甘ったるい見物人が悪役になる (Sweet bystander becomes a villain)
膵臓ガン患者は、往々にして多くのタンパク質上に存在する糖鎖抗原であるCA19-9の血中濃度が高い。このためCA19-9は、病状進行の診断と監視のための生物指標化合物として通常用いられている。Engleたちはマウスの研究で、CA19-9が膵臓疾患の存在を示す無害な見物人どころではない、つまり病気の因果的役割を果たしている可能性があることを見出した(HalbrookとCrawfordによる展望記事参照)。タンパク質にCA19-9を付加するヒト酵素を発現している遺伝子導入マウスは、重篤な膵臓炎を発症した。これはCA19-9の抗体による治療で改善に向かわせることができた。遺伝子導入マウスがKrasガン遺伝子をも内在している場合、膵臓ガンの発症に至った。これらの予期せぬ観察結果は、膵臓疾患の治療に対する新しい道を示唆する。(MY,kh)
- Krasガン遺伝子:細胞増殖を促進するシグナルを細胞内に伝達するタンパク質をコードした遺伝子が異常となったもの。細胞増殖のシグナルを出し続け、ガン細胞を増殖する。