マラリアの変異生成を飽和させる (Saturating malaria mutagenesis)
マラリアは、赤血球に古典的な感染をするPlasmodium属の真核原虫により引き起こされる。 この原虫は、ゲノムに AT(アデニン、チミン)を多く含むため、遺伝子学的に調べることが困難な微生物である。 Zhang たちはこの特質を piggyBac トランスポゾン挿入部位の使用で利用して飽和水準の変異生成を達成し、必須遺伝子および薬剤標的の特定と順位付けを行った(White と Rathod による展望記事参照)。 薬剤標的の現状の候補遺伝子は、多くのワクチン標的遺伝子とは対照的に、必須と特定された。 とりわけプロテアソームによる分解経路の重要性が、関わる幾つかの重要遺伝子と現状の最前線薬剤であるアルテミシニンの作用機構との関係のため、治療行為の開発標的にすべきと確認された。(MY,kj,nk,kh)
- 飽和変異生成:核酸の単一あるいはコドンの組みをでたらめに置き換えて、その位置で可能な全てのアミノ酸を作らせる、変異生成の技術のこと。 薬剤耐性の評価などに使用される。
- piggyBac:ガの一種に由来するトランスポゾンで、さまざまな対象への遺伝子導入に用いられる。 このトランスポゾン中に目的遺伝子を導入し、対象細胞に注入することで、目的遺伝子が対象ゲノム中のTTAA部位に組み込まれる。
- トランスポゾン:ゲノム上の位置を転移することのできる塩基配列。
- プロテアソーム:真核生物に普遍的に見られ、細胞内の特定のタンパク質を分解するたんぱく質分解酵素の1つ。