AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


[インデックス] [前の号] [次の号]

Science March 15, 2002, Vol.295


速報(Brevia)

植物の根における真菌類の驚異的多様性(Extensive Fungal Diversity in Plant Roots) 真菌類は地球環境においてエコシステムの仲介役として多くの役割を演じているが、そ の実態はほとんど知られていない。今回新しく設計された真菌類に特異なポリメラーゼ 連鎖反応を利用した解析によって、Vandenkoornhuyse たち(p. 2051)は、ありふれた 植物の根の環境に驚くほど多様な真菌類が生息していることを見つけた。草の一種であ るArrhenatherum elatiusの根から全“環境性DNA媒を調製し、PCR増殖によって小サブ ユニットリボゾームRNA(SSU rRNA)遺伝子ライブラリーを作り、200個のクローンを無作 為に配列決定した。これまでに知られている真菌類についての小サブユニットリボゾ ームRNA(small subunit ribosomal RNA (SSU rRNA))の遺伝子配列について、49の環境 系統について系統発生解析の結果、49のphylotypeが真菌種全体に分布していることが 分かった。またこの分類の広がりの大きさに加え、以前知られてなかった真菌類の可能 性も見つかった。(Ej,hE)
Extensive Fungal Diversity in Plant Roots, p. 2051
    Philippe Vandenkoornhuyse, Sandra L. Baldauf, Corinne Leyval, Jean Straczek, and J. Peter W. Young

哺乳類のアジアからの移住(Radiation from Asia)

暁新世から始新世の境界の後(およそ5500万年前)は、哺乳類の多様性や範囲が大幅に増加 し、また、北半球の大陸に新しい群が現れた時期でもある。従来から、主に系統学的な分 析により、アジアがそれらの起源の中心である可能性があることが示唆されていた 。Bowenたちは(p. 2062、Beardによる展望も参照)、哺乳類の主な科であり、絶滅した大 型肉食動物を含む肉歯類の起源がアジアであることを示し、霊長類を含む主要な哺乳類の 群の起源もアジアである可能性を示す古生物学的な証拠を提示している。(Na)
Mammalian Dispersal at the Paleocene/Eocene Boundary, p. 2062
    Gabriel J. Bowen, William C. Clyde, Paul L. Koch, Suyin Ting, John Alroy, Takehisa Tsubamoto, Yuanqing Wang, and Yuan Wang
PALEONTOLOGY: East of Eden at the Paleocene/Eocene Boundary, p. 2028
    Chris Beard

高圧下での光重合(High-Pressure Photopolymerization)

1、3−ブタジエンは高度に不飽和性で、非常に活性である。常圧下で容易に二量化し 、シスとトランス型異性体の混合物を作る。Citroniたち(p.2054)は高圧下(0.7GPa以 上)におけるダイアモンドアンビルセル中で、その束縛された分子の環境ではトランス 型ブタジエンの反応生成物のみが出来ることを示している。暗室下では、環化付加生成 物であるビニールシクロヘキサンのみが形成され、488nmの光を照射すると、純粋なト ランス型ポリブタジエンが形成される。著者たちは、その重合結果をS1励起状態の長寿 命に関連付けて説明している。(KU)
Laser-Induced Selectivity for Dimerization Versus Polymerization of Butadiene Under Pressure, p. 2058
    Margherita Citroni, Matteo Ceppatelli, Roberto Bini, and Vincenzo Schettino

触媒金属と担持体(Catalytic Metals and Their Supporting Casts)

最近、反応性ガスの存在と高温下で酸化物担体上に分散された触媒性の金属ナノ粒子の 高分解能解析が可能な透過型電子顕微鏡が開発されている。更なる幾つかの改良によっ て、Hansenたち(p.2053)は0.14nmの分解能を達成し、これにより鉄やニッケルや銅とい った低い原子番号の金属ナノ粒子を原子レベルでの分解能で研究が可能となった。著者 たちはナノ粒子の挙動やナノ粒子と担体物質との相互作用が、例えば工業的なメタノ ール合成触媒といった触媒系の作用にどのように影響を及ぼしているかを示している 。(KU)
Atom-Resolved Imaging of Dynamic Shape Changes in Supported Copper Nanocrystals, p. 2053
    Poul L. Hansen, Jakob B. Wagner, Stig Helveg, Jens R. Rostrup-Nielsen, Bjerne S. Clausen, and Henrik Topsoe

