超低温原子で輸送をシミュレートする (Simulating transport with cold atoms)
電荷とスピンが固体の中をどのように伝搬するのかを調べることで、固体の性質について多くを知ることができる。 量子顕微鏡を用いて個々の原子を撮像できる超低温原子系のような、量子シミュレータでも輸送実験を実施できる。 今回、2つのグループが、各格子点が1つのフェルミオン原子で充填された二次元光格子を用いた、いわゆるフェルミ・ハバード・モデル中で輸送を調べた(Brantut による展望記事参照)。 Brown たちは、ハーフフィリング状態を変えて電荷輸送可能な状態へとすることで、電気抵抗率がクプラート超伝導体の異常な金属相で見られるものと大して違わない、線形の温度依存性を持つことを見出した。 Nichols たちはスピン輸送に関する補完的な研究で、超交換カップリングで駆動されたスピン拡散を観測した。(NK,MY,kj,nk,kh)
- 量子シミュレータ:物質などで起きる複雑な量子力学的な現象を、人為的に作成した単純で制御しやすい別のシステムを使ってシミュレーション(量子シミュレーション)するために作製されたシステム。
- ハバード・モデル:周期ポテンシャル中で相互作用しながらトンネルする多数の粒子を扱うモデル。
- ハーフフィリング:ハバードモデルにおいて各格子点が一つの粒子に占有された状態。
- クプラート:銅酸化物系の高温超伝導体。