であるIRE1α–XBP1シグナル伝達経路がまた、低酸素状態、血管形成、および炎症などの、UPRと関係しないさまざまな他の過程で役割を果たしている。 Chopra たちは、この経路がさらに、シクロオキシゲナーゼ2とミクロソームのプロスタグランジンE合成酵素1という2つの分子の産生を調整することを報告している。 この2つの分子は、炎症が引き起こす疼痛の仲介を助ける(Avril と Chevet による展望記事参照)。 IRE1α–XBP1シグナル伝達経路の要素がノックアウトされた場合、疼痛に対する2つの異なるマウス・モデルにおいて、疼痛挙動が低減した。 この経路を標的にすると、疼痛管理による治療を改善する結果になるかもしれない。(MY,kj,nk,kh)
【訳注】
- 小胞体ストレス:細胞小器官の一種である小胞体に不良タンパク質が蓄積されること。 これにより細胞への悪影響が生じ、幾つかの回避機能が誘導される。
- IRE1α–XBP1経路:UPRにより誘起されるシグナル伝達経路の1つで、不良タンパク質を感知するタンパク質であるIRE1が活性化し、不良タンパク質修復に関係するタンパク質の発現を促す転写因子XBP1の産生を誘導する。
- シクロオキシゲナーゼ2:外傷や炎症で誘導され、血管拡張・発痛・炎症促進などを起こす物質を合成する。
- ミクロソーム:動物組織の破砕溶液を遠心分離により分画した時に得られる顆粒の成分。
- ノックアウト:ゲノム上の狙った遺伝子を大きく欠失させる遺伝子操作。
Science, this issue p. eaau6499; see also p. 224