AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 26, 2004, Vol.303


酸素の欠如を観る(Imaging Oxygen Absences)

最近の高分解能透過型顕微鏡の進歩により、殆ど全く同じような電子コントラスト を示す軽原子の識別が可能となったが、しかしながら今日でも本質的にこれらの測 定は単に定性的なものにすぎない。球面収差-補正の顕微鏡の力を借りて、Jiaと Urban(p. 2001)はBaTiO3において、σ3{111}双晶粒界に沿って可視化 を行った結果、酸素サイトの僅か68%が満たされているにすぎないことを示してい る。こういった酸素の欠如はTiとOの結合の変化をもたらし、粒界エネルギーを減少 させる。酸素含有量に関するこのような測定は、空孔の存在がBaTiO3や 他の関連する酸化物の電子特性にどのような影響をもたらすかを理解する上で重要 である。(KU)
Atomic-Resolution Measurement of Oxygen Concentration in Oxide Materials
   C. L. Jia and K. Urban
p. 2001-2004.

単一原子からの単一光子放出(Single Photons from a Single Atom)

量子通信を実現するためには、要求に応じて単一光子を放出させる必要があ る。McKeeverらは(p. 1992)、光の共振器に捕捉された単一セシウム原子を用いて これを実現した。光共振器は複数の原子の捕捉を抑制するとともに、捕捉されたセ シウム原子の励起状態に作用し、要求に応じて単一光子を放出させる事ができると いう。(NK)
Deterministic Generation of Single Photons from One Atom Trapped in a Cavity
   J. McKeever, A. Boca, A. D. Boozer, R. Miller, J. R. Buck, A. Kuzmich, and H. J. Kimble
p. 1992-1994.

蚊の中でマラリアを阻止する(Stopping Malaria in Mosquitoes)

マラリア寄生虫は蚊を絶対宿主(obligatory host)としているが、やはりその昆虫の 免疫反応に直面しなければならない。免疫反応が寄生虫の一生涯のステージに対し て、どのような影響を及ぼしでいるのかについてはほとんど知られていない。Osta たち(p. 2030;Hemingway と Craigによる展望記事参照)は、RNA干渉(RNAi)を用い て、蚊の中での遺伝子発現の下方制御を行い、マラリア寄生虫の生殖ステージの発 育に対する作用を調べた。LRP(leucine-rich repeat)タンパク質をコードしている 遺伝子 を抑制することで寄生虫の発育を促進し、一方C型レクチンをコードしてい る2つの遺伝子抑制は寄生体の発育をブロックする接合子嚢のメラニン沈着(oocyst melanization)を増加させている。このように、蚊の遺伝因子(mosquito factors) は、マラリア伝搬への手助けと防御的な役割の両方を持っている。(TO)
PARASITOLOGY:
Enhanced: New Ways to Control Malaria

   Janet Hemingway and Alister Craig
p. 1984-1985.
Effects of Mosquito Genes on Plasmodium Development
   Mike A. Osta, George K. Christophides, and Fotis C. Kafatos
p. 2030-2032.

幹細胞とその生殖系列の維持(Maintaining Stem Cell and the Germ Line)

ショウジョウバエの生殖系列は幹細胞の生物学を研究する上での卓越した研究モデ ルを提供する。高度に保存された転写リプレッサーのNanosファミリーのメンバーは 始原生殖細胞の移動と生存に必要である。遺伝子モザイク解析と制御されたNanos発 現を用いて、WangとLin(p. 2016)は、Nanosが生殖系列における幹細胞の自己複製 と維持に必要であることを示している。幹細胞とその前駆体の運命は、卵形成の早 熟なる活性化を妨げることによって維持されている。加えるに、転写制御が幹細胞 の確立と維持において決定的な役割を果たしているようである。(KU)
Nanos Maintains Germline Stem Cell Self-Renewal by Preventing Differentiation
   Zhong Wang and Haifan Lin
p. 2016-2019.

