マウスの脳における単一細胞型の解明(Identifying single-cell types in the mouse brain)
単一細胞ゲノム技術の技術の最近の進歩は、単一細胞レベルでの遺伝子発現プロファイル作成を容易に実行できるが、その方法の多くは処理能力に制限がある。Rosenbergたちは、split-pool ligation-based transcriptome sequencing、即ちSPLIT-seqと呼ばれる方法について記述しており、この方法はコンビナトリアル・バーコード法を用いて、個々の細胞の物理的分離を必要とせずに単一細胞転写物のプロファイル作成をするす。著者たちはこの方法を用いて、生後2日目と11日目のマウスの脳と脊髄からの100,000以上の単一細胞転写物のプロファイル作成をした。Allen研究所の脳地図から得られるRNA発現に関するin situハイブリダイゼーションのデータとの比較は、これらのトランスクリプトームを空間的マッピングと関連づけ、そこから発生系統を解明することができた。(KU,ok,,kj,nk,kh)
【訳注】
- 遺伝子発現プロファイル: ある個体の器官、組織、細胞ごとに調べられた遺伝子発現の全体的な様子で、理想的には全遺伝子の発現量として表現される。
- コンビナトリアル・バーコード法:複数の化合物要素を組み合わせて多数の化合物候補をつくり、この中の有効な化合物だけを、反応容器ごと、混合(ミックス)と分割(スプリット)操作を繰り返して探索する方法。
- Allen研究所:マイクロソフトの共同設立者の一人、ポール・アレンが寄付して設立された脳科学研究所。
- in situハイブリダイゼーション:スライドグラス上に固着させた組織片や細胞に標識した特定のRNAプローブを加えて特定の配列を持つ核酸を検出する方法。
Science, this issue p. 176