海床下の生命(Life Below the Sea Floor)

生きた細菌性細胞は、海底の堆積物の下1キロメートルまで存在している。これらの生 物群は地球上の全生物量の3分の1を占めている可能性があるが、これら細胞の生物的な 活動性は極端に低い。そして、あらゆる代謝活動の大半は、常に堆積物の表面下数セン チ以内で起こっている。D'Hondtたち(p.2067)は、海洋掘削プログラム(Ocean Drilling Program)の過去15年間の世界各地から集められたこうした堆積物のデータをレビューし 、堆積の2つの生物界の間に著しい差異があることを発見した。メタン発酵 (methanogenesis)は両方の生物界で発生しているけれども、メタンは、硫酸還元 (sulfate reduction)といっしょになったときに酸化破壊される。これにより、酸素の 豊富な堆積物は硝酸塩に富んでおり、相対的にメタンの含有量が少ない。ところが、海 洋縁水域におけるメタン生成微生物による堆積物は比較的硝酸塩の含有量が少ない。(TO)
Metabolic Activity of Subsurface Life in Deep-Sea Sediments, p. 2067
    Steven D'Hondt, Scott Rutherford, and Arthur J. Spivack

ふさわしい状態に達する速さ(Rates for Attaining Fit States)

クロム酸塩の陰イオンのような六価のクロムは、多量の場合は有毒の可能性があるが 、多くの汚染された地下水系中に存在している(Erin Brockovich の映画で有名になっ たように)。一つの汚染源は、電気めっき用金属に用いられたクロムの大きな容器かま たは池からの漏洩あるいは廃棄であった。Cr3+ への還元はその移動性と危険性を減少 させる。Ellis たち (p.2060; Blowes による展望記事を参照のこと) は、地下水と地 球のクロムの安定な同位体の分布を調査し、地下水中の同位体比は、進行中の還元速度 の評価に用いうることを示している。(Wt)
Chromium Isotopes and the Fate of Hexavalent Chromium in the Environment , p. 2060
    Andre S. Ellis, Thomas M. Johnson, and Thomas D. Bullen
ENVIRONMENTAL CHEMISTRY: Tracking Hexavalent Cr in Groundwater, p. 2024
    David Blowes

生活様式と変動(Life-Styles and Variability)

様々な動物種が個体数の変動において大きく変わるのは何故であろうか? Seatherたち (p.2070;Coulsonたちによる展望参照)は、鳥類の個体数に作用する二つの異なる個体 数統計プロセスを明らかにし、個体数の統計プロセスと個体数変動間の強い共分散を報 告している。補充が支配的な個体群(そこでは高増殖率である)では、生息密度が原因と なる調節要因が小さく、環境要因が大きいことで特徴づけられ、結果として大きな個体 数変動をもたらす。生存-限定個体群(そこでは低増殖率が特徴的で、寿命が長い)では 、高密度において強い生息密度による調節を受け、環境変化による推定値が小さいこと が見出されており、個体数サイズの変動は小さくなる。(KU)
Demographic Characteristics and Population Dynamical Patterns of Solitary Birds, p. 2070
    Bernt-Erik Sather, Steinar Engen, and Erik Matthysen
ECOLOGY: Seeking New Recruits, p. 2023
    Tim Coulson, Jan Lindstrom, and Peter Cotgreave

ヒストンのコードをケージに入れる(Caging the Histone Code)

染色質は、遺伝子発現の制御で重要な役割を果す。DNAが巻きついているヌクレオソ ームを構成するヒストンのタンパク質の尾部の共有結合修飾は、転写機構に対する遺伝 子の応答を変化させることができる。例えば、H3ヒストンの尾部中のLys9のメチル化は 、遺伝子発現の後成的な抑制を起こす。染色ドメインを含むHP1タンパク質は、メチル 化したLys9と結合するが、染色質と相互作用するのが染色ドメインを含むHP1タンパク 質のサブセットだけである理由が不明であった。JacobsとKhorasanizadeh(p. 2080;表 紙参照)は、メチル化したH3尾部と結合したHP1染色ドメインの構造を解明した。メチル アンモニウム基が、HP1中の疎水ケージによって認識され、H3尾部が染色ドメインの βサンドイッチ構築を完了する。(An)
Structure of HP1 Chromodomain Bound to a Lysine 9-Methylated Histone H3 Tail, p. 2080     Steven A. Jacobs and Sepideh Khorasanizadeh