海洋の硫酸塩サイクルの解明(Uncovering Oceanic Sulfate Cycles)

海洋沈降物の主要な酸化物の一つ、硫酸塩は長期間(〜1千万年)海洋に滞留してい る。それゆえに、硫酸塩の生物地球化学的なサイクルは比較的に安定しており、沈 降黄鉄鉱中の硫黄同位体変化の研究により、硫酸塩濃度が過去5億5千万年の期間の ほとんどで本質的に一定であったことを示している。Turchynと Schrag(p.2004;DerryとMurrayによる展望記事を参照)は、海洋の重晶 石(barite:BaSO4の酸素同位体に関する1千万年単位の高分解能の記録を 提供しており、海洋の硫黄サイクルに関するよりダイナミックな特性を明らかにし ている。海洋の硫黄濃度は、中新世後期において現在よりも少なくても10%低かっ た。硫黄サイクルの顕著な変化が、大陸棚や大陸棚斜面が引き裂かれた時代の地球 の歴史の中のある時期に生じていた可能性を暗示している。(KU)
GEOCHEMISTRY:
Continental Margins and the Sulfur Cycle

   Louis A. Derry and Richard W. Murray
p. 1981-1982.
Oxygen Isotope Constraints on the Sulfur Cycle over the Past 10 Million Years
   Alexandra V. Turchyn and Daniel P. Schrag
p. 2004-2007.

擬似ギャップ中の秩序(Order in the Pseudogap)

高温超伝導体のcuprateの電子的挙動は、物質中のキャリアーのドーピングレベルに 依存する。ドープ量が不足すると、超伝導状態のシャープなエネルギーギャップと は異なり,エネルギー境界が曖昧ないわゆる擬似ギャップ状態になり、超伝導ではな いが、超伝導状態になる前の電子励起状態のエネルギーギャップを示す。この擬似 ギャップ状態は、温度が高いため、この状態を顕微鏡的に証明することは困難で あった。しかし、Cuprateの微細な超伝導メカニズムを解明するためには、擬似 ギャップ状態での出来事を理解することは不可欠であると思われる。Vershiniた ち(p. 1995; Normanによる展望記事参照)は、この擬似ギャップ状態の詳細な研究を 行い,電子密度状態に市松模様の空間的秩序があることを明らかにした。この結果 から、この物質の複雑な状態図を記述するため色々な秩序化シナリオが提案されて きたが、その中で、限られたものだけが有望であろう。(Ej)
PHYSICS:
Have Cuprates Earned Their Stripes?

   Michael Norman
p. 1985-1986.
Local Ordering in the Pseudogap State of the High-Tc Superconductor Bi2Sr2CaCu2O8+delta
   Michael Vershinin, Shashank Misra, S. Ono, Y. Abe, Yoichi Ando, and Ali Yazdani
p. 1995-1998.

複合体を詳細に分析(Complex Anatomy)

そう遠くない将来において、細胞の全タンパク質内容のリストが利用可能になるだ ろうし、タンパク質が様々な代謝経路、および制御経路において相互作用するよう なマッピングの様式がすでにいくつか存在する。Aloyたち(p. 2026)は、酵母にお ける安定的な、そして動的なタンパク質複合体のリストをまとめるという課題に取 り組むため、これらのアプローチを使用する。彼らはタンデム親和性精製を使用し て、複合体を単離し、それらの構成要素を同定した。その後、既知の三次元構造を 有するタンパク質、または既知構造のタンパク質に対する配列類似性を有するタン パク質をアンカーとして使用して、可能性のある相互作用を予想した;これらの集 団を電子顕微鏡によりスクリーニングした102個の複合体のうち、54個については、 相互作用性サブユニットの部分的モデルが少なくとも得られた。エクソソー ム、TCP-1を含有するシャペロニン、3'-mRNA分解複合体、およびRNAポリメラーゼII を含む9個については、ホモロジーによっては容易にわからない原子の詳細が示され た。もっともうまくいった場合には、複合体中の異なるタンパク質がどのようにし て配置されるか、ならびに個々のタンパク質が異なる複合体中にどのようにして関 係するかを図解することが可能になる。(NF)
Structure-Based Assembly of Protein Complexes in Yeast
   Patrick Aloy, Bettina Böttcher, Hugo Ceulemans, Christina Leutwein, Christian Mellwig, Susanne Fischer, Anne-Claude Gavin, Peer Bork, Giulio Superti-Furga, Luis Serrano, and Robert B. Russell
p. 2026-2029.

