小児腫瘍を系統的に眺める(A systematic look at a childhood tumor)
幼児における最も一般的な腫瘍の型である神経芽腫は、胎児期の神経細胞から生じ、その臨床経過は非常に多様である。神経芽腫には治療を行っても命取りとなるものがある一方、治療に対して良好に反応するものや、治療しなくても自然消失するものもある。Ackermannたちは、400以上の治療前神経芽腫のゲノム配列を決定し、3つの明確に異なる臨床結果を特徴づける分子的特徴を特定した。低危険度の腫瘍はテロメア維持機構がなく、中危険度の腫瘍はテロメア維持機構を内在し、高危険度の腫瘍は、RASおよびp53、または、RASあるいはp53経路の変異と併せて、テロメア維持機構を内在している。(MY,kh)
- 神経芽腫:小児がんの1つで神経細胞がガンとなる。交感神経節や副腎髄質などから発生する。
- テロメア:真核生物の染色体の末端部にある塩基配列の反復構造で、染色体末端を保護する役目をもつ。染色体の複製に伴い短くなり、染色体の損傷や安定性が低下すると考えられいる。
- テロメア維持機構;酵素テロメラーゼによるテロメアを維持する機構。正常な細胞では酵素活性が抑制されているが,ガン細胞では活性化されている。
- RAS、p53:RASが関わるシグナル伝達経路は細胞増殖を亢進させてガン発生・増殖に関与し、p53は細胞増殖を抑え、細胞がガン化するとアポトーシスを誘導するガン抑制性タンパク質