 タンパク質の分解が植物の防御を維持する(Protein Degradation Maintains Plant Defenses)

特定の病原体に対して植物が防衛する生得的な免疫応答は、病原体からの信号と植物の 特定の抵抗(R)遺伝子との相互作用を含む。R遺伝子が多様であり、病原体が多数である のに、植物は小数の生理反応のレパートリで反応する。Azevedoたち(p. 2073)と Austinたち(p. 2077)は、耐病性の活性化によって惹起される情報伝達カスケードを分 析した(NishimuraとSomervilleによる展望記事参照)。いくつかのRタンパク質がRAR1タ ンパク質によって応答を引き起こし、それからRAR1タンパク質がSGT1タンパク質と相互 作用する。この結果は、ユビキチンを標的としたタンパク質分解にSGT1が関与すること を示唆している。シロイヌナズナにおける2つのSGT1変異体は、異なる機能をもつよう である。従って、病原体に対する応答によって引き起こされる情報伝達カスケードは、 少なくとも部分的にタンパク質の分解が関与するであろう。(An)
The RAR1 Interactor SGT1, an Essential Component of R Gene-Triggered Disease Resistance, p. 2073
    Cristina Azevedo, Ari Sadanandom, Katsumi Kitagawa, Andreas Freialdenhoven, Ken Shirasu, and Paul Schulze-Lefert
Regulatory Role of SGT1 in Early R Gene-Mediated Plant Defenses, p. 2077
    Mark J. Austin, Paul Muskett, Katherine Kahn, Bart J. Feys, Jonathan D. G. Jones, and Jane E. Parker
PLANT BIOLOGY: Enhanced: Resisting Attack p. 2032
    Marc Nishimura and Shauna Somerville

RNAの切り貼り(Cutting and Pasting RNA)

メッセンジャーRNA(mRNA)を翻訳しプレ-mRNAを合成する高分子複合体を解析したが、 酵素的に最も難しい反応の一つであるプレ-mRNAのスプライシングを、構造的に評価 することができなかった。幸いにも、グループII自己-スプライシングイントロンは、 プレ-mRNAスプライシングの触媒経路と同様な触媒経路をたどり、そしてこれらのイ ントロンは、高分子スプライソソーム複合体のRNA構成要素との間で配列同一性を示す。 ZhangとDoudna(p. 2084)は、グループIIイントロンの触媒コアドメイン5および6を 含有する70ヌクレオチドのRNAの結晶構造を3.0オングストロームの解像度で記載し、そ してドメイン6の分岐点の不可欠な求核性アデノシンが、RNA二重らせん骨格から押し出 された不対合の2-ヌクレオチドのバルジの一部であることを見いだしている。 (NF
Structural Insights into Group II Intron Catalysis and Branch-Site Selection, p. 2084
    Lan Zhang and Jennifer A. Doudna

小さなノミは、もっと小さなノミを背負い(Little Fleas Have Lesser Fleas)

Bordetella spp.は、重大なヒト呼吸器疾患を引き起こし、そしてそのバクテリアの遭 遇する環境変化に適応するために、それらは、これらのバクテリアを捕食するバクテリ オファージの尾部に対する受容体を介しても働く表面分子の性質を変化させることも含 め、一連の表現型変化を通してサイクルを重ねている。Liuたち(p. 2091;Hatfullに よる展望記事を参照)は、Bordetellaのライフサイクルの中でいくつかのビルレンス因 子および集落形成因子を産生している時期に、顕著な親和性を有するファージのファミ リーを発見した;ここでは、パータクチン(pertactin)が主要なウィルス受容体であ る。しかしながら、彼らは、バクテリアのライフサイクルの運動期のあいだ親和性を有 するファージだけでなく、様々な中間型も見いだした。このように、ファージは、尾部 集合タンパク質の変異を引き起こす逆転写酵素-駆動性メカニズムにより、そのライフ サイクルにおける様々なステージでバクテリアに感染することができる変異体を作製す ることができる。(NF)
Reverse Transcriptase-Mediated Tropism Switching in Bordetella Bacteriophage, p. 2091
    Minghsun Liu, Rajendar Deora, Sergei R. Doulatov, Mari Gingery, Frederick A. Eiserling, Andrew Preston, Duncan J. Maskell, Robert W. Simons, Peggy A. Cotter, Julian Parkhill, and Jeff F. Miller
MICROBIOLOGY: A Tail of Two Specifi-cities, p. 2031
    Graham F. Hatfull