移動の際のフォルミン(Formin in Motion)

フォルミン(Formins)は、アクチンの核形成(nucleation)に関与するタンパク質 であり、アクチン・フィラメントの急成長する末端と結合する。mDialはRhoエフェ クターであり、フォルミンファミリーのタンパク質であるが、タンデム型のFH1-FH2 ユニット構造を保存している。Higashidaたち(p. 2007)は、ここで一分子イメー ジングを使用して、アクチン・フィラメントが成長するのに伴って生細胞中でmDial のFH1-FH2が数十μm移動することを見いだした。この移動は微小管、または微小管 モーターは必要とされず、また、アクチン-ベースのモータータンパク質であるミオ シンも必要とされなかった。その代わり、mDialタンパク質は成長するアクチン末端 と一緒に“波乗り”しているようである。この移動は、様々なアクチン-再構築プロセ スにおいて機能している構成的に活性型の低分子GTP-結合タンパク質、Rhoにより促 進された。(NF)
Actin Polymerization-Driven Molecular Movement of mDia1 in Living Cells
   Chiharu Higashida, Takushi Miyoshi, Akiko Fujita, Fabian Oceguera-Yanez, James Monypenny, Yoshikazu Andou, Shuh Narumiya, and Naoki Watanabe
p. 2007-2010.

前頭葉のパターンニング(Patterning the Frontal Lobe)

前頭葉の複数の領域は、より高度な認識機能にとって必須である。両側性前頭頭頂 多小脳回症(BFPP)の患者において、病気の個体は前頭葉機能不全(精神発達遅 滞、歩行困難、言語発達遅滞、および発作を含む)、および特徴的な前頭葉の解剖 学的特徴(左右対称性で異常に薄く、多数の小さな不規則なひだを伴う)を示 す。Piaoたち(p. 2033;HoltとJahnによる展望記事を参照)は、BFPPの遺伝子的根 拠が推定上のGタンパク質-結合型受容体、GPR56における変異であるとして同定し た。GPR56は、主としてニューロン前駆細胞に影響を及ぼしている様であり、した がって、ヒト大脳皮質の局所的パターンニングに影響を与えているようであ る。(NF)   
NEUROSCIENCE:
Synaptic Vesicles in the Fast Lane

   Matthew Holt and Reinhard Jahn
p. 1986-1987.
G Protein-Coupled Receptor-Dependent Development of Human Frontal Cortex
   Xianhua Piao, R. Sean Hill, Adria Bodell, Bernard S. Chang, Lina Basel-Vanagaite, Rachel Straussberg, William B. Dobyns, Bassam Qasrawi, Robin M. Winter, A. Micheil Innes, Thomas Voit, M. Elizabeth Ross, Jacques L. Michaud, Jean-Claude Déscarie, A. James Barkovich, and Christopher A. Walsh
p. 2033-2036.

シナプス小胞の順番飛ばし(Synaptic Vesicle Queue Jumping)

反復性の神経刺激の間、可動性のシナプス小胞は隊列を組んだ兵士のようにシナプ ス前膜まで行進し、外に出る最初のものは膜にもっとも近いものであると仮定され てきた。RizzoliとBetzは、カエルの運動性神経終末において、「遊離しうる準備の できたプール」(最初に出ていくもの)中の小胞はほとんどランダムに神経終末内 に散乱する、ということを示している(p 2037; またRakicによる展望記事参照のこ と)。膜へのそれらの移動の間、それらはそれらほど移動性の高くない何百もの小胞 を追い越していく。これら特権的な小胞は、このことから、特有の特性をもってい るに違いなく、もしかすると、さほど移動性の高くない小胞が欠いている細胞骨格 性の軌道とモーターにアクセスしているのかもしれない。(KF)
NEUROSCIENCE:
Genetic Control of Cortical Convolutions

   Pasko Rakic
p. 1983-1984.
The Structural Organization of the Readily Releasable Pool of Synaptic Vesicles
   Silvio O. Rizzoli and William J. Betz
p. 2037-2039.

