幻覚に対する神経機構(Neural mechanisms for hallucinations)
ある様相の刺激(視覚)を他の様相の刺激(音)と一緒に与えていると,健常人に課題誘発性の幻覚を引き起こすことがある。対を成す刺激を何度も与えられている内に,やがて人々は、以前対であった片方の刺激の存在で、ありもしないもう片方の刺激を知覚したと報告するようになる。Powersたちは,ボランティアと幻覚患者による性質の異なるグループが,この条件付け(パブロフ条件付け)例に対し、どのように応答するのかを調べた。彼らは,行動,脳イメージング,計算モデル化を用いて,そのような誘発性幻覚に与える事前知(perceptual priors)の影響を感覚証拠(sensory evidence)と対比して詳細に分析した。ありもしない音声が聞こえやすい人たちは,ますます聴覚性幻覚を引き起こしやすかった。条件反射幻覚の際に活性な脳領域の回路網は,臨床での症状画像取得の際,脳スキャナーの間に幻聴を起こす個別患者に観察された活性回路網と類似していた。(MY,nk,kj)
【訳注】
- 感覚証拠(sensory evidence):ここでは,聴覚信号が脳で認識されたかどうかを調べた脳イメージングの結果を指している。
- 事前知覚(perceptual priors):ここでは,視覚信号と音を同時に与えて条件付けした後のテストで,被験者に与えられた視覚信号のことを指している。
Science, this issue p. 596