ナチュラルキラー細胞は拒絶反応を克服する(Natural Killer Cells Overcome Rejection)

骨髄(BM)移植手術によって造血系を復元するのは極めて大きな問題をはらんでいる。ド ナー(提供者)と受容者の組織抗原の少しのミスマッチ(不適合)が許容されると移植 は改善される。白血病のような病気では、移植することでホストに由来する細胞を殺す ことにもなりうる。しかし、ミスマッチが大きくなると、提供者骨髄中の残っている T細胞はもっと激しく受容組織に反応し、その結果移植片対宿主病(GVHD)となる。2つ の報告が、ナチュラルキラー(NK)細胞が拒絶反応防止にどのようにして役立つかについ て述べている(Karreによる展望記事も参照)。Ruggeriたち(p. 2097)は、NK細胞がホス トの抗原に対してより強く反応することが移植の成功と関連のあることを観察した。マ ウスにおいて、精製したホスト反応性NK細胞で前条件付けすれば、通常は必要な照射 (irradiation)による受容者骨髄の事前除去が不要になり、これらの動物ではT細胞に仲 介されるGVHDが発生しない。ホスト反応性NK細胞はホスト中の抗原提示細胞を除去する かも知れないし、そうすることで抗ホストT細胞を誘起することを防いでいるのかも知 れない。NK細胞表面の抑制受容体にリガンドが結合することによって、NK細胞の活性化 も阻止されている可能性がある。Wangたち(p. 2094)は、脱リン酸酵素であるSH2含有イ ノシトール脱リン酸酵素(SHIP)を欠くマウスでは、抑制性NK受容体の受け持つレパート リは、自分自身だけでなく外来リガンドを識別できる特別な受容体を選択するように歪 められていることを観察した。骨髄を移植されたマウスの場合、ミスマッチした提供者 からの骨髄を拒絶しなかった。これらのマウスではGVHDも見られなかったことから 、GVHDにおけるホスト由来のNK細胞の役割が推察できる。(Ej,hE)
IMMUNOLOGY: A Perfect Mismatch, p. 2029
    Klas Karre
Effectiveness of Donor Natural Killer Cell Alloreactivity in Mismatched Hematopoietic Transplants, p. 2097
    Loredana Ruggeri, Marusca Capanni, Elena Urbani, Katia Perruccio, Warren D. Shlomchik, Antonella Tosti, Sabrina Posati, Daniela Rogaia, Francesco Frassoni, Franco Aversa, Massimo F. Martelli, and Andrea Velardi
Influence of SHIP on the NK Repertoire and Allogeneic Bone Marrow Transplantation, p. 2094
    Jia-Wang Wang, Julie M. Howson, Tomar Ghansah, Caroline Desponts, John M. Ninos, Sarah L. May, Kim H. T. Nguyen, Noriko Toyama-Sorimachi, and William G. Kerr

そのひと跳びで(At the Hop)

表面の分子の移動を引き起こすような多くの電子励起過程は、脱離か制御不可能な表面 拡散かのどちらになる。Komeda たち (p.2055) は、パラジウムの(110)表面上での CO 分子の移動を引き起こすことに、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いうることを示して いる。このパラジウム表面は、横列と谷の形態(row-and-trough morphology)を示す 。STM チップからのトンネル電子は、CO 分子をその横列に沿って、側面方向にホッピ ングさせる。しかしながら、Cu(110) 表面上では、このプロセスに対する障壁は小さい にもかかわらず、そのようなホッピングは見られない。モデリングによると、ホッピン グ確率の差は、C-O 伸張モードと側面方向ホッピングモードとの間の非調和的結合にお ける差異から説明することができる。(Wt)
Lateral Hopping of Molecules Induced by Excitation of Internal Vibration Mode, p. 2055
    T. Komeda, Y. Kim, Maki Kawai, B. N. J. Persson, and H. Ueba