HIV感染における多様性の制限(Limiting Diversity in HIV Infection)

エイズの広地域流行は、大部分はヒト免疫不全症ウイルス-1(HIV-1)による異性間の 感染の結果であるが、しかし感染のこの形態は、さほど効率的なものではない。HIV 感染した各個人は、そのウイルスの多様な準-種(quasi-species)を保有している が、そのうちのごく狭い集団のみが、彼らの相手に伝達されるのである。ザンビア における最近のHIV-1-不調和な異性のカップルの感染を調べることによっ て、Derdeynたちは、感染するウイルスが、実は、どの事例においても単一の血統に 由来すること、またそれが他とは異なる外被糖タンパク質特徴をもっていること、 を発見した(p. 2019; またCohenによるニュース記事参照のこと)。それら感染する 血統は、またHIV-1への抗体による中和に対する感受性がかなり高かったのである。 このことから、慢性的感染の間にそれに抗して選択されるウイルスの特徴は新しい 宿主内でのより効率的な感染や複製にも貢献することになる。(KF)
VIROLOGY:
HIV May Shed Some Protection as It Jumps to New Hosts

   Jon Cohen
p. 1956.
Envelope-Constrained Neutralization-Sensitive HIV-1 After Heterosexual Transmission
   Cynthia A. Derdeyn, Julie M. Decker, Frederic Bibollet-Ruche, John L. Mokili, Mark Muldoon, Scott A. Denham, Marintha L. Heil, Francis Kasolo, Rosemary Musonda, Beatrice H. Hahn, George M. Shaw, Bette T. Korber, Susan Allen, and Eric Hunter
p. 2019-2022.

十分制御されて(Well Under Control)

光化学反応による多種生成物の選択のような量子力学的プロセスを最適化するため にフィードバックに基づく複数のアルゴリズムが知られている。これを利用した量 子制御プロセスの成功シミュレーション例が報告されている。研究対象の系が違っ ていたり、制御変数が非常に多かったり、ノイズ源が存在しているにもかかわら ず、量子制御は驚くほどうまくいっている。Rabitz たち(p. 1998) は、何故これほ どの成功が達成されたかについて一般的な理論的考察を示した。彼らは、系のハミ ルトニアンが制御可能であること以外の条件を付けないで、つまり、パラメータ空 間の、ある値に依存して好ましい最終状態に向かうことを示した。次に、すべての 系の極限状態は最大か、あるいは、最小か、のいずれかであり,制御アルゴリズム を局所的極小値や極大値にトラップすることによって生産効率がほとんど上がらな いような状態にはならないように見える。(Ej)
Quantum Optimally Controlled Transition Landscapes
   Herschel A. Rabitz, Michael M. Hsieh, and Carey M. Rosenthal
p. 1998-2001.

寿命の情報伝達制御(Signaling Control of Life-Span)

線虫C. elegansにおける寿命制御はSir2タンパク質、およびそれとDaf-16との相互 作用に依存する。Daf-16は転写制御因子ファミリFOXOのメンバーである。Daf-16は インシュリン様の情報伝達経路に関与し、この経路による情報伝達の抑制が寿命を 延長する。Brunetたち(p 2011)は、Sir2の哺乳類の同族体SIRT1を研究した。SIRT1 はニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)依存のヒストン・デアセ チラーゼであり、哺乳類のFOXOファミリの転写制御因子FOXO3と相互作用し て、FOXO3の脱アセチル化に関与する。この相互作用は解析する標的遺伝子に依存し て、FOXO依存の転写を増強したり、減少させたりする。更に、SIRTの発現は酸化的 ストレスに対する抵抗性を促進するさいにFOXO3の効果が増強され、細胞死を促進す るFOXO仲介の情報伝達を抑制するようである。このような増強されたストレス耐性 と細胞死の回避が、寿命を延すメカニズムの一つを与えるものであろう。(An)
Stress-Dependent Regulation of FOXO Transcription Factors by the SIRT1 Deacetylase
   Anne Brunet, Lora B. Sweeney, J. Fitzhugh Sturgill, Katrin F. Chua, Paul L. Greer, Yingxi Lin, Hien Tran, Sarah E. Ross, Raul Mostoslavsky, Haim Y. Cohen, Linda S. Hu, Hwei-Ling Cheng, Mark P. Jedrychowski, Steven P. Gygi, David A. Sinclair, Frederick W. Alt, and Michael E. Greenberg
p. 2011-2015.

植物のミクロRNAが切断しそこなう(Plant MicroRNAs Fail to Make the Cut)

多くの真核生物の生物体における多数のミクロRNA(miRNA)の機能が、だんだんと明 確になってきた。ヒトの組織培養細胞とショウジョウバエに関する最近の研究に よって、線虫C.elegansにおけるmiRNAグループの構成メンバーであるlet7とlin4の 役割についての知識が深まった。Chen(p 2022)は、APETALA2という花のホメオ ティックな遺伝子により、miRNAのmiRNA172ファミリがシロイヌナズナの花の発生を 制御していることを示している。更に、植物miRNAがその標的RNAを切断することに よって機能を果たしているという最近の見込みとは異なり、miRNA172はAPETALA2の メッセンジャーRNAの翻訳を抑制することによって機能している。従って、この植物 miRNAは典型的な動物miRNAと似たような作用をしている。(An)
A MicroRNA as a Translational Repressor of APETALA2 in Arabidopsis Flower Development
   Xuemei Chen
p. 2022-2025.

星の周りの円盤を見る(Seeing Disks Around Stars)

星周円盤(Circumstellar disks)は、恒星と星間物質の進化についての重要な情報を 与えてくれる。beta Pictoris (beta Pic) は、我々の銀河系中のM型星であるが、 それは大質量の星周円盤(Circumstellar disks)を有している。また、Kalas た ち(p.1990; Mouillet による展望記事を参照のこと) は、AU Microscopii (AU Mic) の周りに星周円盤(Circumstellar disks)を発見した。この星はbeta Pic 近くに位 置する若いM型星である。二つの星の類似性は同時期に同領域の源から形成された ことを示している。しかし、AU Mic の周りの円盤は、beta Pic に比べて質量は1/ 3で、明るさは1/100である。AU Mic の周りの円盤の大きさと密度は、そのダ ストが微視的な大きさで原始的な状態にあることを示唆している。ダストは、恒星 系からのbeta Pic よりは少ない衝突と、より少ない凝集、およびより少ない物質放 出を受けている。(Wt)
ASTRONOMY:
Nearby Planetary Disks

   David Mouillet
p. 1982-1983.
Discovery of a Large Dust Disk Around the Nearby Star AU Microscopii
   Paul Kalas, Michael C. Liu, and Brenda C. Matthews
p. 1990-1992.

ドーパミンと興奮と報酬(Dopamine, Excitation, and Reward)

ドーパミン・ニューロン機能についての報酬予測理論は、報酬における中脳ドーパ ミン・ニューロンの選択的役割を示唆するものである。しかし、有害な刺激に対す る応答としてドーパミン・ニューロンがその発火を変化させるかどうかについては コンセンサスがなかった。ほとんどの研究は、中脳ドーパミン・ニューロンには有 害な刺激に応答してその発火を増加、あるいは減少させる小さな集団があることを 示している。この問題を解決するため、Unglessたちは麻酔下にあるラットの腹側被 蓋野のニューロンのデータを記録し、それらラットの尻尾を挟まれた際の反応を記 録し、引き続いて形態学的方法を用いて記録されたニューロンを同定し た(p.2040)。電気生理学的判定基準によって同定されたドーパミン・ニューロンの 応答を観察した後で、著者たちはドーパミン・ニューロンと非ドーパミン・ニュー ロンとの形態学的違いを明らかにした。有害刺激の間に発火を増加させる少数の ニューロンは、実際は非ドーパミン性のものであった。(KF)
Uniform Inhibition of Dopamine Neurons in the Ventral Tegmental Area by Aversive Stimuli
   Mark A. Ungless, Peter J. Magill, and J. Paul Bolam
p. 2040-2042.

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