血液と鉄の分画(Blood and Iron Fractionation)

質量分析法の最近の改良によって、鉄の同位体を含むいくつかの重い安定な同位体の研 究の可能性が開けてきた。応用の大部分は、細菌や無機質堆積物におけるものである 。Walczykとvon Blanckenburgは、ヒトにおける鉄同位元素のシグネチャを調査したが 、ヒトにおいては、鉄は多くの生物学的プロセスに関与しており、食餌によって取り込 まれる重要な物質なのである(p. 2065)。彼らは、食餌と血液試料の間に大きな構成要 素の違い(分画)があること(生物学的な違いや地質学的な違いにかかわらず、どの試料 においても鉄が最大の消耗を示していた)、また、女性の方が食餌からの腸による鉄の 吸収が大きいことを反映しているらしいことを示す、女性の方が男性より大きな消耗を 示すこと、を見出している。(KF)
Natural Iron Isotope Variations in Human Blood, p. 2065
    Thomas Walczyk and Friedhelm von Blanckenburg

損失に対してAktする(Akt-ing Against a Loss)

腫瘍サプレッサータンパク質PTENにおける変異は、種々の癌において起きている。その 主要な酵素活性は、ホスホイノシチド-3,4,5-三リン酸(PIP3)などのホスホイノシチド を脱リン酸化することである。PTENがないと、PIP3の細胞におけるレベルは増加し、シ ョウジョウバエの幼生においては、これによって、表現型の過成長と致死という結果に なるのである。しかし、PIP3は多数の情報伝達分子に結合するので、PTEN機能の欠損が 第一に影響を与える特異的な相互作用があるのかどうかは、はっきりしていない。 Stockerたちは、PIP3のセリンスレオニンキナーゼAktとの相互作用がPH領域における 変異によって減少している場合には、PTENがなくてもハエは生きられる、ということを 示している(p. 2088)。少なくともそのハエでは、AktがPIP3の主要な標的であるらしい。(KF)
Living with Lethal PIP3 Levels: Viability of Flies Lacking PTEN Restored by a PH Domain Mutation in Akt/PKB, p. 2088
    Hugo Stocker, Mirjana Andjelkovic, Sean Oldham, Muriel Laffargue, Matthias P. Wymann, Brian A. Hemmings, and Ernst Hafen

スピン-ラダー 銅塩における超伝導(Superconductivity in a Spin-Ladder Cuprate)

Schoenたち(2430頁2001年9月28日レポート参照)は、分子ビーム・エピタキシ ー(MBE)の電界効果注入薄膜成長を通して、それら薄膜成長が絶縁体と思われているス ピン-ラダー化合物[CaCu2O3]4中に超伝導を導き出 していることを報告した。あるコメントの中で、Ingleたちは、“Schoenたちによって 引き合いに出された研究は、研究された膜中における銅と酸素原子がもつスピン-ラダ ー 配列の明解な証拠が提供されていない”ということを主張し、また“このような証 拠なしにスピン-ラダーの注入によって超伝導が生じるとするどんな主張も中途半端で ある”と結論づけている。Schoenたちは、継続した研究が薄膜中のラダー平面単位セル ・パラメータの間にぴったり整合することを確認しており、また種々の2脚のラダー銅 塩におけるそれらラダー平面の単位セル・パラメータは他の文献で報告したと反論して いる。また彼らは、彼らが“スピン-ラダー 配列の明らかな証拠を観察した”という結 論に導いている他の見方の証拠をレビューしている。これらコメントの全文は、
www.sciencemag.org/cgi/content/full/295/5562/1967a で検索できる。(hk)
Superconductivity in a Spin-Ladder Cuprate, p. 1967
    Nicholas J. C. Ingle, Malcolm R. Beasley, Theodore H. Geballe, J. H. Schon, M. Dorget, F. C. Beuran, X. Z. Xu, E. Arushanov, M. Lagues, and C. Deville Cavellin

[インデックス] [前の号] [次の号]